2017年02月16日

ヒーローらしからぬヒーローの大統領:トランプは政治的公正さ(PC)に厳しいポストモダニズムの矛先をどうやって相手自身に向けたか

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ヒーローらしからぬヒーローの大統領:トランプは政治的公正さ(PC)に厳しいポストモダニズムの矛先をどうやって相手自身に向けたか
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デビッド・アーンスト
ザ・フェデラリスト
2017年1月23日


もし政治というものが、上部にある文化から流れ出るものだとしたら、政治家がその役割を習得するのは単に時間の問題である。あなたがドナルド・トランプを好きだろうと、嫌いだろうと、彼は暗号を解読した。

『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』主人公のトニー・ソプラノ、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%82%BA_%E5%93%80%E6%84%81%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2
『ブレイキング・バッド』主人公のウォルター・ホワイト、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%89
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』主人公のフランク・アンダーウッドは、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89_%E9%87%8E%E6%9C%9B%E3%81%AE%E9%9A%8E%E6%AE%B5
それぞれのやり方で複雑な悪党になりきった、最近の非常に有名なキャラクターの例だが、いずれも何百万というアメリカ人を魅了している。

ヒーローらしからぬヒーローは、昔から西部劇やギャング映画、犯罪ドラマに欠かせぬ存在である。『スカーフェイス』でアル・パチーノが演じた、マイアミの麻薬王として君臨するトニー・モンタナが適例だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
この映画の主人公トニーは、やがて落ち目になり、マイアミの会員制カントリークラブで妻とひどい喧嘩をする。彼女はゴルフに来ていた、正装をした大勢のワスプ(アングロサクソン系白人新教徒)が口もきけない程驚いている前で、夫が殺人者で、ヤクの売人であり、まともな父親など務まらないと大声で咎めて、彼を公然とさらし者にしたのだ。

もしトニーが古典的なヒーローだったら、これは道徳的審判の始まりであり、彼は後悔に明け暮れたことだろう。だがこれは『スカーフェイス』であり、トニーはヒーローなどではないから、上流社会の犯罪者だと公然と暴露されたのに応えて、聴衆の方に鏡を向けて、彼らを叱りつけるのである:
https://www.youtube.com/watch?v=dW37AGZ0Pj0


---
あんたら、何を見てるんだ?あんたらなんか、忌々しい間抜けどもだ。なぜか分かるか?あんたらには、なりたい者になる勇気がないからだ。あんたらには、俺のような人間が必要なんだ。俺のような人間が必要だからこそ、あんたらは忌々しい指で俺を指して、「あれは悪党だ」と言うんだ。あんたらはどうなんだ?善人だって?善人じゃないさ。隠れて嘘をつく方法を知ってるだけさ。俺には、そんな問題はない。俺はいつだって本当のことを言ってるんだ。嘘をつくときだってな。それじゃあ、悪党におやすみを言いな!さあ。言っておくが、あんたらはこんな悪党に出会うことはもうないだろうよ。
---


犯罪者が切望するのを犯罪者ではない裕福な人々が黙って聞いているというのは、目新しいテーマではない。とは言うものの、オリバー・ストーンが脚本を書いていることを考えると、トニーの大言壮語は、競争が激しく、資本主義的な、レーガン時代の、いわゆる「上品な」アメリカ人たちの偽善を評したものだろう。彼らは実質的にトニーと変わらないのだ。これらの裕福なマイアミ人タイプは、トニーのような人間と関わりになっているのを見られたくないのだが、そのくせ彼らは、自分達がコカイン・ビジネスで裕福になったのであり、自分達の多くが彼のコカインをおそらく濫用していることを十分知っているのだ。

それではトニーの目から見た場合、まともであるとはどういう意味だろうか?「まともさ」のモデルと思われる人々にはまるでそれが備わってないのだから。この人々にとって、道徳的な悔恨の表れとは、道徳的な悔恨ゆえの、ゆがんだ見せ掛けだけのごまかしなのだろうか?そうなることはトニーにとってさえ堕落ではないのだろうか?

トニーはヒーローでも悪党でもない:彼はヒーローらしからぬヒーローなのだ。あなたはおそらく、彼を応援しているなどとは認めないだろうが、取り澄ました偽善者(と思われる人)たちに対して、彼がひどい仕打ちをするのを、あなたが楽しんで観たのだとすると、あなたは応援していたのだろう。確かに彼は、彼の妻が言う通りの人間だが、正直にそうだと認める根性が、彼にはあるのだ。


ドナルド・トランプ。政界のヒーローらしからぬヒーロー

1月20日の就任演説でトランプは、このシーンを再現した。「既存の勢力」の「勝利は皆さんの勝利ではありませんでした」と述べて、支配階級に宣戦布告したのだ。
http://thefederalist.com/2017/01/20/heres-the-full-transcript-of-donald-trumps-inauguration-speech/
http://thefederalist.com/2017/01/20/trumps-inauguration-speech-declaration-war-ruling-class/
「彼らが首都で祝っている一方で、闘っている国中の家族たちを祝うことはほとんどありませんでした」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170121/k10010847631000.html

彼は、大統領選の数日前に開かれた「アル・スミス記念財団晩餐会」で、これとそっくりなビックリ仰天のパフォーマンスを演じていた。
https://www.youtube.com/watch?v=NnRVAzFa6Og
ヒラリー・クリントンをだしにしたジョークにブーイングが起こると、彼は会場の人々に対してあからさまに中指を突き立てた。冒頭の挨拶での彼の言葉をよく見てもらいたい:


---
そして、この場にいる皆さんにご挨拶申し上げます。とても長い間、私と知り合いで、私のことを愛してくれています。本当です。政治家の皆さん、自宅に招待してくれましたね。子供たちに私を紹介してくれました。たいていは友達になれました。子供たちは私のサポートを求めていたのです。そしていつもお金を欲しがりました。親しげに私を呼びました。「やぁ、元気?」ってな具合でね。ですが、私が共和党から大統領選に出馬すると、突然「ダメ人間」「腐ってる」「嫌気がする」「ろくでなし」となったのです。彼らは私のことなどまったく覚えていません。
---
邦訳出所:http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/23/trump-speech_n_12614300.html


言い換えればこうだ:「たとえ私が、ダメ人間で、腐ってる、嫌気がする、ろくでなしだったとして、それがあなたたちにどう関係するというんだ?少なくとも私は上品なフリはしない;ところが、あなたたちときたら、厚かましくも、私よりずっとまともだというフリをしている。初めから私が、あなたたちにとって標準的な上品さレベルで振る舞おうと悩んでいたら、あなたたちは私に軽蔑的な扱いをしなかったなどという、架空の話は抜きにしよう。そんなことは上品さ自体とは何の関係もなく、全ては権力次第だと認めようじゃないか。あなたたちは自分たちが道徳的に優れているとずうずうしくも思っているが、それは自分勝手な、真っ赤な嘘だ。あなたたちがほらばかり吹いていると指摘し続ければ、私は大統領になれるだろう」

多くの人々が、トランプ大統領は、彼が連発した「政治的公正さ(PC)」
http://izumiyayoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/political-corre.html
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/pc.php
というまくら言葉の産物だと論じている。これは部分的には正しい。だがむしろ、PCと、トランプのそれに対する反応の両方共が、我々の文化において長きに亘って称揚されてきたポストモダニズムの産物である、というべきだろう:ポストモダニズムは、全ての真実は相対的であり、道徳性とは主観的なものであるという、ニヒリスティックな仮定を持つ。それゆえ、我々の人生に意味を与える、個々人のお気に入りの「物語」はいずれも等しく正しいのであり、検証に値することになる。トニーは聴衆に向かって「俺はいつだって本当のことを言ってるんだ。嘘をつくときだってな」と演説していた。彼というキャラクターは時代を先取りしていたのだ。


ポストモダニズム:善行を試みるのは時間の無駄だ

ポストモダニズムは、我々の文化が真正さに重点を置き、いんちきを軽蔑することの思想的源泉である。結局、この世で唯一正しいと言えるのが、「全ての真理と道徳性とは相対的なものである」ということならば、そうでないと主張する者は、バカか詐欺師なのだ。だから当代においては、ヒーローらしからぬヒーローが人気で、正統派のヒーローは姿を消した。

ヒーローは、伝統的に良いことの象徴であるが、「良い」とされるものが長きに亘って貶められてきた世界においては、ヒーローは『ダドリーの大冒険』
https://www.youtube.com/watch?v=sgUDShPYos8
のダサい主人公のように、あまりにも愚かな人物として描かれる。これとは対照的に、ヒーローらしからぬヒーローは、どんなワルだろうと、持ち前の肝の座ったリアリズムと率直さで、聴衆に好印象を与える。フランク・アンダーウッドは観客との間の第4の壁を突破し、悪だくみを語り掛ける;ウォルター・ホワイトにとっての贖罪の瞬間は、ついに覚せい剤の密売について、妻に打ち明けた時だった。というのも、彼はそうしたかったし、家族には模範人的な態度を取りたくなかったからだ。トニー・ソプラノは、彼が本当は「ゴミ処理コンサルタント」ではないといち早く娘に認めた時、彼女との絆を深めた。ポストモダンの世界では、真正さに勝る美徳はないし、いんちき以上の悪徳はない。

ポストモダニズムはまた、深夜ドラマのコメディアンたちの口達者な冗談の裏に潜む前提の源でもある。彼らは愛国主義や宗教に対して軽蔑的で偏見に満ちた態度を示すものの、いかなる偏見でも感知すれば厳しい意見を言う。これは、『となりのサインフェルド』や、
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=81725085
『フィラデルフィアは今日も晴れ』、そして、『アーチャー』のようなおかしなテレビ番組に出てくる、目的を持たない、自己中心的な登場人物たちの殆どの会話のベースラインである。それは偏見に対抗する超偏見であり、コメディアンのエバン・セイットに言わせれば「無差別というカルト」なのだ。

人間の状態を良くするための努力というものを識別してきた数多くの宗教や倫理的思考体系、その他の古代からの伝統とは対照的に、ポストモダニズムは、このような努力こそが人類の失敗の原因だと仮定する。かくしてポストモダニズムは、ただ1つの道徳規範に従う:他の人々が善を意味すると仮定する全てを貶めるべきなのだ。というのも、あるものが、他のものより優れていると信じる結果必然的に、偏見や人間間の反目、不平等が生まれるからだ。

かくして、ミロのビーナスは尿瓶一杯の小便の中に立つ十字架より芸術的ではなくなる;ベートーベンの交響曲は最新のトップ40ヒット曲より深遠ではない;全ての宗教は根本的には同じであり、それら宗教の「穏健な」ポストモダン的追随者の教義は、「共存せよ」というバンパーのステッカーに居心地良く象徴されるのだ。ある意味、これは文化などではなく、他の人々が評価するものを解体する程度でもって成功を測る反文化なのである。


ポストモダニズムは単に偽善的理想主義を隠しているだけだ

ポストモダニズムの信奉者が何も信じず、何にも価値を認めないのだとすれば、この人たちは何も気にかけないのだと結論しても不合理ではあるまい。しかし、このような人々を知っている人ならば、何ごとも真実からかけ離れてはあり得ないことも知っている。むしろ、「無差別というカルト」は、世界をより良い場所にしようという純真な理想主義で満たされており、それが根拠のない偏見に挑む場合には、世界をより良い場所にするのである。他のユートピア的なビジョン同様、ポストモダニズムも人間をその本性とは異質な何かに作り変えようとするのだが、妥協ができないので、偽善や狂信と結び付くのである。

このような偽善は、PC軽視への怒りが選択的に適用されるとき明らかとなる。数多い「攻撃」の不誠実さを示すおそらくベストな例はMSNBCだろう。この局は、アメリカ人の生活の中にある全ての偏見のガードマンをもって自ら任じながら、この局が他人のために設定した基準に従って行動することに繰り返し失敗しているのだ。
http://www.hollywoodreporter.com/live-feed/msnbc-fires-employee-responsible-cheerios-675794
(※MSNBC公式ツイートが下に掲げる「人種差別的な」シリアルのCMを称賛するツイートを行ったため、ツイートを行った従業員がクビになった由

http://mybigappleny.com/2013/06/07/cheerioscontroversialcm/
https://www.youtube.com/watch?v=Z01qH-jqGBY

※筆者の上掲のリンク先記事によれば、ミット・ロムニーの孫(養子)の1人が黒人であることをけなしたということで、MSNBCのキャスターであるメリッサ・ハリス・ペリー
http://jp.vice.com/lifestyle/broadly-meets-melissa-harris-perry
が謝罪したとされています。 ※※)

著しく対照的なのが、ミット・ロムニーの家族が黒人の赤ん坊を養子にしたことを嘲笑しておきながら、直後に涙ながらに謝罪した、コメンテーターのメリッサ・ハリス・ペリーの態度である。恥じるような素振りながら、深く悔いているようでもない:彼女と同僚たちは、ロムニーをからかった時、深く考えもせずに、本当の感情を表してしまったのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=DfCy1nOVK9k
https://www.youtube.com/watch?v=5OpvMvj4beA
でなければ、スターウォーズのダース・ベイダーのキャラクター設定のような些細な事に潜む人種差別主義を暴くようなメリッサ・ハリス・ペリーが、どうしてこんなミスを犯すだろうか?
https://www.youtube.com/watch?v=VDFnrNtqAjo
これから分かるのは、他人のこうした行動に対して示される義憤とは、見せかけだということだ:他の目的のために無理に装われるパフォーマンスなのである。

PC軽視への怒りが選択的なものであることは、2015年の末に、アメリカの大学で沸き起こった最初の抗議行動の1つにおいて鮮明に示された。クレアモント・マッケンナ大学の学部長が、白人でない学生はこの大学にふさわしくないという意味のメールを個人的に送っていたことに抗議するデモの最中に、集まっていた学生たちは、アメリカで人種的偏見に遭った体験について公然と議論していた。
http://www.slate.com/blogs/the_slatest/2015/11/13/claremont_mckenna_dean_resigns_for_don_t_fit_our_mold_email.html
すると、1人の中国人学生が拡声器を手にして、黒人グループから差別を受けた体験を語り始めたのだが、抗議者たちはうんざりした顔で彼女を追い払ってしまったのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=A8UTj8lQJhY

彼女が自分の言いたい点をはっきりさせようとしたところ、1人の抗議者が、彼女に拡声器を向けた:「キミは脱線してるよ。いいかい。キミはこの運動の趣旨を見失っている!」 彼女自身の体験にまで議論を拡張してはデモの目標から逸れてしまうということを、この中国人学生は明らかに知らなかったのだ:それはすなわち、大学当局を威圧して、抗議者たちの望むことを行わせることだった。だから彼女は強制的に黙らされてしまったのだ。


ポストモダンに残された唯一のものは権力である

PCの虚偽性にひけを取らないのがその狂信性であり、それは近年、かなり激しさを増している。モジラのCEOに就任したブレンダン・アイク氏がカリフォルニア州の同性婚を禁止する法案(Prop 8)の支持に1000ドル寄付していたことを問題視されて辞職したり、幾つかの大学の学生たちのハロウィーンのコスチュームが不快だといって抗議が爆発したり、本人の性的同一性よりも、生物学的特徴に従ってトイレを使うのを禁じた、幾つかの州法をめぐって論争が起きたりしているのだが、こうした全てが示しているのは、ポストモダンの「無差別というカルト」が成功するほど、死に物狂いになって行く様子である。どうなっているのだろうか?

ポストモダンの人々は、彼らに残された唯一のもの、すなわち権力に最終的な満足を見出す、というのが答えだ。道徳的な優秀性は他人に対する権力の否定できない源泉であり、ポストモダニズムの道徳規範は、この前提を受け入れる誰に対しても、これを手軽に提供する。相手が偏見を持っていると単に仄めかすだけで他人を黙らせられる、このパワーは実に微妙なものであるが、その効き目はいくら強調してもし過ぎということはない。

従って、アメリカ社会がより多様になり、協調的になって行くほど、それにもかかわらず、より多くの人々が至る所で無分別な差別を見かけるようになる。だが、彼らが解体すべき伝統や制度、習慣がネタ切れになって行くと、彼らの怒りに根差したパワーは希薄になって行く。それで、より些細な事に対する道徳的ヒステリーが大きくなるのだ。

2014年頃まで、多くの人々にとってPCは、人々をより敏感にし、礼儀正しくさせる無害な努力だった。チャールズC.W.クックに言わせれば、それは、教会で淑女が行う「舌打ち」のようなものだったのだ。
http://www.nationalreview.com/article/397613/left-realizes-too-late-political-correctness-virus-charles-c-w-cooke
モジラのエピソードや大学の騒動を見て多くの人々はすぐに気付かれるだろう。プライベートでの言動に対する、根拠のないPC軽視への怒りが嵩じる結果、クビにされたり、望むキャリアを断念したり、若者の要求に注意を払い損なった権威ある人物が高慢な鼻を折られたりするのだ。

その信奉者が誰か/何かに自分の行く道の邪魔をさせないことも明らかだろう。PCという怒りのマシンが、あなたの考えの何かが間違っていると判断するや否や、それはあなたの考えや理由づけには何の興味も抱かなくなる:あなたは屈服するか、黙っていなくてはならないのだ。エール大学で抗議する学生が権力を手にしたと気付いたらしい後、彼女と妥協点を見出そうとする苦労を想像してみて欲しい。

https://www.youtube.com/watch?v=7QqgNcktbSA


トランプはポストモダニズムの矛先を相手自身に向けた

こうした状況の全てを見てくると、PCのアジェンダは我慢がならないと思い、自分で考える自由を尊重する人々の頭には、厄介な疑問が湧くことだろう。あなたがどういう理由で何を考えようが、あなたが偏屈だといって懸命に中傷してくる人間に、あなたはどう対応すればいいのだろうか?わざと言葉の意味を変え、真理とは全くもって相対的なものだと主張して、殆ど誰のことも当然のように重大な道徳的誤りを犯していると咎める人間との議論に、どうしたら勝てるというのか?

右翼でポストモダンの、ヒーローらしからぬヒーローを投入するのだ。他のどんな共和党からの大統領候補とも異なり、トランプは直感的にポストモダン文化を理解し、それを利用して、圧倒的な影響をもたらす。

我々が何を言い、何を考えようとも、反対派は我々が悪意に満ち、偏屈だと言って咎めるだろう。彼らに対して、わざわざ別の言い方をして説得を試みたところで何の役に立つだろうか?彼ら自身の相対主義と主観性というルールでプレーし、彼らの根拠のない非難を退け、彼らの一番の泣きどころ ― 偽善者ぶり ― を容赦なく痛打してやるとしよう。何と言っても、真正さに勝る美徳はないし、いんちき以上の悪徳はないのだろうから、わざとらしいPC軽視への怒りを広める人々は極めてひ弱なのだ。

左翼的な立場から非難に抗議して、自分は人種差別主義者でも性差別主義者等でも無いと思った通りを口にするのは、失敗の元である。女性の機会均等について質問を受けたロムニーが、他の言い方で必死に自分の業績を誇示しようとして「女性が一杯つまったバインダー」と発言してどうなったか、思い出されたい。
https://www.washingtonpost.com/blogs/she-the-people/wp/2012/10/17/mitt-romneys-binders-full-of-women/?utm_term=.2f5f4e866e48
トランプは代替案を提示した:事実に基づく、理性的な議論を行うのではなく、前提を否定することで非難を中和していまい、結果、告発者が判定を言い渡す権威を最初から否定するのだ。

トランプが選挙期間中に、「メキシコは強姦魔をアメリカに送っている」という有名なツイートを行い、ショックを受けた人々からの批判が噴出したのに対して、彼は直後に「ラテン系の人たちはトランプが大好きだし、私も彼らが大好きだ」と応えたのである。
http://www.realclearpolitics.com/video/2015/06/23/trump_latinos_love_trump_and_i_love_them.html
同様に、米テレビ番組「アクセス・ハリウッド」での悪名高いテープが出現した後も、クスクス笑いが聴こえる中、大胆にもトランプは、「私ほど女性を尊敬している人はいない」と主張したのだ。
http://theweek.com/speedreads/656364/donald-trump-says-that-nobody-more-respect-women-audience-snickers

トランプの反論を本気にする人が居るだろうか?そんな人は明らかに居ないだろう。それでも彼の非常識な返答は、人種差別主義者であるとか、性差別主義者であると彼を非難しても何の効き目もなく、我々のポストモダンな文化においては、ポストモダニズムだけが重要であることを示した。


詐欺師の一番の泣きどころに反撃

中でも最も重要なのは、ポストモダンのアメリカ人が、独りよがりの詐欺にすぎないものをひどく嫌う点を、トランプが理解していることだ。だから、息もつかせぬ「攻撃」的表現に直面したときの彼の「反撃」には定評がある。「性差別主義的傾向」があるというクリントンの言葉に対して、彼女の夫が女性を性的に虐待した過去を持ち出したトランプの応答からも、これは明らかだ。
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/264086-hillary-trump-has-a-penchant-for-sexism
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/264271-trump-fires-back-hitting-bill-clintons-penchant-for
予想されるような、謝罪してから話題を変えるという王道ではなく、トランプは告発者に対して、彼らの道徳的な怒りの表明は権力争いでしかないという、まことに確かな事実を呼び掛けることを選んだのだ。

実際トランプがPC軽視への怒りを挑発するのは、まさにこのせいだ。トニー・モンタナが、ぽかんと口を開けたカントリークラブの聴衆に対して鏡を向けるのと同じように、トランプは快い、息を飲むような妙技を1つ、また1つとやってのけたのである。

挑発しておいて勝つというトランプの戦略の最たる例はおそらく、移民問題に対する彼のアプローチだろう。移民を制限しようという提案は、いかに緩やかなものであろうと、常に移民排斥主義的であり、人種差別主義的であるという非難に遭うものだ。それなら、なぜあえて戦うのか?トランプは、何千万もの人々を国外追放するという、ホントにゾッとするような提案を最初に行うことで、困難を乗り切る道を選んだ。予期に違わず、怒りのマシンが猛烈に動き出した時、彼は予想されたような応急の収拾策(ダメージコントロール)を取らなかった。そうする代わりに彼は、非難をはねつけて、成り行きに任せたのだ。

トランプは人種差別主義者、ファシスト、その他諸々だと、批判者が過熱して騒ぎ立てるのを彼が無視すると、こうした怒りは徐々に衰えて行った。というのも、批判には期待した通りの効果がなかったからだ。さて、様々な問題に対するトランプによる釈明の全てが検討されてきたわけだが、それらは割に筋が通っていて、その後それらに向けられたPC軽視への怒りの噴出はうつろに響くように思われる。このようにして、トランプは繰り返し、怒りのマシンを大人しくさせ、抑え込んできた:イスラム教徒の入国禁止、テロリストの家族殺害、ベトナム戦争で捕虜になったというジョン・マケイン議員への侮辱 − これら全てが、彼を共和党の指名争いに勝利させる結果となったのだ。


こうして我々はトランプを大統領に選んだ

民主党は、共和党予備選挙でのトランプ勝利を嬉々として歓迎した。下品なおどけ者であると散々見下し、ヒトラーの再来だと嘲笑できるだろうと期待してのことだ。もっといいことには、トランプ支持者の驚くべき急増は、国民の半分が民主党サイドの長年の予測に違わぬ人々であることを裏付けるものであり、今や民主党サイドは、大声でこう言うのも自由だと思ったのだ:すなわち、共和党サイドは確かに救いようのない人種差別主義者であり、性差別主義者、ホモ嫌いの嘆かわしい人々である、と。主流派の共和党員たちは、こんな気味の悪い人たちと関わり合うくらいなら、きっと急進派の列車に飛び乗ることだろう。

もちろん、そうはならなかった。だが、どうしてだろうか?それは、トランプが勝ち続けているのが彼のイカレた発言のせいではなく、それが惹き起こした、まやかしの怒りと気取って見下す態度のせいだということを、彼の政敵たちが理解できなかったからなのだ。多くの人々が、トランプがわざと自ら浴びた軽蔑の言葉に持ちこたえる彼に共感した。トランプはヒーローらしからぬヒーローの役を演じ続け、クリントンは真珠を手に入れるペテン師の役を演じ続けたのだ。

そう、所得税を払わないから、私は悪党でしょうか?多分そうでしょう。ですがそうすることで私は、あなたの選挙運動を支援している、他の全ての億万長者同様、賢くなるのです。そう、私は性差別主義者です。だって、スーパースターというステータスのお蔭で、私は女性のお○○こをつかむことができるんだと自慢してるビデオを見たでしょう?多分、そうでしょう。ですが、この公の場で4人の女性を紹介させてください。彼女たちは、あなたの夫に公然猥褻からレイプに至るあらゆる事をされたと、あなたの夫を告発した人たちです。そう、請負業者への代金支払いをしぶる、私は強欲な実業家でしょうか?結構ですとも。あなたは、国益に反する行為で私腹を肥やす堕落した政治家じゃないですか。

私に関して彼らが言っていることはおそらく全て本当でしょう。でも、私は少なくとも偽りませんし、少なくとも正直です:それにひきかえ、あなたは血なまぐさくて、嫌気がする偽善者です。

それじゃあ、悪党におやすみを言いな!だって、この悪党こそが、我々の新大統領なのだから。


---
SOTT編集部コメント:ポストモダニズムは病的で、分裂病的な思想である。それはまた、基本的に自己破滅的だ。というのも、それは基本的に間違っており、反人間的だからだ。いやが応でも、好むと好まざるとにかかわらず、私たちの西洋文明のように、それに汚染された社会で勝利する唯一の方法は、それのルールと弱みでもってそれに対抗することなのだ。しかし、体制内にカオスを取り込む結果、「ニュー・ノーマル」がどの方向に向かうかに関しては、不確実性が生まれることになる。
posted by たカシー at 12:25| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月11日

ティエリー・メイサン「トランプは従来述べてきた通りの方向に進んでいる。反トランプの反応は戦争宣伝だ」

SOTT パペットマスター


ティエリー・メイサン「トランプは従来述べてきた通りの方向に進んでいる。反トランプの反応は戦争宣伝だ」
https://sott.net/en341874


ティエリー・メイサン(訳:ピート・キンバリー)
ヴォルテール・ネットワーク
2017年2月7日

c Martin Schoeller para Time
(写真キャプション)
タイム誌「今年の人」に写真が掲載された

トランプ大統領に関して我がヴォルテール・ネットワークが前回載せた記事に対して、一部の読者からは激しい反発の声が寄せられた。そのいくつかは、汎大西洋主義メディアが警告を発し、ネガティブな兆候が積み重なっているのもかかわらず、ティエリー・メイサンは事態を甘く見ているのではないか、というものだった。以下に彼の返答を掲げる。いつもながら理路整然としたものだ。


---
トランプの大統領就任から2週間になるが、汎大西洋主義メディアは彼に関するディスインフォメーションと扇動記事を載せ続けている。トランプと彼の新任閣僚たちは声明と意志表示を増やして行っているが、それらは相矛盾するように見え、ワシントンで何が起こりつつあるのか理解するのが難しくなっている。


反トランプ・キャンペーン

以下の4大テーマの扱いから、汎大西洋主義メディアが不誠実であることは証明可能である。

1. オバマケアの廃棄開始に関して(1月20日)
汎大西洋主義メディアでのアナウンスとは反対に、オバマケアによって利益を受ける筈の恵まれない階層の人々が、集団でこれを敬遠していたことを報じなくてはならない。この「社会保障」策は蓋を開けてみれば魅力的と言うにはあまりに負担が高過ぎ、制約が多過ぎるのだ。真の満足を得るのは、このシステムでもやって行ける企業だけである。

2. メキシコ国境の壁の延長に関して(1月23日-25日)
本件に関しては、何ら外国人嫌悪的な面はない ― 「安全柵法」に署名したのはジョージ・W・ブッシュ大統領であり、彼が構築を始めたのだ。この仕事は、当時のメキシコ政府の支持の下、バラク・オバマ大統領によって続けられた。「壁か架け橋か」という呼び方のおしゃれさよりも、
https://www.buzzfeed.com/bfjapannews/starbucks-says-human-rights-in-america-are-under-attack-1?utm_term=.jj1wnKwo#.puDdQkdK
国境強化システムが機能するためには、両国当局が運用面で合意していることが不可欠である。一方でも反対していれば、失敗に終わるものである。アメリカとしては、移民の入国をコントロールできる利益があるし、一方、メキシコとしては、武器の輸入を阻止できる利益がある。この点は何ら変わっていない。しかしながら、北米自由貿易協定(NAFTA)が適用されたため、多国籍企業は、(マルクス主義にいわゆる「利潤率の傾向的低下の法則(TRPF)」に従って)、地域性のない仕事だけでなく、地域性のある仕事も、地域性を取り除いてアメリカからメキシコへと移し、薄給の労働者によって行われるようにした(「不当なダンピング」)。このような仕事の出現は、農民の大規模な離村を惹き起こし、まるで19世紀にヨーロッパで起こったような破壊を、メキシコ社会にもたらした。その後、多国籍企業は賃金を引き下げ、メキシコ国民の一部を貧困に追いやった ― この人々はアメリカによって正当な賃金が支払われるのを夢見るばかりだ。というのも、ドナルド・トランプはNAFTAを破棄したい意向を表明しているので、近年のうちに物事が正常な状態に戻って、メキシコもアメリカも満足がいくようになるだろうからだ。[原注1]

3. 人工妊娠中絶に関して(1月23日)
トランプ大統領は、海外から資金援助を受けている、専門的なNGOへの連邦助成金の支出を禁じた。この措置によって彼は、これら特定のNGOに対して、困窮している女性を助けるという社会的目標を選ぶか、それとも、21日にワシントンで行われた「ウイメンズ・マーチ(女性大行進)」がそうだったように、ジョージ・ソロスに雇われてトランプに対する示威行動を起こすか、いずれかを選ばねばならないと警告したのである。ということであるから、本件は人工妊娠中絶とは関係がなく、「カラー革命」の防止策なのである。

4. 入国禁止令に関して(1月25日-27日)
ドナルド・トランプは、オバマ政権時代から受け継いだ法律を適用すると宣言した。すなわち、1100万人に上る不法滞在外国人を国外退去させるというものだ。彼は、この法律の適用を拒否すると公表した都市に対する助成金を停止した ― そんなことを宣言したら、どこから掃除婦を連れて来ればいいのか?という訳だ。手始めに彼は、不法入国者の中でも、アメリカやメキシコ、その他の国で刑事訴訟の被告となっている80万人の犯罪者を退去対象に指定した。これに加えて、テロリストがやって来るのを防ぐために、国籍や状況が確認できない国々からのアメリカへの入国許可を停止し、3か月間入国禁止としたのである。彼は自分でそのような国々をリストアップした訳でなく、オバマ大統領時代の法律を準用したのだ。例えば、ここシリアには、
http://www.voltairenet.org/article195196.html
もはやアメリカの大使館も領事館も存在しない。よって、行政警察の見地からすれば、シリア人をこのリストに載せるのは理に適っている。だが、これによって影響を受ける可能性があるのは、最小限の人々だけである。2015年にアメリカのグリーンカード(永住ビザ)を手に入れることができたシリア人は145人に留まる。特殊なケースが数多く発生しうることを意識して、大統領令では国務省と国土安全保障省に禁止を免除する自由を認めている。本法を容赦なく適用したトランプ大統領に反対する公務員が大統領令の適用を妨害したからといって、大統領が人種差別主義者やイスラム教嫌いだということにはなるまい。

このように、汎大西洋主義メディアが指揮する反ドナルド・トランプ・キャンペーンは、根拠のないものである。彼がイスラム教徒との戦争を始めたように見せかけたり、彼が窮しているとか暗殺される可能性を連想させる記事を公にすることは、もはや単なる不誠実では済まされない ― これは戦争宣伝だ。

https://www.youtube.com/watch?v=0fE1wxdgdpk


ドナルド・トランプの目標

ドナルド・トランプは、911の公式見解に世界で最初に異議を唱えた人物である。それは当日テレビで行われた。ツインタワーを建てた技術者が今は自分のところで働いていると述べた後、彼はニューヨークの9チャンネルで、ツインタワーの鉄骨構造を突き破るのは、ボーイング機には不可能だと断言した。続けて彼は、ボーイング機ではツインタワーの倒壊もあり得ないと語ったのである。結論として彼は、我々には未だ気付いていない他の要因があるに違いないと請け合った。

この日からドナルド・トランプは、この犯罪を犯した人々に対する抵抗を止めていない。就任演説の中で彼は、これは2つの政権の間での統治権の移行ではなく、16年に亘って統治権を奪われていたアメリカ国民への統治権の返還であると述べた。[原注2]

大統領選挙運動の間にも、政権移行期間中にも、さらには就任後も彼は、過去の年月における帝国主義体制は決してアメリカ国民の利益にはならなかったのであり、クリントン夫人が象徴する小グループに利益をもたらしただけだと繰り返し述べていた。彼は、アメリカはもはや、「一番」になろうとするのではなく、「最高」を目指すのだと宣言した。彼のスローガンは、「アメリカを再び偉大にする」であり、「アメリカファースト」なのだ。

この180度の政治的転換は、過去16年以上に亘って導入されてきた体制を揺るがすものである。この体制のルーツは、1947年の冷戦時代に遡る。当時はアメリカだけが望んだものだった。この体制は壊死したが、NATO(イェンス・ストルテンベルグとカーティス・スカパロッティ司令官)、EU(フェデリカ・モゲリーニ)、そして、国際連合(ジェフリー・フェルトマン)のような数多くの国際機関という残滓を残した。[原注3]

もしドナルド・トランプが目標を達成するとしても、それには数年掛かるだろう。


アメリカ帝国の平和的解体に向かって

2週間の間に沢山のことが始まったが、それらはしばしば偉大な決定によるものだった。トランプ大統領と彼の政権チームによる、響き渡る宣言は、恣に混乱を拡げる結果ともなったが、それによって彼は、一部に敵意ある議員が存在するにもかかわらず、彼の協力者たちの指名が承認されるのを確実にすることができた。

これは、ワシントンで始動したばかりの2つの体制の間の決死の戦いであることを我々は理解しなくてはならない。汎大西洋主義メディアがしばしば相矛盾するコメントや辻褄の合わない声明に対して、あれこれコメントし、独自の見方を行うのは放っておこう。

何はさておき、ドナルド・トランプは安全機構に対する彼のコントロールを確実なものとした。彼が最初に指名した3人の将軍たち(国家安全保障問題担当大統領補佐官マイケル・フリン、国防長官ジェームズ・マティス、国土安全保障長官ジョン・ケリー)は、2003年以来、「政府の継続性」と戦ってきた人たちである。[原注4] 次に彼は国家安全保障会議(NSC)を改革し、常任メンバーから統合参謀本部議長とCIA長官を外した。[原注5]

後者の命令はおそらく見直されるだろうが、未だそれは行われていない。
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-cabinet-spies-idJPKBN15O047
ちなみに、ドナルド・トランプとフリン将軍が、国家情報長官のポストを廃止したい意向であると、私は以前述べた。[原注6] しかし、このポストは保たれ、ダン・コーツがそれに指名された。この結果、NSC改革の協議は、国家情報長官がNSCの中に居れば、CIA長官を外すことを十分正当化できるだろうと示す戦術だったことが明らかとなった。

「一番」という言葉を「最高」に置き換える結果、ロシアおよび中国と一時的に衝突するよりも、それらとパートナーシップを結ぶという方向に向かうことになる。

この政策を妨害するため、クリントン夫人とヌーランド夫人(=元国務次官補)の友人たちは、ドンバスへの攻撃を再開した。戦闘開始以来重大な損失を被った結果、ウクライナ軍は撤退し、前線にはネオナチの民兵を置くことにした。戦闘は人民の新たな共和国の住民から多くの犠牲者を出した。同時に中近東では、オバマ政権の計画通り、シリア戦線に戦車を投入しクルド人に砲撃を加えることができた。

ウクライナ紛争を解決するために、ドナルド・トランプはペトロ・ポロシェンコ大統領を追い出すのを手伝う方法を探しているところだ。それで彼は、ポロシェンコ大統領からの電話を受ける前に、野党の指導者であるユーリヤ・ティモシェンコとホワイトハウスで会ったのだ。

ドナルド・トランプの報道官は否定しているものの、シリアとイラクで彼は、ロシアと共通の作戦を既に開始している。軽率にもこれを明かにしてしまったロシアの国防相は、この件に関して発言するのを止めた。

北京に関して言えば、トランプ大統領は環太平洋連携協定(TPP) ― 中国を抑制するために構想された条約 ― から離脱した。政権移行期間中に彼は、アリババの創業者で、中国で2番目に裕福な男であるジャック・マーに会っている(「他の国々が米国の雇用を盗んでいるわけではない。米国の戦略のせいだ。(戦争にカネを使い過ぎ)適切な形で資金を配分しなかった米国が悪いのだ」
http://jp.wsj.com/articles/SB10852398588237353609804582582451394187724
と確言したビジネスマンである)。彼らが議論の中で、ワシントンがアジアインフラ投資銀行(AIIB)を支持する可能性に触れたことは、既にご紹介した通りである。もしそういうことになれば、アメリカは中国を邪魔するどころか、協力に合意するだろう。両国が2つのシルクロード建設に参加すれば、ドンバスやシリアでの戦争は無意味になるだろう。

金融に関して言えば、トランプ大統領は、ドッド・フランク法の廃止に着手した。メガバンクを残酷にも破綻させることを避ける(「大き過ぎてつぶせない」)ことで、2008年の金融危機を解決しようとした法律である。この法律にはポジティブな面も幾つかあるが(2300ページもある)、財務省が銀行を保護監督するという部分は、明らかに銀行が発展する妨げとなるものだ。ドナルド・トランプは商業銀行と投資銀行との区別(グラス・スティーガル法)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E6%B3%95
を復活させる準備もしているようだ。

最後に、国際機関の浄化も始まっている。新任の国連大使であるニッキー・ヘイリーは、16の「平和維持」ミッションについて監査請求を行った。役に立たないと思われるものは終わらせたいと言明したのだ。国連憲章の考え方からすれば、このようなミッションの全ては例外なく監査を受けることになろう。実際、国連の創設者たちは、この種の軍隊派遣は予見していなかった(こんにちでは、男女合わせて10万人以上に上っている)。国連は国家間の紛争を防止し、あるいは解決するために作られたのだ(内戦は対象ではない)。両当事者が停戦協定を結んだ際、国連は協定が尊重されているか確認するために、監視員を派遣するのである。しかしそれとは反対に、これらの「平和維持」活動(PKO)は、国連安保理が解決策を押し付け、紛争の一方当事者が拒絶した場合に、この解決策の尊重を強制するのが狙いとなっている ― これでは実際のところ、植民地主義の継続である。

実際、このような軍隊が駐留しても紛争は長引く結果となる一方、居なくなったからといって何も変わらない。だから、イスラエル・レバノン国境に派遣されている国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の兵員はレバノンの領土だけに駐留しており、イスラエルの軍事行動も、レバノンの抵抗組織による軍事行動も阻止しないのは、既に我々が何度も見た通りである。イスラエルのためにレバノンに対してスパイ活動を行うことだけがUNIFILの役割であり、このため紛争は長引いている。同様に、ゴラン高原の兵力引き離し地帯に派遣された国際連合兵力引き離し監視軍(UNDOF)の兵員は、アルカイダによって追い払われてしまったが、それでもイスラエルとシリアとの紛争状態には何の変化も起きていない。このシステムを終わらせることは、国連憲章の精神と字義に立ち返って、植民地という特権を否定し、世界平和を目指すことである。

メディアによる論争や、街頭デモ、政治家同士の対決の陰で、トランプ大統領は従来述べてきた通りの方向に進んでいる。

原注:
1. "Behind the bipartisan wall", by Manlio Dinucci, Translation Anoosha Boralessa, Il Manifesto (Italy), Voltaire Network, 28 January 2017.
http://www.voltairenet.org/article195093.html
2. "Donald Trump Inauguration Speech", by Donald Trump, Voltaire Network, 21 January 2017.
http://www.voltairenet.org/article194999.html
3. "Germany and the UNO against Syria", by Thierry Meyssan, Translation Pete Kimberley, Al-Watan (Syria), Voltaire Network, 28 January 2016.
http://www.voltairenet.org/article190102.html
4. "Trump - enough of 9/11!", by Thierry Meyssan, Translation Pete Kimberley, Voltaire Network, 24 January 2017.
http://www.voltairenet.org/article195017.html
5. "Donald Trump winds up "the" organization of US imperialism].]", by Thierry Meyssan, Translation Anoosha Boralessa, Voltaire Network, 31 January 2017.
http://www.voltairenet.org/article195148.html
6. "General Flynn's Proposals to Reform Intelligence", by Thierry Meyssan, Translation Anoosha Boralessa, Contralínea (Mexico), Voltaire Network, 1 December 2016.
http://www.voltairenet.org/article194312.html
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2017年02月09日

スティーブ・バノン − トランプのホワイトハウスでの最高実力者

SOTT パペットマスター


スティーブ・バノン − トランプのホワイトハウスでの最高実力者
https://sott.net/en341556


デイビッド・フォン・ドレル
タイム
2017年2月2日

c Andrew Harnik−AP
(写真1枚目のキャプション)
1月28日、大統領執務室内を歩き回るバノン(右から2人目)。トランプ大統領はウラジーミル・プーチン露大統領と電話で話している

現代の大統領の殆どは、序盤の指し手の計画を立てるにあたり、友好な関係にあるシンクタンクの助けを借り、あるいは、長年抱いてきた信念を拠り所にする。

ドナルド・トランプの最初の一歩はあたかも、彼の首席戦略官で分身であるスティーブン・K・バノンが製作したドキュメンタリー映画という感じだ。映画監督のジョン・フォードがロケ地にモニュメント・バレーを選んだのと同じくらい、バノン監督には飢えたサメや吠える竜巻、あるいはキノコ雲がよく似合う。

トランプ政権は混乱の幕開けとなったが、これはトランプが約束していた通りであり、計画したのはバノンだ。これに応じて、政府内外の多くの人々が抵抗している。これはおそらく驚くべきことではないのだろう。トランプは国民に対して去年のうちから何度も、自分の施政はありふれたものではないと言っていたのだから。やり手の大統領になるべく、選挙戦をスタートさせた彼は、運動の指導者として自ら前面に立つようになった― だが、兵站なくして達成される運動はない。バノンこそが政策を純粋に保つ献身的な支持者である。彼がトランプの側近を務めるのは、カネや地位のためではない。歴史を変えるためなのだ。「我々が今、目の当たりにしているのは、新しい政界秩序の誕生なんだ」と、バノンはワシントンポスト宛てのメールで述べている。

この強力な側近の存在は、既にホワイトハウス内に亀裂を生じさせている。政権発足から1週間そこそこの1月27日の夜遅く ― 関係部局長や議会指導者、マスコミには(殆ど)何の説明もないまま ―、トランプは120日間、難民受け入れプログラムを停止し(シリア難民の場合は無期限)、イスラム教7カ国からの入国を禁じた。そのほぼ直後にアメリカの税関と国境警察官は大統領令の対象となった航空路の旅客を引き止め始めた。この中には、もっと早い便を取っていれば、入国が可能だった、有効なグリーンカード(永住ビザ)を持つ100人以上の人々も含まれていた。アメリカじゅうの空港に、ボール紙にマジックで抗議の言葉を書いた人々が殺到、何千という人々の姿がテレビに映し出された。

抗議の嵐がホワイトハウスの門前に迫った翌28日、ホワイトハウスの上級職員の多くは、年に1度秘密裏に行われるアルファルファクラブの夕食会に参加するため出払っていた。政治屋が億万長者と、正装で共に飲んだり、冗談を言ったりするオフレコの夜会である。だがバノンは、彼が廃止すべきだと考えている、このエリートたちの会合を避け、衝撃と畏怖を続けさせるべくホワイトハウスに留まっていた。

既に陰鬱で冷酷な内容の就任演説の起草と、難民入国禁止の発令を手伝い終えていたバノンは、自らを国家安全保障会議(NSC)に招聘するようネゴすることで、この組織をあっと言わせる方へと進んだ。突如として至る所、彼の指紋だらけとなった:1月30日にトランプは、国家的メディアは「反対野党」だとツイートしたが、これは数日前にバノンがニューヨークタイムズに語った時の言葉を繰り返したものだった。

(写真2枚目)

一度に大統領になれるのは1人だけであり、ドナルド・トランプは官職を譲った訳ではない。だが、政権発足以来数日の、太った皺だらけのバノン(ホワイトハウスで、ネクタイとスーツを身に着けずにトランプ氏の執務室に入ることができる唯一の男性側近)は、
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2017/02/04/kiji/20170204s00042000055000c.html
思い出せる限り、これまでのどの側近スタッフよりも影響力を行使できる才能を持っている。彼の同僚たちはバノンを「百科事典」のあだ名で呼ぶ。彼の頭の中の情報の幅広さのためだ;だが、それよりも何よりも、バノンはトランプとマインドメルドが出来るのだ。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=79769349
2人の結び付きについて、「彼らはどちらも、本当に偉大な語り部よ」と大統領顧問/カウンセラーのケリーアン・コンウェイは述べる。「大統領とバノンには、知識を吸収し、結果を考えるという共通の特質があるの」

彼らは、話好きで、厚かましく、喧嘩っ早くて、カネを惹き付けるという経験も共有しているが、エリ−トにはいまひとつ相応しくないものだ。民主党支持の家系に生まれながら、自分の意志で共和党を選んだバノンは、どちらの党も相当程度に堕落していると見做すようになったが、このような信念から近年は、論争を巻き起こす映画の製作者や物議を醸すニュースサイトの運営者というキャリアを築くことになった。私人としてのバノンにパーティーで会ったことがあるという人物は、その時の様子を思い出してこう述べる。「バノンは私に、『自分はレーニンみたいなものだ。こんにちの支配者層の全員を打ち倒し、破滅させてやりたいんだよ』と言ったのです」

辿り着くまでの道は違ったものの、バノンとトランプは、貿易や移住、公安、環境、政治腐敗等々の問題に関して思想的に同じ目標を持っていることに気付いたのだ。

それにしても政権発足から10日間のバノンの傑出ぶり ― そして、彼の破壊的なお家芸である、混乱と無秩序に満ちた場面の数々 ― は、ホワイトハウスを狼狽させたし、おそらくは大統領さえもが仰天したのではないだろうか。政府高官によれば、トランプは彼をキビキビと諌めてくれる重要なアドバイザーを6人程召喚しているという。全ての案件は、トランプの指示を仰ぐ首席補佐官のラインス・プリーバスを通される。次席補佐官のケイティ・ウォルシュがスケジューリングしなければ、何ごとも進まない。「いずれ、おそらくもっとゆっくりとした、審議を経るプロセスが見られるようになるだろう」とある官僚はタイムに語った。

それでもバノンは、大切なワシントンの流儀を保っている:大統領執務室にアポなしで入って行ける特権だ。そして彼こそは、トランプを勝利に招くメッセージに集中させることが実にうまい人物なのだ。他のアドバイザーたちがトランプを変えようとしてきたのに対して、バノンはトランプにスピードを上げるよう勧めてきたのである。

秩序正しいオフィスと名誉ある改革運動という、これらのイメージはいずれも、大統領にとって真に魅力的なものだ。これらはおそらくトランプを反対の方向に引っ張り続けることだろう。トランプ就任したての日々をとても活発なものとして際立たせることで、バノンは、トランプが分断者であるというイメージを強調した。その意味では、ある老練な共和党員が言ったように、「既に勝負はあった。バノンが勝ったのだ」と言えよう。

c Chip Somodevilla−Getty Images
(写真3枚目のキャプション)
2017年1月31日にホワイトハウスのルーズベルト・ルームで行われた、政府のサイバーセキュリティー専門家との打ち合わせを始めるにあたり、ドナルド・トランプ大統領の話に耳を傾ける首席戦略官スティーブ・バノン

ドナルド・トランプお気に入りの著書である『トランプ自伝: 不動産王にビジネスを学ぶ』をじっくり読んだことのある人はお気付きだろうが、彼はスタンドプレーやたわいない会話、大言壮語や論争を、成功を追求する上で有益な要因と見ている。「私が取引を決定するスタイルは極めてシンプルかつ率直なものだ」と彼はこの著書で宣言している。「私はとても高いところに狙いをつけ、狙ったものを手に入れるべく、押して押して押しまくるんだ」

アメリカじゅうどこを探しても、おそらくワシントンぐらい頑として押しに耐える地域はないだろう。しかしトランプは、一つには今が普通の時期ではないと理解することによって大統領選に勝った。テクノロジーは殆ど全てのアメリカ人の手のひらの中に、コミュニケーション革命の成果を送り届けた。これがグローバル化した経済による経済的落胆と一緒になったときに生まれるパワーは、新たなポピュリズムを解き放つ。人類の歴史において、良いものであれ、悪いものであれ、グループを組織することや、真実と嘘をコミュニケートすること、当局に質問して当局による回答を批判することは今ほど容易ではなかった。トランプは増大しつつある、このパワーを、伝統的なパワーの番人たち ― メディア、政党、公選された/されないボスたち ― を出し抜くことで活用したのである。

オンラインニュースサイトである「ブライトバート」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF
における経歴は、バノンに同様の教訓をもたらした。今は亡きアンドリュー・ブライトバートによって、MSMに対するオルタナティブとして創設されたこのニュースサイトは、たちまちアメリカの政界における破壊力となった。アンソニー・ウィーナーに訊いてみたまえ。2011年、ニューヨーク州選出のこの連邦下院議員は、大志を抱いた民主党の草の根政治家だった。するとブライトバートは、ウィーナーのツイッターフィードからのスクリーン画像を公開したのだが、これがきっかけとなって、彼の深夜のセクスティング癖が暴かれることとなったのだ。あとはソーシャルメディアがやってくれたのである。創設者が2012年に急死したため、友人であるバノンが指揮を執ることになった。ブライトバートがビデオやラジオ、マーチャンダイジングへと急成長し、いくつかの海外支局を開設するにつれて、このサイトは扇動的な見出しに磨きをかけ、いわゆるオルタナ右翼の政治ごろの拠り所となって行ったのだが、そのような人々の中には、白人至上主義という忌まわしい理想を懸命に称揚する者たちも居た。

このような雰囲気はバノンがブライトバートを引き継いだ、デビューの頃に撮影されて、ウイルスのように広まったビデオから窺い知ることが出来る。古風な作風のビデオで、賢いナレーターが、ミツアナグマという、ひたむきに捕食を行う獣についてコメントしている。蜂に刺されようが、ヘビに噛まれようが、この動物は決して獲物を殺して食べるのを止めないのだ。「ミツアナグマは屁とも思わない」とナレーターは締め括る。バノンはこのフレーズをモットーに採用した。

c Seth Poppel/Yearbook Library
(写真4枚目のキャプション)
バーモント州リッチモンドにあるベネディクティン・ハイスクールの卒業アルバムからのスティーブ・バノンの写真。1972年

ワシントンの役人たち及び世界じゅうの同様の官職にある人々は、このミツアナグマたちが今現在どの程度主導権を握っているのか理解しようと躍起になっている。このアナグマたちが変革に飢えていて、― 他国の指導者やダボス会議の常連は言うに及ばず ― 専門家や議員、ロビイスト、篤志家の群れに刺されても気にしないことは疑問の余地がない。実際、彼らはそれが気に入っているように見える。

首都は入国禁止令をめぐって興奮状態にあり、共和党からも民主党からも非難ごうごうである。トランプの政策アナグマでバノンに同調しているステファン・ミラーが、穏やかにカメラの前に歩み出た時、彼がトランプ政権のスタッフを辞任するのではないかとの噂が渦巻いた。「機能不全となった正統的な制度に挑戦する施策を何か行って大成功を納めたときは、いつだって抗議が起こるものだ」と彼はCBSニュースに語った。
http://fortune.com/fortune500/cbs-203/
「実際、不賛成者も出ないような施策では、物事のあり方にとって重要なことをやったことにはおそらくならないだろう」

ほぼあらゆる方向から自信を喪失させるような非難を浴びているトランプは普通なら姿勢を和らげるだろう。アナグマではないのだ。だがこの国には、過激な中間層が数多く存在していて、トランプが大統領選に勝ったのだ。激怒したエリートたちの金切り声を歓迎する人々も多い。カンザスシティーのあるビジネスマンは大喜びでこう語る。「彼は正しい人たちみんなを狼狽させているんだ」

バノンに手伝われてトランプは思い出した。自分はジョージ・W・ブッシュがやったように統合者であることを優先しないし、バラク・オバマのようなやり方で分断を修復する提案もしないのだと。新大統領は「忘れられた人たち」の擁護者としてのイメージを入念に作り上げようとしているが、皆さんご存知の有名人たちを念頭に置いたものだ。新たな目標を設定してこそ新しい発想は浮かぶ。「物事を行うにはいつだって決まったやり方がある、と人々は言う」とは、トランプに信頼されている、ある側近の言葉だ。「我々はこう言う。『そうだね。でも、その結果を見てみたまえ。うまく行ってないんだ。我々は新しいやり方を試しているんだよ」

トランプもバノンもこれに同意する。だが、ここで謎が生じる。ビジネスマンとしての長い経歴を持つトランプは、常に混乱を狙うが、最終的な目標は握手することである:取引だ。これに対して映画やラジオショーでのバノンからは、もっと終末論的な性向が窺われる。

2000年代初頭のある時期バノンは、世代論者のウィリアム・ストラウスとニール・ハウの書いた『第4の曲がり角』という本
https://www.youtube.com/watch?v=qmg9DxpDfuI
に魅了された。この本によれば、アメリカの歴史は、4段階サイクルの繰り返しなのだという。ある世代が危機に陥ると、次の世代が制度を採用し、その次の世代が制度に反旗を翻す。すると、次の世代は過去の教訓を忘れてしまい、その次にはまた危機が訪れるのだ。1サイクルは大体80年で、独立戦争(1775-1783年)の時期から南北戦争(1861-1865年)期、その次は第2次世界大戦(1939-1945年)期が80年のサイクルを成していると、バノンは指摘する。第4段階の転換期において、制度は破壊され定め直されるのである。

タイムとのインタビューで著者のハウは、10年以上前に、この本を原作とした映画を作らないかと、バノンから打診されたことを思い出している。最終的にこれは、2010年にリリースされた『ジェネレーション・ゼロ』につながった。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68603754.html
この映画でバノンは、2008年の金融危機を転換期の兆候になぞらえている。ハウはこの分析に、部分的に同意している。どのサイクルでも危機後の世代が出てくる。今回はベビーブーマー世代がそうで、ついにはこの中から、「前回の危機の記憶を持たないリーダーたちが出て来るのだが、このリーダーたちがいつものように、次の危機へと社会を導くのだ」とハウは言う。

バノンはかつて、「庶民の守護聖人」と称していたぐらいで、歴史的な極めて差し迫った危急時=世界の転換期に、国家的な政治イベントを起こして、古い秩序を一掃し、新しいものを打ち立てて楽しんでいるのだろうと思われた。ジェネレーション・ゼロでは、歴史家のデイビット・カイザーがフィーチャーされているのだが、カイザーの記憶では、映画の中でバノンからインタビューを受けた際、バノンは楽しそうにやり取りに夢中になっていたという。

しかし、歴史の現フェーズは、来たるべき大戦争の予兆であるとバノンが論じ始めた時、カイザーはギョッとしたものだと、タイムに語った。「彼がこう言ったのを覚えています。『ご覧なさい。独立戦争があって、その後南北戦争がありましたが、それは独立戦争より大規模なものでした。その次が第2次世界大戦ですが、これは南北戦争より大規模だったのです』」とカイザー。「彼は映画の中で私にそう言わせようとすらしたのですが、私はその気になれませんでした」

ハウもまた、バノンの「今後のアメリカについてのかなり深刻な展望」には衝撃を受けていた。バノンは自分のラジオショーの中で繰り返し、世界の至る所で、「私たちは過激なジハーディストと戦争しているのだ」と述べている。これは「世界的な存亡をかけた戦い」であり、「中東では再び、大規模な武力戦争」に発展するだろう。中国との戦争も迫っている、とも彼は述べている。このような確信は、ブライトバートのミッションの骨格を成している。2015年11月に、彼はこう説明していた:「我々の大きな信念=当サイトの中心的な組織化原理は、私たちが戦争中であるということだ」

スティーブ・バノンを理解するには、彼の父親に起きた出来事を理解する必要がある。「私は、ブルーカラーの、アイルランド・カトリックを信仰し、ケネディーと組合活動と民主党を支持する家庭の出だ」と、彼は以前、ブルームバーグ・ビジネスウィークに語った。父のマーチン・バノンは最初、電話会社のアシスタント中継手に就職し、その後架線作業員として苦労を重ねた。マネジメント層に昇格した父バノンは働いて得た給料で妻と5人の子供たちから成る快適な中流生活を手に入れた。友人たちによれば、バノンは頻繁に、リッチモンドのジンター・パークにほど近い実家に住む、現在95歳となり妻に先立たれた父親を訪れるという。

前回の金融危機は、父マーチンの老後の蓄えに大打撃を与えた、と一家に近しい人々は言う。バノンは、ゴールドマン・サックス時代のウォールストリートで働くかつての同僚たちに怒りの目を向ける。彼らはほとんど無傷で、支払いを免れて再浮上したが、彼の父親のような、かつては偉大だったアメリカの中間層が、ダメージを吸収させられたのである。

「急激な変化が起きたのは2008年のことだったと思う」と語るのは、元共和党バージニア州責任者で家族との古くからの友人であるパトリック・マクスイニーだ。バノンはこれを「根本的な不公平」の問題として見ていた:彼の父親のような勤勉な人たちが疲弊してしまったのだ。しかも銀行家たちは救われたのである。

この時までバノンは、彼が後に言っているように、「これ以上はないというくらい頑固な資本主義者」だった。1953年生まれのバノンは、バージニア工科大学では学生自治会長だったが、2015年のインタビューでブルームバーグのジョシュア・グリーンに説明しているように、海軍に入隊するまでは政治に対して特に関心がなかった。「私は入隊するまでは政治的な人間じゃなかったんだが、そうしてみていかにジミー・カーターが物事を台無しにしているか分かったんだ。私はレーガンの大ファンになったよ」と彼は言う。「だが、私が支配者層全体に背を向けるきっかけになったのは2008年にアジアで経営していた会社から戻って来て、ブッシュがカーターと同じくらいひどいことをしているのを見たことだった。国じゅうが災難に遭っていたんだ」

海軍士官を7年務めた後、バノンはジョージタウン大学で国防学の修士号を取得、続いて、ハーバード・ビジネス・スクールで経営学修士号(MBA)を取得した。その後、大手証券会社であるゴールドマン・サックスに勤務したが、そこで彼が目にしたのは危険を回避するパートナーシップの退屈な文化が、他人のカネを危険にさらすギャンブラーたちによるおおっぴらなカジノ取引へと変じる様子だったと言う。
http://fortune.com/fortune500/goldman-sachs-group-74/
彼は証券会社を辞め、ビバリーヒルズに娯楽の専門商社を興した。彼は一時期、軍艦のビデオゲーム・プレイヤー向けのVRグッズ販売にも手を出した。彼のパートナーだったスコット・フォースはタイムに対して、フォース自身は理論より実践を重んじるタイプだったのに対して、バノンは既存の枠にとらわれない考え方をする推進役だったと語った。「アグレッシブさが全てだった」とフォースは言う。「バノンは決して嫌とは言わせない性格なんだ。彼はスポンジのように知識を吸収する。とても聡明だし、人の話をよく聞く。彼は戦略家で、大体3、4歩先を行ってるんだ」

この小さな会社は大手の顧客を獲得しており、その中には、サムスンやMGM、さらにはイタリアのトランプと言うべき、後に首相となった億万長者、シルヴィオ・ベルルスコーニも含まれていた。だがバノンの最大の成功はすぐには訪れなかった。1993年、CATV界の大御所であるテッド・ターナーは、キャッスル・ロック・エンターテインメントを買収したのだが、仲介をしたのがバノンであり、バノンがこの途方もない話をもちかけた時は、ギリギリになってターナーが銀行に対して投資するようせがんだのだ。現金の他にも、バノン商会はキャッスル・ロックのTVショーを5つ手に入れた ― その1つが、国民的ドタバタコメディ『となりのサインフェルド』である。

その一方でバノンは、アリゾナ州の砂漠に作られた人工生態系「バイオスフィア2」での問題含みの実験を運営するという、普通でない回り道をしながらも、徐々に仲介者から映画製作者の道へと進んで行った。1999年、彼は『ティトゥス』という映画の共同製作責任者を務めた。シェークスピアの戯曲を翻案した、スター揃いの映画だったが、これは不発に終わった。ドキュメンタリーに転じたバノンは、自ら脚本と監督を手掛けるようになった。「右翼のマイケル・ムーア」となった彼は、ロナルド・レーガンやサラ・ペイリン、ミシェル・バックマンを称賛する映画を撮った。

ミネソタ州選出の上院議員だったバックマンはバノンについて、MSMには見ることが出来ず、見ようともしないものを見ることができる人物だと語る。アメリカでは東海岸のエリートに対する嫌悪感が募っており、「トランプが国民を忘れられた人々と呼んだグロテスクな風刺演説」通りにエリートたちが解任されているのだとバックマンは言う。「バノンはただ、国民に声と演壇を与えようとしただけなのよ。単に無視されただけでなく、MSMから嘘をつかれてきた人々にね」

バノンの人生は、政治や金融、文化といったあらゆる種類のエリートに対する改革運動となった。バノンの思想的変化は、彼の服装に表れている:彼のお気に入りの恰好であるTシャツに半ズボン、無精ひげを見たら、ゴールドマン・サックスに務めていたとは誰も思わないだろう。

バノンと袂を分かった、数多くの元ブライトバートのスタッフたちは、バノンが気性の激しい人間だと言う。バノンの友人で、共和党顧問のジョン・パドナーは、短期間、ブライトバートのスポーツコーナーの編集者として働いていたことがあるが、当時を思い出してこう語る。「バノンは私を叱りつけた」その数時間後、バノンは機嫌を直し、パドナーに割のいい仕事を世話したという。「彼は猛烈に非難してきながら、同時に称賛してくるんだ」


誰もがバノンに対して寛大な訳ではない。「彼は法律こそ犯さないものの、私が相手にした中でも最悪の人間だ」と、ブライトバートの編集者だったベン・シャピロは去年タイムに対して語っている。「彼はいつでも人々を罵っている。何ごとも戦いと見なしてるんだ。妨害されたと感じるたびに、必ず相手を破滅させるんだよ」。元ブライトバート従業員で、保守系コメンテーターのダナ・ローズチも同じような感情を抱いたと述べている。「神の作り給うた緑の地球上で最悪の人物の1人よ」と、彼女は自身のラジオショーで去年言っていた。バノンは1996年に、元妻と口論になった末DVをはたらいた廉で告発されたが、彼女がバノンに不利な証言を拒んだため、彼は不起訴となった。後に彼女は法的文書の中でこう主張している。すなわちバノンは、娘たちのために私立学校に対して異議を述べたのだが、その理由は、学校に多くのユダヤ人生徒が居て、「不機嫌なガキ」に育って行く様子が嫌いだからなのだ。バノンがこれらの主張を否定したので、タイムが本件に対するコメントを求めたところ、ホワイトハウスの広報を通して断ってきた。

トランプの中にバノンは、自分と同じ、究極のアウトサイダーとしての特質を見出した。バノンは大統領候補だったトランプを彼のラジオショーに度々出演させており、元スタッフたちは、トランプを支持する物語を、バノンが定期的に流し続けるよう命じたと言っている。今やバノンがトランプに刷り込んだ内容は、ホワイトハウスの重要なポジションに元ブライトバートのスタッフを雇うということから、大統領の机の傍に飾るのに、アンドリュー・ジャクソン  ― バノンが崇拝する人物の1人 ―  の肖像画を選ぶことに至るまで、大統領の決定に影響を及ぼしている。

「バノンが真に本能を発揮するのは政策面においてだ」と、トランプの昔からの支持者の1人は言う。どんな政策だろうか?「全部だよ。バノンはトランプの世話役なんだ」。トランプのホワイトハウスでは、大統領が持たせたいと思うだけのパワーを人は手に入れ、保つことができると、このアドバイザーは言う。だが、トランプとバノンは、「大統領選の前に、一緒に座り、彼らが大統領執務室ですぐに行いたいことのリストを作ったんだ」とアドバイザー氏。トランプはどのアイテムに印を付けるか決める方だった。「バノンは賢いから、トランプにリストを与えたんだ」

破壊的なトランプがどれだけ支配層エリートの激怒を買うことを喜ぼうと、彼の焼き畑農業スタイルはホワイトハウス内に緊張を生み出した。トランプは首席補佐官のプリーバスに対して、これからは、もっと指揮系統を強化し、コミュニケーションを活発にするよう命じたと、上級スタッフは言う。大統領顧問/カウンセラーのケリーアン・コンウェイは、ホワイトハウスから、政策/法律立案作業者に対する連絡を行う役割を強化する計画に同意した。

この数週間における政権内部の苦悩は、明らかに心配の種だ。政権関係者によれば、入国禁止令を大急ぎで出すという決定は、関係文書を回覧していたNSCの専門スタッフがプレスにリークしようとしていることに気付いたバノンとステファン・ミラーが、比較的秘密のプロセスに従って行ったものだという。バノンとミラーは、今回の大統領令のメモ/原案に目を通す人数を減らす方向で動いた。議員、そして閣僚ですら蚊帳の外に置かれ、あるいは、原案へのアクセスを厳しく制限された。

結局、賛否両論の中、入国禁止令はサインされ、大混乱が起きたのだと、この関係者は言う。有効なグリーンカード(永住ビザ)でアメリカに入国しようとしている人々の数は未確定である。最初にホワイトハウスが行った指導は、この人々全員も引き返すべきだというものだった。だが、入国や市民的自由を専門とする弁護士たちが、大統領令に異議を申し立てようと連邦裁判所に大挙して押しかけたため、ホワイトハウスも前言を撤回し、グリーンカードを持つ人々は禁止を免除されるとの声明を出した。レポーターたちは、入国が禁じられる出立国の名前のような基本的な事実ですら調べるのに苦労した。数日後には、大統領までもが、バノンをNSCの常任メンバーに任命する命令を修正するよう介入した。トランプは、CIA長官のマイク・ポンペオもそこに加えたかったのだ。

入国禁止令が出されてから4日後の1月31日の夜には、ホワイトハウスは通常の姿勢を見せようとしていた。トランプはゴールデンアワーのニュースで、最初の最高裁判事にコロラド出身の保守的なニール・ゴーサッチを指名したアナウンスが流れるよう画策した。だが、もしトランプ政権がついに堅実さを示したのなら、きっとバノンが追放されたということではないだろう。

大統領はまたしても軌道修正を行った。だが、彼の中心的な、ポピュリスト的メッセージと方法=バノンとの会話で生まれたそれは残ったままだ。忘れられた人々のための戦いにおいて、混乱は悪い事ではない ― より深い思慮と最終仕上げを伴って行われることは必要だが。

支配者層を解体し、それを指揮しようとしての悶着は、トランプが政権の座にある限り続くことだろう。それは、内部で目覚めたアウトサイダーなら誰もが直面する矛盾だ。トランプが物語を紡いだ大統領選挙戦の全体は、ダビデとゴリアテの対決だと、ある政権高官は述べる。だが、今やダビデは王となったのだ。「ダビデはゴリアテに投石器で石を放ったが、記者会見を開いたり、大統領令にサインしたりしなかった。我々がここで行っていることは必ずしもそう早く進みもしなければ、見事に解き放たれもしないのだ」
posted by たカシー at 06:12| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする