2017年08月13日

恋するエクソシスト − 「起こるかも知れないこと」の物語(上)

恋するエクソシスト − 「起こるかも知れないこと」の物語(上)
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/


トーマス・フレンチ
セント・ピーターズバーグ・タイムズ
2006年


プロローグ


これは、類まれなラブストーリーと言えよう。あなたがこれから読もうとしているのは、銀河/星々を舞台とした、愛と生まれ変わりの物語だと言っても誇張ではないだろう。1つの時代が黄昏を迎え、次の時代が黎明を迎えるさなかに展開した宇宙的ロマンスである。描かれているのは、全て実在の人物に起きた出来事だ。舞台はパスコ郡である。要点はこうだ:少年が少女と出会うというのは型通り。だが、この少女は他の女の子のようではなかった。少女の持つ能力と興味は普通では無かった ― これは控えめな言い方である ― だが、彼女は少なくとも表面上は、一般的な生活習慣に従って生きることを選択していた。少女は少年と結婚し、子どもを育て家族を成し、普通であろうと努めた。それでも長い年月の間に、いわゆる悪魔憑きや夜空に浮かぶ光る物体、その他、科学では説明できない数多くの体験を経た結果、少女は通常の考え方を全て捨てた。少女は、少年が全く悪いのだと確信した。おそらくは闇の勢力が、本物の夫のコピーと彼を置き換えたのだろうと。少女は少年/少年の邪悪なコピーと離婚し、すっかり絶望して、仕事に慰めを求めたのだが、なんと、その仕事というのは、悪と戦い、エイリアンの一団だと彼女が信じる実体たちとチャネリングで交信することだった。彼女に言わせれば、このエイリアンは、現代の恋愛の暗黒面についての知識を持って居るとのことで、彼らは少女に同情し、彼女のためにお見合いデートをお膳立てして。。。

おっと待った。ちょっと先走り過ぎたようだ。


第1章
エクソシスト、マスタープランを熟考し、ハリケーンの中、戸外に飛び出して母親に反抗
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist1-2.html

写真
[提供:ローラ・ナイト]
少女時代のローラ:カウガールの服装で、母方の祖父の新車のポンティアックに登ってポーズ。1956年撮影。

物語の始まり。エクソシストはまだ子どもだった。

これは、彼女が亡者や、物理体内に居たことの無いような実体に話しかけたりし始める何年も前のことである。この時の彼女はまだ自分が何者なのかも分かっていなかったし、世の中がしっくりこないという事実を受け入れてもいなかった。

結婚して5人目の子どもを産むや、人生の崖から飛び降りる羽目になる、というのも後の事。ビジョンに心を開くのも、名前を持たない実体と対峙して、彼らを永久の闇へと追い返すのも後の事。銀河の向こうの隅からもたらされる言葉を口述筆記するのも、息子を連れて、彼が前世を送った物理体が眠る墓を訪ねて行ったのも、窓ガラスから覗き込む顔や森の中の赤ん坊の夢について思案に暮れたのも、何年も宇宙の謎に関する思索に没頭するも、彼女自身の心以上に謎めいたものはないということしか結局発見出来なかったのも、後の事である。

こうした事があるずっと前から、ローラ・ナイトの探究は始まっていた。それが始まったのは、数十年前、彼女がフロリダ州の西海岸で、成長期を過ごした子供時代のことだった。その頃既に、彼女は好奇心を糧としていたのだ。丁度その頃、ローラの、怪物のような、驚くべき、英雄的な好奇心が芽生えたのである。幼い頃から彼女は、物事は乱数表に基づいて出鱈目に決まるというような考え方に甘んじるのを良しとしなかった。彼女は、宇宙にはきっと設計図=意味という基調を成すグリッドがあると思い、それを知りたがった。彼女は図書館という図書館の本を読み漁った。彼女は素粒子物理学に没頭した。彼女はフロイトとユングを熟読した。彼女は新約聖書を原文で読むためにギリシャ語を勉強した。彼女は、物事の潮流を、元素周期律の言語を、ベートーベンの月光ソナタの魅力的な和音進行を理解したがった。

だが、これらを理解しただけでは十分でなかった。ローラは単なる理解だけでなく、体験することを渇望した。

それである日、彼女は嵐の中へと乗り出して行ったのである。

これは1966年のことで、ハリケーン『アルマ』がメキシコ湾に暴風雨をもたらしている最中だった。この時ローラは14歳、パスコ郡北部のハドソン郊外にある、海岸から800mと離れていない農場に家族と一緒に暮らしていた。アルマのせいで、波が山のようになっているとラジオで聞いていたローラは、波の荒々しさを自分の目で確かめたかったのである。ローラは、浜辺に連れて行ってくれるよう母親にせがんだが、ダメと言われてしまった。


写真
[提供:ローラ・ナイト]
1959-60学年期、タンパのブロワード小学校2年生のローラ


当時を振り返ってローラが言うには、その日の午後遅く、彼女は行動を起こした。彼女の母親は、クロスワードパズルを解きながら、居眠りをしていた ― 当時を振り返ってローラは、「大変な眺めが見られたこの日に、この女性はなんと世俗的な作業を行っていたのだろう」と、今でも驚いてみせる − そこでローラは双眼鏡を掴むと、戸外に抜け出した。彼女が目指したのは、お気に入りのクスノキで、これまでもメキシコ湾を覗くために、よく登った木だった;彼女が今考えていることをするのに理想的な場所だったのである。雨風の中、前のめりになりながら、彼女はこの木に向かってゆっくりと前進した。泥と瓦礫の海の中をよろめきながら進んで行く。彼女の周囲には、はっきりとオゾンの臭い ― 土くさい刺激臭で、殆ど硫黄のような臭い − が漂っていて、アルマがここに居るのが分かる。


写真
[提供:ローラ・ナイト]
タンパの母方の祖父の家の前で。ローラ13歳


ようやく木に辿り着くと、いつもの見晴らしのいい場所まで、彼女は登って行った。3本の枝に分かれているこの場所は、地面から9mほどの高さがあり、頂にほど近い自然の揺り籠となっている。中にグッと入り込んだ彼女は、大渦巻の中心に身を置くことになった。クスノキは荒々しく揺れ;風はヒューヒューと叫び;雨粒は彼女の圧力を感じるくらい目の中にガンガンと入って来て、口にも入り込む。雨でびしょ濡れの双眼鏡越しに西の方向を見ると、メキシコ湾内一面に、黒い波が渦巻いているのが辛うじて見分けられる。

ローラは内心平静を保とうとする。家から出て来た時、彼女は幾らか恐ろしかった。だが、今の彼女は怖れを越えた高みに達していた。ハリケーンが彼女と、可視界の全てを飲み込み、揺り籠の中の彼女を揺さぶるうち、彼女は完全な穏やかさと圧倒的な爽快感が混じり合った、高揚した気分になっていた。彼女は台風の目=カオスの中の意識となっていたのだ。彼女は死のうとも怖くなかった。

その瞬間、ローラの人生における疑問 ― その後の年月も長く抱き続けることになる疑問 ― が、はっきりと浮かんできた。ハリケーンの中に思い切って出て来たのは、勇敢な行動なのだろうか?それとも、馬鹿げた行いだろうか?彼女の中に何か素晴らしいものがある証拠だろうか?それとも、少しおかしな何かの初期的な兆候だろうか?

ローラには、このような疑問について考えている暇は無かった。彼女は激しい嵐の中に飛び出してきたのだ。彼女は目に入った水をぬぐった。彼女は自分の中に恍惚感が押し寄せてくるのを感じた。彼女は暗い空に顔を向けて、自分には歯が立たないパワーと恩寵と栄光に身を任せた。

* * *

他にも疑問はある。

嵐の中に出て行きたいという人々には、何が起こるのだろうか?この風(※ウェイブ)は彼女を、どこに連れて行くのか?風は彼女をバラバラにしてしまうのか?それとも、雲の上の何処かへと運ぶのだろうか?彼女と近づきになった者はどうなのだろう?嵐は、彼(ら)には手を出さないのだろうか?それとも、彼らもまた吹き飛ばされてしまうのか?

ローラは既に答えを見付けている。少なくとも、彼女なりの答えを。彼女の残りの人生の在り様の詳細の中にそれはある。これから私がシェアしようとしている説明の中に、その答えがあるのだ。


写真
[提供:ローラ・ナイト]
生まれたばかりの赤ちゃん:生後1か月になったアリエルを抱くローラ。1989年9月撮影


実は、間を空けながらも、私がローラを取材して5年になる。彼女と出会ったのはクリアウォーターで開かれていた、UFOやエイリアンとの遭遇に興味を持つグループのミーティング会場でだった。私はキャリアの大半において、リポーターとして期待されるような物語を書いてきた。法律家や教師、警察官についてである。このミーティングに出掛けたのは、気分転換のためだった。私は別の類の人=普通でない誰か=違った誰かを取材したかった。そんな彼/彼女がおそらくそこに居るだろうと思ったのだ。

私はそれまでローラの名前も聞いたことがなかった。偶然にも彼女は、ゲストスピーカーとしてそこに居たのである。もし私の参加したのが、別の日のミーティングだったら、彼女とは出会っていなかっただろう。私はこれを偶然と呼ぶが、ローラは違うだろう。

グループの前で、彼女は自分の物語の基本的な内容を説明した。彼女曰く、自分はサイキックであり、チャネラーであり、また、エイリアンにアブダクトされたと言って来る人々に施術するヒプノセラピストである;自分はエクソシストでもあるという彼女の言葉は、殆ど付け足し=ちなみにという感じだった。これだけでも相当なものだが、さらに彼女は、ニューポートリッチーにある彼女たちの家の上空を飛んで行く2機のUFOを子どもたちと一緒に見たと言ったのである。

聴衆の中に座っていた私は、聞いている話を理解しようと努力していた。私が最も衝撃を受けたのは、彼女の話す物語ではなくて、彼女という女性そのものだった。彼女は誠実で賢く、ユーモアがあり、大いに好ましい人柄だった。彼女は、自分の話の全てを理解するよう求めなかった;守りに入る気配を見せるという風でもなく、自分がぶっ飛んでいると認めたのだ。自分でも、どこまで信じていいのか分からないと言う。

「これまでも、そして、これからも、こうした事について、私は懐疑派であり続けるつもりよ」と彼女は聴衆に語った。「それでも、正しい方向に向かっているという気はするわ」

あの日以来、もう何年にもなるが、私は繰り返しローラにインタビューを行い、彼女に付き従ってUFO総会に行き、彼女が銀河系内の他の恒星系に棲む実体とコミュニケートを試みるチャネリングセッションの幾つかに同席した。それでも未だに私は、彼女をどう理解すべきか分からないのだ。ローラが、彼女の身に起こったと主張することの多くは、衝撃的で、奇妙で、不穏どころではなかった。私自身も、それに続く場面を目撃してしまったような場合には、それに関する説明の殆どは、ローラの記憶や言葉、知覚に頼るほか無かった。読み進められればお分かりになるが、そうした事の全てには議論や解釈の余地が大いにある。

ローラが本物のサイキックかどうか、私には分からない。彼女が実際に悪魔と対峙したり、地球外生命体と話したことがあるのか証明しようにも、どこから手を付けていいのか分からないのだ。実際、彼女が自分の人生について語ったことの多くは、彼女の作り話かも知れない。私には本当とは信じられないのだ。ローラとは長い付き合いになるので、彼女の誠実さについては十分信頼しているのだが、彼女が本当に自宅の上空に2機のUFOが飛来したのを見たかどうかは分からない。彼女が見たと思っているのは確かだ。

だが私がここで述べる物語は、亡者の霊や悪魔やUFOについて語ろうとするものではない。当初から私はこれを、1人の女性が、不可知なるものを受け入れ、手の届かない何かを探し求めようとする物語として見てきたのだ。

私たちの多くも、実は自分なりのやり方で似たような探究を行っているものだ。例えば物理学者は、宇宙の起源について理解しようとして労を惜しまない。彼らが到達した、これまでのところベストな説明はこうだ。すなわち、元々は空虚しかなかったのだが、やがてある瞬間に、宇宙の全物質 ― こんにち存在して居る私たちの身体や、地球、太陽、全ての恒星系、全ての銀河 ― が、凄まじい爆発の結果、突如として出現するに至ったのだ。これが彼らの理論である:ある時までは無だったのが、次の瞬間には全てが生じたという。

個人的には突飛かつひどく不満足なものだと思う。かといって、これが正しくないと言い切るつもりもないのだが。

何百万というアメリカ人が、毎週日曜日に教会に通い、2000年前に生まれた1人の男=神なる父と、人間である母親との間に生まれた息子についての物語に思いを巡らせる。この物語によると、この男は長じると、死者を生き返らせたりといった数々の奇跡を行い、ついに33歳の時、拷問され殺されたのだが、やがて墓から起き上がると、天に居る父神の元に戻ったという。その時以来、この神の息子の血を象徴するものを飲み、肉体を象徴するものを食べるのが、この物語の信奉者たちにとって最も神聖な儀式の1つなのである。

私はこの物語を信奉する人々をディスるつもりはない。私自身も、この信仰の内側で育ったし;子ども時代のカトリックの教義問答のクラスでは、聖体拝領は象徴でなど無く、毎週日曜のミサで私たちは本当にキリストの身体を食べるのだと教わっていた。

それにしても、何ともワイルドな物語である。

ローラが受け入れた「起こるかも知れない事態」は、これと比べてどれくらいワイルドだろう?あなたが魂の実在を信じるのなら、霊たちが私たちの周りを徘徊しているという考えの方がずっと受け入れ難いと思うだろうか?地球上での生命の進化について学んだ内容を踏まえたとき、生命は他の惑星で生まれて、他の恒星系で進化し、そのような生命体が実は近所に紛れ込んでいるという風に考えるのはどれほどの飛躍だろうか?


写真
ノーマルとパラノーマルが混じり合った生活:最も苦手な雑用である家族7人分の洗濯に取り組むローラ。1995年11月撮影。


全然違う/大いに飛躍しているとは誰にも言えまい。

私たちは皆、不可知なるものに惹き付けられる。謎は食べ物や水のように、私たちを生きながらえさせてきた糧なのだ。謎あればこそ、私たちはベッドから起き出し、何かに取り組む。謎こそが私たちの人生に深みと風合いと意味を与えるのである。

だが、ローラが行っている探究は明らかに全く違うレベルだ。エイリアンの存在を受け入れたがっている人は多い;だが、ローラのように、リビングでの即席の交信術会で彼らとチャットしようとする人は殆ど居ないだろう。

彼女と一緒に行動する機会を持ち始めるや私は、彼女が答えを求めて行う探究が彼女とその家族にとってどんな意味合いを持つのだろうと、考え始めていた。彼女に起こる事、彼女が体験した事、体験したと思っている事によって、彼女たちはどこに導かれるのだろうか?

そうしたければ、ローラが見たと信じているものを疑えばいい。彼女の出した結論、そこに至る論理、彼女の精神状態を疑えばいい。しかし、ローラ自身もまた実在の人間であることを知って欲しい。彼女は運転免許証も持っているし、税金も納めている。彼女には家族が居る。そして私たちの多くと同様、彼女は単に、彼女自身や彼女の生活、世界における彼女の居場所が持つ意味を理解しようとしているだけなのである。

それが彼女の物語なのだ。

以下は、このエクソシストが木の上から降りて来てから起きた事の物語である。


第2章
ローラ、バラに水をやり、闇の勢力につき熟考し、神と対話
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist1-2.html

夜が明ける直前に、1羽のモッキングバードが家の裏の森から、早くも鳴き声を上げた。彼女が手にしているカップからは、クリームをたっぷり入れた濃いコーヒーが香る。ありがたいことに、隣の基地外ヤギはまだ起きる気配が無い。

ローラは、もう妊娠7か月目だと思いながら、庭をゆっくりと歩いて行く。静かな早朝の空気を吸い込むと、日が昇るのを待ちつつ、彼女はバラに話しかける。

「ハロー」。ありったけ優しい、なだめるような声で、彼女はバラにこう言うのだ。「私が恋しかった?」

ローラは庭で過ごす、このひと時を大事にしている。彼女の夫のルイス・マーチンは、製材工場での仕事の準備に忙しい。彼女の4人の子どもたちは、まだ家の中で眠っている;彼女の5人目の子どもは、彼女の子宮の中で静かに泳いでいるところだ。隣家の山羊というのは、巨大な角を持ち、血走った眼をした4本足のテロリストで、自分の進路に入って来た相手を突くのが大好き。すっかり日が昇ってから、最初の奇襲攻撃を行うのが常だった。

こうした事情が相俟ち、夜明け時こそ、ローラが自分のための束の間の時間を過ごす絶好のチャンスなのだ。それで彼女は毎朝5:30には起床してこっそりと外に出、花の世話をしながらコーヒーを飲んで、思索に耽るのだった。

1989年の夏のことだった。ローラは家族と共にハドソン郊外の農村地帯に住んで居た。少女だった彼女が木に登った家から、そう遠くない場所だ。彼女は今37歳。眼光鋭い緑色の瞳。腰のあたりまで伸ばした、豊かな茶色の髪。たえずより奥深い何か見つけようと探る、正直な顔。彼女は自分が何を探し求めているのか、はっきりとは分からなかった。確かなのは、理解しなくてはという、やむにやまれぬ必要性を内心感じていることだけ。少女時代に彼女を突き動かしたのと同じ好奇心だ。ただ、その頃と違うのは、名状しがたい空虚さ=彼女の生活の中の何かが正しくないという漠然とした感覚が、今は伴っていることだった。

結婚後数年するうち、ルイスは彼女が人生を共に過ごすべき相手ではなく、他の誰かがどこかで彼女を待っているのではないかという思いが、時折ローラを苦しめるようになった。そんな気持ちは馬鹿げた、女学生が抱くようなロマンチックな空想だと、彼女は自分に言い聞かせたが、この思いはしつこく去来し、彼女の脳裏にこびりついて離れなかった。

ローラはお腹の中の子どもが育つ様子にワクワクしていた。この興奮に浸っていると、結局万事大丈夫なのだろうと思えてくるのだった。単に赤ん坊を身ごもっているのではない、と彼女は自分に言い聞かせた。この妊娠は、彼女自身が新たな生活を迎えるチャンスなのだ。

ローラの人生には、既に随分と多くの事が起きていた。彼女はタンパと、例の木がある祖父の農場で育った。彼女の父親は、家族で経営するドラッグストアで働いていたが、彼女が生まれる前に家族を捨てて出て行った。そのため、彼女の母親は帳簿係として働き、ローラと彼女の兄のためにベストを尽くした。離婚後、一家は方々に引っ越したが、母の実家や、親戚の誰かの元に身を寄せることもしばしばで;その後数年の間に、彼女の母親は4度、結婚と離婚を繰り返した。

ローラは自分の居場所を見つけるのに懸命だった。彼女は早熟で ― 彼女の母親によると、ローラは3歳の時には読み書きができたという ― 学校の成績が良かった。それどころか、ローラは学校など楽勝だと思っていた。学外でありったけ読書していたので、わざわざ宿題などしなくても、成績優秀だったのである。しかし、成長するに連れて、彼女は苦労を感じるようになった。他の同年代の子どもたちは、フットボールの試合や壮行会に夢中だったが;放課後の彼女は、歴史書を読み漁ることに刺激を感じていた。皆は土曜の夜のデートの相手を探したがったが;ローラは生化学の基礎を理解したがった。

ローラの母、アリス・ナイトはそんな彼女が心配だった。そこで彼女はローラを精神科医のもとに連れて行った。医師は何回かローラを診察し、幾つかテストを行うと、ローラと母親、そして学校のカウンセラーに診断結果を伝えた。

「彼女が問題なのではありません」。ローラと母親は、医師の言葉を覚えている。「実際に問題なのは、彼女が、この部屋に居る私たちの誰よりも、そして教師全員よりも、賢いことです」

だが、問題はそれだけではなかった。少女の頃から、ローラは自分が根本的に皆と異なると感じていた。彼女には、普通の人には分かる筈がない事が分かるという自覚があった。彼女は人々の心を見通し、彼らの本質を感じ、彼らの生活の中でエネルギーが使われるパターンを読み取ることができたのだ。彼女が見る奇妙な夢は正夢となるらしく;近所を歩いていると、通りかかった家々の中で起こっていることの一端を、彼女は見、聞き、嗅いでいるように感じた。

後に娘からこのことを聞かされた彼女の母親は、娘には天賦の才があると認めたものだった。

「彼女には、いわゆる第六感があったわ」とナイト夫人は振り返る。「彼女には他人のことが分かるのよ」

ローラと母親にとって、これは圧倒的過ぎる能力だった。他にも、遥かに恐ろしいエピソードがある。3歳のある日、ローラは何かが起こりそうだという感じがして昼寝から目を覚ました。戸外の砂利道を近づいて来る足音を聞いた彼女は、押し入れに駆け込むか、ベッドの下に潜り込むべきではないかしら、と思った。すると、彼女が身体を動かすより早く、奇妙な顔が寝室の窓に現れた。それは大きなトカゲのような顔だった。心の中で、彼女は顔が話しかけてくる声を聞いた。

「隠れようとしても無駄だ」。顔は彼女に言った。「然るべき時が来たら、我々はお前を見つけ出すだろう。お前がどこに行き、何をしていようとな」

ローラの子ども時代には、似たような出来事が続いて起こった。ある時は、彼女の寝室の窓が空いているのが見えたのだが、それはまるで、何かが彼女を取り殺そうとしているかのようだった。またある時は、ハッとして目覚めるや、1つのビジョンが見えたのだが、その中には恐ろしいクリーチャーども ― 窓に見えた顔とそっくりの、トカゲタイプのクリーチャー ― が、出て来たのである。この連中は彼女を森の中に連れて行ったのだが、そこで彼女が見せられたのは、両手足を切断された赤ん坊の死体が眠る浅い墓穴だった。クリーチャーどもは彼女に対して、お前をこんな風に始末するのはた易いことだと警告した。

ローラが母親に対して、これらの出来事を話すと、母はバカじゃないの、と言った。

「単なるあなたの想像よ」とナイト夫人。

ローラ自身は、これが本当にあったのだと信じたかった。だが、大きくなるに連れ彼女は、これらの瞬間に見えたものは、単なる白日夢、自分の空想の産物だったのだと、自らに言い聞かせるようになった。ローラはこれらの出来事について、他の誰かに、特に大人に対しては話すのを止めることを学んだ。それでも、こうしたエピソードは終わらなかった。彼女がヒルズバラ・コミュニティ大学に入り、ルイスと出会い、彼と結婚して、家庭を築くようになっても、それは続いた。

普通であろうとして、ローラはベストを尽くした。最初の2人は娘、次は息子、その次は娘と、彼女は子供を産んでいったし、その合間には家計の足しになるよう、様々な仕事に就いた。彼女は教会に通っていたし ― ローラはメソジスト派で育てられたが、今は夫のルイスと共に、ペンテコスト派の教会に通っている ―、庭を手入れしたり、食料雑貨を買ったり、家計の苦しさを嘆いたりと、他の主婦と同じようにして暮らしていた。

だが、いくら懸命に家事に打ち込んでみても、ローラは世間的な物の見方に馴染めなかった。依然として彼女は、子どもの頃と同様、世界を違った風に見ていたのだ;未だに神話学や天文学のあらゆるテーマを読み漁って、答えを探していた;未だにミステリアスで奇怪な体験に悩まされていた。

夜中にベッドの中で目覚め、部屋の中に自分とルイスの他にも何かが居ると感じることも度々だった。こうした出来事の後、彼女はしばしば病気になった。耳の感染症などの病気が悪化したのだ。時折、家の一部の温度が奇妙に寒くなることもあった。彼女の周りではガラス製品が壊れた。彼女が動揺したり驚いたりすると、手も触れないのに壊れるのだ。コップやランプ、ベッドの上の窓ガラス、友人の新車のBMWの窓ガラスまでが割れた。

そんなある夜、こんなことがあった。夫の隣で目覚めると、家が白い光を浴びているのだ。彼女はまだ夢うつつの状態で、これは何でもない、単にピックアップトラックの一団が、窓越しにヘッドライトを照射しているんだろう、と自分に言い聞かせた。彼女は再び眠りについた。だが、翌朝目覚めて見ると、彼女は上下逆さまになっていた。頭が脚の所に、脚が枕の所にあったのだ。まるで、外を歩いてきたかのように、彼女の寝巻の裾はびしょぬれで、雑草が付いていた。

ついにローラは、自分が決して普通でなどあり得ないという事実を受け入れることにした。彼女が他の皆と同じようなら、人生はずっと簡単だっただろう。だが、それは叶わぬ望みなのだと、今や彼女は悟ったのである。この時、彼女は新たな方向に心を開いた。憑依霊解放や悪魔祓い(エクソシズム)を行い始めたのである。。。

「あら、嫌らしい虫がついたわねえ」。庭に群れ咲くバラの葉を見詰めながら、ローラは言った。「すぐに取ってあげましょうね」

彼女は、夜明けの戸外が好きだった。朝日が木々の間に広がって行き、未だ草の上には露がついている、このひと時、彼女は花の世話に没頭できた。近くをハチがブーンと飛ぶ音を聞き、ハチドリが花々の上の空中に浮かぶのを見ていると、彼女はこの世界にはバランスが存在していることを思い出す。彼女はユリの花 ― スズランやデイリリー(◆ユリ科の多年草で、主に鑑賞用だが、食用としても使われる)、
カップと受け皿のようなその花の形 ― や、目の覚める黄色の壁のように咲き乱れるマリゴールドに憧れた。でも、バラが彼女のお気に入りだった。バラはとてもデリケートで、彼女に時間と手間をかけるよう求めたので、子どものように思えたのだ。彼女は寝室のすぐ外、家の東側でバラを育てていた。夜にはバラの香りが彼女を眠りに誘った。

ローラは、森に囲まれた、この家での生活を愛していた。だが、つい先頃彼女は、驚くべき予言を受信した。彼女はウイジャボードを持っていて、それをいじりながら、祖父母が亡くなった今、近傍にある彼らの農場をどうしたらいいかと尋ねたのである。彼女が指を、プラスチックの小片に滑るようフェルトが貼ってあるプランシェットの上に置いて質問をすると、見る間にプランシェットが前後に滑って、ボード上に配列されたアルファベットの文字列をなぞって動くのだ。一文字ずつ、彼女には答えがもたらされる。さて、お告げによると、彼女は祖父母の地所を売りに出せとのことだ;生活がまた変化するのにも備えよという。彼女の一家は引っ越すだろう、とボードは告げる。彼女たちはモンタナに行くだろう。

ローラには分からなかった。彼女は人生の殆どをフロリダで過ごして来たのだ。だが、ボードは執拗に勧める。

“M-O-N-T-A-N-A”とボードは綴った。

ローラは必ずしもこの考えに反対ではなかった。おそらくモンタナはいい所だろう。だが彼女は、とりわけ5番目の子どもが生まれようとしている人生のこの時期にこうも思い切った引っ越しをするなどということは考えられなかった。彼女は庭を歩き回り、お腹の赤ん坊を感じながら、自分の身に起こった全ての事を振り返りつつ、どういう意味があるのか理解しようとした。彼女は自分の行く手に待ち受ける事々に思いを致した。多くの可能性、蓋然性、僅かな可能性が、現実になろうとして戦っていた。

彼女は繰り返し、まだ何かがある、何かをしなくては、という気持ちに襲われた。子ども時代から彼女は、何ごとであれ彼女に起こることには隠れた意味があり、彼女には見えないようになっている計画が存在しているのだろうと感じていた。今や彼女はそう確信した。彼女が学び体験した全ての事は、たとえ恐ろしいものであろうと、成就されるのを待っている、ある役割の土台を形作るものだったのだという確信が高まるのを彼女は内心感じていた。

でも、自分の役割とは何だろう?それが分からない苦しみは耐え難いものだった。

彼女は、神からうまいことそれを聞き出そうとした。毎朝バラに囲まれながら、ローラはどうか計画を説明してくれるようにと神に頼んだ。期待は裏切らないから、と約束した。もし、答えを教えてくれたら、彼女は最大限に努力するだろう。彼女は誓った。だが、彼女はどうしてこのような人生を歩んで来なければならなかったのかも知りたかった。どうしてあれほどまでに学ぶよう駆り立てられたのか?一体どうして、彼女の心中ではああした思いの全てが駆け巡らねばならなかったのか?どうしてこうも虚しく感じるのだろうか?結婚のせいだろうか?それとも、彼女はどこか具合が悪いのだろうか?

教えて欲しい、と彼女は言った。神様、もしあなたが存在し、私がここに居ることに理由があるのなら、それは何か教えて頂戴。道筋を示して。次はどちらに向かうべきなのか、どうか教えて。

* * *

ローラの家には始終モーツァルトの音楽が流れている。テープデッキで再生された彼の楽曲は、スピーカーから流れ出て、高温域に達したかと思えば、急降下し、200年前に亡くなった、この男の歓喜の旋律で聞く者をお構いなくからかう。

ローラは最近、しょっちゅうウォルフガング・モーツァルトを聞いている。彼女はお気に入りの作品 ― アイネ・クライネ・ナハトムジークや魔笛からの抜粋 ― を集めたテープを作り、午後、家事をしている間じゅう、それをステレオでかけている。テープに合せてハミングしたり歌ったりしながら、ベッドメーキングをしたり、皿を洗ったり、赤ちゃんに授乳したりするのだ。

赤ちゃんは女の子で、アリエルと名付けられた。

神と庭で会話したほんの数か月後だったが、ローラはこの上ない喜びに浸っていた。僅かな可能性はもはや可能性ではなかった。今、それは生を得たのだ。

最初に起こったのは、ローラが神について、ある理解に達したことだった。彼女は、彼から答えを引き出そうとしても意味が無いという判断を下した。神が彼女のために何かを計画しているとしたら、計画上然るべき時に、彼は彼女にそれを示すことだろう。

その一方で、ローラは十分すぎるくらい忙しかった。赤ん坊の世話だ。アリエルがこの世界にドラマチックな登場を果たしていた。ある8月の夕方早く、ローラの陣痛が始まり、深夜過ぎまで彼女が奮闘すると、医者は帝王切開を行った。だが、痛みは十分に報われた。娘は美しく、ローラはついに彼女を抱っこ出来たのだ。

他にもやるべき仕事があった。5人目の子どもが生まれると、ローラとルイスは、もっと大きな家が必要だと判断した。ローラはニューポートリッチーの中心から遠くない所に、1つの物件を見付けた。それは内装が壊れていた ― 「修理できる方にお勧め」と不動産屋の広告には書かれていた ―が、大きな庭と5つの寝室があった。

ローラはワクワクした。彼女はこれこそが新しい家だと直観した。

ここに住まなくては。彼女は自分に言い聞かせた。何が彼女に起きるにしても、ここから始まることだろう。彼女はそう感じた。

1つだけ、ローラが最初にこの家を見つけた時、彼女の印象に残らなかったことがあった。彼女とルイスがそれを購入するまで、考えてもみなかったことが。

この家はモンタナ通りにあったのだ。

※家の写真


第3章
ナチス兵が通りに 巨大なブーメランが空に
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist3.html


「忌々しいライト(信号)ね。早く変わって頂戴」とソファーの上の女性は言った。

この女性の目は閉じられ、伸ばした身体には毛布が掛けられていた。毛布の上で曲げられた両腕が微かに動いている。彼女は、自分が未だ車のハンドルを握っていると思っているのだ。

1mほど離れたイスに座っているローラには、何のことか分からなかった。

「何ですって?」

「信号が青に変わるのを待ってるのよ」と女性は言う。突然、彼女の声音が変わった。「おお、パトリック!あなた、何したの?」

何か問題が起こっていた。ローラは女性と一緒に、ある日の出来事を順々に振り返っていた。ローラがこの女性に、目を閉じてゆっくり呼吸するように言うと、女性は催眠状態になって、ターンパイクでの夜に戻って行った。彼女は、ローラに出来事を一通り話していた。未だ催眠状態の彼女は、映画のシーンを振り返るようにして、今一度話を繰り返した。

女性は、ティーンエイジャーの息子パトリックと、ピッツバーグ(◆米国ペンシルベニア州)
での葬式から戻る車中に居た。雪が降っていた。霧が立ち込め、道路は凍結していた。2人は路面が、これよりましかも知れないと思い、別の高速道路に迂回することにした。やがて、広告板の前に信号が見えてきた。信号は青で、青色の楕円形のライトが広告板の前にぶら下がっているのだが、これでは意味がない。女性は自分の空想の産物だろうと思って目をこすったが、甲斐は無く、信号は無くならなかった。それどころか、益々大きくなって来たので、彼女はパトリックにも見えるか訊いたのだが、彼には見えないらしく、電気がどうだとか言うばかりだった。すると、彼女は何かにクルマのコントロールを奪われるのを感じた。もはや彼女は運転しておらず、他の何かにコントロールされるまま、益々大きくなるライトへと向かって行く。

そこで場面がスキップする。

突如として場面が変わり、彼女と息子はどこかの道路を走っている。彼女たちが今走っているのはウェーンズバロという小さな町で、それは高速から外れた、メリーランド州境のすぐ北にある。何かが起こったのだ。走行距離計は80キロメートルを指しているのだが、どうやってそんなに走ったのか、2人には分からなかった。気が付くと2人は、ウェーンズバロにある信号機の前に居たのだ。女性がハンドルを握ったまま、信号が変わるのを待っていると、助手席に居る彼女の息子は、葬式で誰かにもらったクッキーの缶を開けようとしている。ところが彼が難儀しているので、彼女はダッシュボードの小物入れに折り畳みナイフがある筈だと教えた。ナイフを取り出した彼は、クッキー缶を開けようとして、手を切ってしまう。今、彼は血を流している。信号待ちをする2人。パトリックの手から血が流れている。

「えっ、パトリック!」女性が言う。「何やってるの?後部座席にタオルがあるでしょ。取って」

イスに座ったまま、ローラはこの女性を注意深く眺めている。ローラの友人の1人であるフレディー・アイアランドもまた、彼女を注視しつつ、部屋の隅から、この催眠セッションの様子をビデオに撮っていた。


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気紛れな霊を探して:ソファーに横たわるフレディー・アイアランド。写真手前のスーザン・ビターレから憑依霊解放を行うローラの霊媒となっている。1995年撮影。ヴィオレッタ・ゲインが傍らからローラに助力している。この憑依霊解放はニューポートリッチーにあるローラの母親の家で行われた。「子どもの前ではできないのよ」とローラは言った。


ここの所で、女性は動揺した。息子が手を切ったせいだけではない。彼女は何かに動転している。彼女の息使いが速くなった。彼女は腕を上げて胸の前で組んだ。何かから身を守ろうとしているようだ。

ローラは女性に、万事順調だと言った。彼女も息子も安全であることを思い出させようとしたのだ。だが、彼女たちは最初の、ターンパイクの所まで戻らねばならなかった。やり直しだ。

「もういっぺんやりましょう」。ローラは言った。「今度はもう少しゆっくりね」

1993年4月15日火曜日の晩のことだった。ローラとフレディーと被験者は、ニューポートリッチーのモンタナ通りにある、ローラの家の居間でワークを行っていた。外は嵐だ。家の中は静かで、聞こえるのは、慰めるようだがしつこく質問を繰り返すローラの声と、混乱して神経が高ぶった、被験者である女性の声だけである。時折、一家が飼っているオカメインコがさえずる声と;フレディーがローラに何か囁く声が加わった。

もっと質問するんだ。フレディーはローラに、この女性にもっと多くの質問をするようにと言った。フレディーはかなり興奮していた。彼は興奮すると、少々強引になるところがあった。ローラは気にしなかった。彼女はフレディーを尊敬していたし;2人の間には、強引さは大目にみるという不文律があった。

2人はただの友達ではなかった;彼女たちは宇宙の謎の解決に取り組む、宇宙の探検者だった。臆病にしていては何の成果も得られない。

この夜は、彼女たちしか家に居なかった。ローラの子どもたちは ― もう3歳になっていたアリエルも含めて ― ローラの母親の家に行って居た。ルイスは仕事で遅くなっていた。

自分の結婚生活についてどう考えるべきか、ローラには未だ分からなかった。ルイスは善人で、礼儀正しく仕事熱心だったし、子どもたちにも精一杯誠実に振る舞っていた。だが、ローラに対しては、益々彼が遠ざかって行くように思われた。もはや2人とも殆ど言葉を交わさなかった。この頃には、ルイスはローラをどうしていいか、分からなくなっていたようだ。傍に居ながらも、彼は彼女にとって、ずっと離れた存在だった。あるいは、彼女の方がずっと離れてしまっていたのかも知れない。

ある夜、ローラは気掛かりな夢を見た。彼女は別の生に居る。第2次大戦中のヨーロッパの何処かだった。この夢の中で、彼女は他の男と結婚していて、彼女の心はこの男のものだったが、それはルイスに対する風とは違っていた。彼女たちは幸せであり、幸せは努力しなくても、自然に得られた。だが、それも長くは続かなかった。夢の中で、彼女は夫が殺されるのを見ていた。彼女は家のバルコニーに立ちつくしている。下の通りにはナチスの兵士たちが居て、彼女が見ている前で、兵たちは夫を捕まえ、射殺したのだ。

この夢はローラの頭から離れなかった。暴力的な終わり方のせいだけでなく、夢の中の夫に彼女が寄せる思いの深さのせいだった。夢を見たずっと後までも、ローラは彼のことを考えた。この男性は彼女の潜在意識が空想で作り出したものではなく、本物だと彼女は感じた。彼女は本当に彼を知っており、彼もまた彼女を知っていて、2人は単に結婚していただけではなく、お互い、相手のために生まれてきていたのだと、彼女には思われた。

この夢は夢ではあり得ない、過去生のビジョンだと彼女は判断した。彼女が他の生のものだと確信しているビジョンは他にもあった ― 古代エジプトに居た生やフランス革命の最中のパリに居た生 ― だが、ナチス・ドイツのものが最も強力だった。これは彼女の脳裏から離れなかった。

ローラは、このような考えは忘れようと懸命に努力した。そんな風に過去生を夢見て何の役に立つというのだ?彼女はルイスと結婚して、子どもたちを設けているのであり、彼らとの関係を変えようにも、もう手遅れなのだ。子どもたちは大きくなっていた ― 一番上の娘は、もう14歳だった ― のであり、ローラは子どもたちに対して自宅で教育を行うことに決めていた。学校時代の自らの経験からして、ローラは公教育をあまり評価していなかった。彼女の考えでは、学校は厳しすぎるどころではなく、そこで子どもたちが実際に教わるのは、黙っていること、質問しないこと、言われた通りにすることであり、そうやって言われた通りにし、言われたことが本当だと信じるような、独りよがりの消費者になることなのだった。

ローラは沢山の本を持っていた;家の壁という壁は本棚で覆われていた。彼女は黒板とチョークも持っていた。そして最も重要なことだが、彼女自身好奇心旺盛だったし、子どもたちの好奇心も理解していた。彼女は物理学を教え、彼女たちを文学と神話の世界に誘い、蔵書にある殆ど全てのテーマについて教えた。彼女の授業は伝統的なものとは違っていた。彼女にとって、人生が真の学校だったし、とりわけ彼女たち一家の実生活こそが真の教育だった。そして彼女は教育と日々の生活とをすっかりブレンドするように努めた。子どもたちが入浴している時には、彼女たちの肩の筋肉や足の腱を指し示し、解剖学を教えた。一緒にケーキを焼いている時には、ニンジン・ケーキの原料がどんな風に結合しているか説明して、化学のレクチャーを行った。

「彼女たちの教室は」、彼女は言う。「この世界なのよ」


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ママのベッドで一安心:熱を出した娘のアリエルを撫でさするローラ。1995年撮影。


ローラは子どもたちの才能を開花させ、彼女たちの想像力を解き放ちたかった。彼女はほぼ四六時中、娘たちと一緒だった。数年間、様々な仕事をした後、彼女は自宅の外ではもう働かなくなった。彼女はデイケアやベビーシッターがあまり好きではなかった。

「私、充実したひと時さえあれば十分だという風には思わないの」と彼女は言った。「ずーっと、というのがいいのよ」

子どもたちだけが教育を受けている訳ではなかった。ローラ自身も幾何級数的ペースで知識を吸収していた。この数年彼女は、彼女自身が永年解明に取り組んできた疑問を、徹底的に追求しようと心に決めていた。

彼女は占星術を学び、自分自身や他人の星図を書いていた。幽体離脱や霊的オーラ、ESPに関する文献を読み、クリスタルや瞑想や体外離脱体験について徹底的に調べていた。彼女はまた、ウイジャボードを使った実験も続けていた。こうした実験を、彼女はしばしばフレディーと一緒に行った。

34歳になるフレディーは、やせて背が高く、静かで低く重々しい声で話す男性である。彼の本職は、テレビショッピング番組を制作している地元企業の業務マネージャーだった。しかしローラは、数年前に出会った時から、フレディーには生来、霊媒の素質があると信じていた。2人は最初のうち、ウイジャボードを使ってロトくじの当たりを探り、一山当てようとした。今の彼らは、亡者や霊と話そうとしていた。そこから「他のリアリティー」に呼びかけようというのだ。

ローラは常に、見かけの事象の裏に潜む、より深いパターンを探し求めた。彼女は気象について学び、新聞をスキャンし、洪水や地震を記録した。家の中にゴキブリが見付かった時でさえ、それらの事象を全て何とか結び付けようとした。

子どもたちもしばしばあきれ顔だった。


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まずは銃後に平和を:ある晩、チャネリング・セッションが始まる前。台所で喧嘩して騒いでいたジェイソンとエイミーを引き離すローラ


「ママ」、彼女たちは言った。「落ち着いて」

ローラは今では、催眠セッションにすっかり没頭していて、時折セッションはエクソシズム(悪魔祓い)へとエスカレートした。ローラは永年来、催眠術に関心を抱いていて、このテーマの文献を徹底的に読み漁り、授業も受けていた。彼女は催眠術を利用して、彼女が「憑依霊解放」と呼ぶものを行うようになった。このセッションでローラは被験者を催眠状態にし、生きた家主に憑依している亡者の霊と思われるものを探すのである。彼女が後に説明してくれたところによると、こんなことがあった。被験者に質問して探って行くうち、ある男の霊を見つけたのだが、彼は家の火事で死んだという;別のセッションでは、若い被験者の憑依霊解放を行ったのだが、見付かったのは少年の霊で、この子は食料品店の駐車場で車に轢かれて死んだ後、恋しくて友人の子どもに憑依していたのだ。

ローラのテクニックは単純明快だった。彼女は被験者に催眠術をかけて、憑依霊を探り当てる。そして、彼らに語りかけ、彼らの悩みが何か分かると、彼らに対して、大丈夫だから被験者を解放して、光の中へと進みなさい、と言うのである。要するに彼女は、亡者相手のカウンセラーを自認していたのだ。

エクソシズムの場合は違う。この場合の実体 ― 「闇の実体」とローラは呼んだ ― は、自分の物理体を持つことがない。いわゆる悪魔である。

彼女がエクソシズムを行ったのはほんの数回だけだった。何度かは、気掛かりな振る舞いをする子どもたちに対するもので;何度かは、自堕落な習慣に危機感を募らせ、一体何が原因かと不思議に思っている大人たちに対するものだった。

エクソシズムを行うため、ローラは出来る限り、万全の準備を行ってきた。霊憑依に関して、見つかる限りの文献を読み;カトリック教会が行ってきた、伝統的なエクソシズムの文献を研究した。彼女が行う儀式はずっと略式で、被験者に催眠術をかけ、実体に出会うと追い払うというものだった。


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また土曜の夜よ:チャネリングの定期セッションに備えて、スピリットボードの前に座り、アリエルにおやすみを言うローラ。1995年撮影。


こうした実体に話しかける際、ローラは時折、一風呂浴びたい気分になる。連中はスライムのように気色が悪く、人を騙すのである。そして、彼女を脅かすのだった。

「あなた、なんて名前なの?」彼女は実体の1つに問いかけた。

「名前などあったことが無い」それは答えた。

「誰に遣わされたの?」

「わが師だ」

対峙した相手が本当に悪魔なのかどうかは、ローラにも分からなかった。彼女に分かったのは、何か ― ある種のネガティブなエネルギー ― が、犠牲者たちの中に入り込んでおり、彼女がエクソシズムと呼ぶ、こうしたセッションを行った後には、そんなエネルギーが立ち去っているということだけだった。

こうしたセッションが滅多に無いことを、彼女は有り難く思った。憑依霊解放の方がずっと多かった。多い時には、週に1回は施術して欲しいとお呼びがかかった。彼女は平気だった;エクソシズムに比べれば、憑依霊解放は全くストレスがなく、必要な彼女の感情エネルギーも遥かに少なかった。彼女の憑依霊解放アプローチは、普通のカウンセラーそっくりで、途中までは彼女が行っていた他のセラピー・セッションと同じだった。

彼女はこれを「亡者との対話」と呼んだ。

数多くの被験者を通じて、様々な悪魔/亡者たちと出会ってきたローラだったが、今夜、彼女の目の前でソファーに横たわっている女性のような被験者にお目にかかったことは無かった。

「忌々しい信号ね。早く変わって頂戴」。女性は再び言った。

ローラが後に語ったところによると、この女性に出会ったのは、この夜の2週間前のことだったという。2人が言葉を交わすうち、ローラが自分はヒプノセラピーをやっているのだと、話のついでに告げたところ、この女性は数年前、ペンシルバニアの高速道路で奇妙な体験をしたと言い出したのだ。何かが起こったのだが、女性にはそれが何か分からなかった。だが、彼女によると、この件について考えるたびに、彼女はすっかり動揺してしまう ― 自分でも全く理解できない程に − というのだ。彼女は理由が知りたかった。その晩に何が起こったのか理解したかったのだ。催眠術をかけて、彼女が何を見たのか調べてみようとローラが提案したところ、女性は同意したのだった。

そして今、この女性は目を閉じたまま、ローラの家の居間に横になって、夜通し、ドライブを再現しているのである。ローラに対して何度リプレイしてみせても、結果は同じだった。彼女が息子と一緒にターンパイクをドライブしていて、別の道に迂回しようとすると、彼女には信号機の青いライトが見えてくる。そこで場面がスキップする。毎回、同じところでスキップするのだ。そして突然80キロ先のウェーンズバロの信号の場面になり、彼女の息子がナイフでクッキー缶を開けようとして、手を切るのである。

ローラはこの80km区間で何が起こったのか調べることにした。隅でビデオを撮っていたフレディーは、もう分かったと思った。そのせいで、彼はとても興奮していた。

「これはエイリアン・アブダクションだよ」。彼はローラに言った。

フレディーはUFOの大ファンだった。近年、他の惑星から旅して来たクリーチャーと遭遇したという気掛かりな体験談をカミングアウトするアメリカ人が ― 確かな数字は不明だが ― 増えていることなど、ローラもフレディーも、百も承知だった。こうした人たちの多くが信じ、あるいは信じていると主張する体験談とはこうだ。すなわち、エイリアンが車中や寝室から彼らをアブダクトし、何らかの孤立無援の状態にしておいてから、様々なタイプの宇宙船に連れ込み、医学や科学の実験台にする。その後彼らは日常生活に戻されるのだが、アブダクションの記憶は全てブロックされている。この人達には、何が起こったのか思い出そうとしても、思い出せない;エイリアンの記憶は後になってよみがえる。しばしば催眠術によって。というのが典型的なパターンである。

こうした人たちの物語には注目する必要があるとフレディーは信じている。アブダクティーと称する人たちにインタビューを行ってきたハーバードの精神医学者であるジョン・マック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=79079566
を始め、この現象に通じている他の人々もまた同意見だった。

ローラはそこまで確信している訳ではなかった。フレディーにせき立てられて、アブダクションの報告を読んではいたが、納得していなかったのである。ローラは多くの事を抵抗なく信じていた;彼女の全人生は、他の人々が馬鹿馬鹿しいと思うような、様々な宇宙の実相についての考察に捧げられてきたのだ。それでも、リトル・グレイが、何百、何千という人々をアブダクトして、空に浮かぶしゃれた母船か何かの中でお医者さんごっこをしているという話を信じるには抵抗があった。アブダクションなるものが、そんなに数多く起きているのなら、どうして証拠が全く無いのだろうか?誰もこうしたエイリアンや宇宙船の決定的スナップ写真1枚撮れないのはどうした訳だろうか?ビデオがあるだろうか?こうしたエイリアンはなぜ、ジェラルド・リベラ・ショーに登場しないのか?

他の多くの人々と同様、ローラもこの人たちは何かひどいトラウマを経験していて ― おそらくは、子ども時代に性的虐待に遭い ―、その埋もれた記憶が、潜在意識の中で今、別の類の遭遇体験に変形して浮びあがってきたという方が遥かに有りそうだと思っていた。おそらくこうした人たちにとっては、寝室に入って来て彼女たちを犯したのが、義父や母親のボーイフレンドだったという事実と向き合うよりも、それが実は掟知らずのエイリアンだったと想像する方が楽なのだろう。

ローラはこうしたアブダクション報告が急増した理由を看破したと思っていた。すなわちこれは、集団ヒステリーなのだ。西暦2000年が近付いてきて、おそらくこの人達は少々いかれてしまったのだろう。彼女はこれを「ミレニアム病」と名付けた。

今晩ローラが施術している、この女性には一体何が起こったのか解明すべく、ローラが彼女の痛みを取り除こうとしていることの理由も、これで完全に説明がつく筈だ。催眠をかける前、ローラはこの女性に子ども時代のことを尋ねたが、それは、虐待や家族問題など、感情/精神の不安定さを説明するような兆候が何か無いか探ろうとしてのことだった。だが、女性の話には、失われた時間について説明するような点は見当たらなかった。

ローラはくじけなかった。ローラはこの女性にもっと深い催眠をかけることに決め、もっとゆっくり呼吸するよう指示し、もう一度、あの夜のことをリプレイさせた。今回、女性は、駐車場のことを思い出した。青いライトが光るのを見た後、彼女はクルマが高速道路を離れるのを感じ、今、彼女と息子は食堂の前の駐車場に停車していた。彼女が最初に信号を見た広告板から、そう遠くない道路脇だった。

「次に何が起きたの?」とローラは言った。

「忌々しい信号ね。早く変わって頂戴」とソファーの上の女性は言う。

スキップする場面に戻ってしまった。何が起こったにしても、それが駐車場に居た瞬間と、彼女の息子が手を切った瞬間との間のどこかなのは確かだ。

そこでローラはもう1度試みることにし、女性に出来る限り深い催眠をかけた。お気に入りの部屋の中に座っているところを想像してみて、とローラは被験者に優しく語り掛けた。おそらくは、あなたの家の居間か;それとも書斎かしらね。どこでもいいの。安全だと感じられる場所よ。部屋に入ったら、リクライニングチェアを想像して。リクライニングチェアに座って、気持ちよく安んでいると、目の前にテレビがあるわ。テレビの画面に、あの夜の場面を映し出して、何が見えるか描写して頂戴。

あなたの手にはリモコンがあるわ。それを使えば、テレビを操作できるのよ。早送りしたり、巻き戻したり、消したりね。あなたが安全に感じて、コントロールを失わないでいられるよう、どんな操作だってできるのよ。

高速道路のシーンに女性は戻った。助手席には彼女の息子が居る。彼女たちは迂回することにした。広告板が近づいて来た。

ゆっくり進めて、とローラは彼女に言った。リモコンのポーズ・ボタンを押して、テープをコマ送りさせるのよ。

信号が見える。青い光よ。広告板の前だわ。まばゆいばかりよ。クルマのコントロールを失ったわ。クルマが道路から離れて行く。やがてクルマは駐車場に停まった。食堂の外にある駐車場の中よ。なぜなのかしら。待って。誰かやって来るわ。誰かがクルマの方に近づいて来るの。

ローラは、それが誰なのか描写するよう頼んだ。

「できないわ」と女性。またしても彼女は動揺していた。過呼吸になっている;二の腕が引きつっていて;彼女は痛そうに腕をさすった。

「できないとはどういう意味?」とローラ。

「彼らがそうさせないのよ」

何が起こっているのか話して頂戴、とローラは彼女に懇願した。あなた、誰のことを言ってるの?誰が話すのを止めさせたの?

女性は首を横に振るばかりだった。

「できないわ」。彼女は言った。「できないのよ」

* * *

この夜、可能性が僅かだった筈のリアリティーが、めくれるように姿を現わし始めた。ローラの理解がシフトし始めるに連れて、宇宙も一緒にシフトした。

それは突如として起こった訳ではない。だが、ゆっくり、少しずつ起きたのだった。

ソファーの女性がすっかり動揺してしまったので、ローラはこの夜のセッションをお開きにした。あまりのトラウマでなければ、彼女は調査を続けたかった。そこでローラは女性の催眠を解き、もう一度、改めてセッションをしましょうね、と言った。皆が帰った後、ローラは、被験者が明かした話の意味するところを考えた。フレディーの言う通りなのだろうか?この女性と息子は、エイリアンにアブダクトされたのだろうか?

最初のうち、ローラは依然懐疑的だった。すると、それから数週間の間に幾つかの出来事が起こり、彼女の疑念は少しずつ剥がれ落ちて行った。新聞やテレビが、この地域で何度もUFOが目撃されたと報じたのだ。1993年4月の中旬から下旬にかけて、パスコ、ヘルナンド、パイネラスの各郡で10数人の人々が、巨大なブーメランの形をした機体が空を飛んで行くのを見たというのである。目撃者の1人である、ヘルナンド郡の保安官代理は、機体には標識が無く、青色のライトがあしらわれていて、翼幅は少なくとも60mあったと語った。彼はそれを数分間見ていたのだが、やがて人間の作った飛行機には不可能なスピードを出して飛び去ったという。

「私の現時点の知識からは、この星のものとは思えない」と保安官補はセント・ピーターズバーグ・タイムズの記者に語った。「地球上の物体で、あんな風に空中に浮かんだり、急発進できるものはないよ」

新聞記事を読んでみて驚いたのだが、このブーメラン型物体が最初に目撃されたと報告されているのは、4月15日火曜日の晩、ニューポートリッチーにおいてであり、それはローラが例の女性に対して居間で催眠セッションを行った晩なのだ。この晩に飛行物体を見たという人の家は、ローラの家から6区画ほどしか離れて居なかった;この人が寝室の窓から機体を見たのは、テレビドラマ『L.A.ロー 七人の弁護士』が22時に始まった直後だったという。

記事を詳しく読んで行くうち、ローラは他の点にも気が付いた。この目撃者が巨大なブーメランを目撃したと主張する時間は、ローラのセッションが佳境に入っていた、まさにその時間帯なのである。実際この目撃者は、UFOがローラの家の近所の空中に静止していたのを見たと言うのだ。

フレディーにしてみれば、こうした事はいずれも、失われた時間について打ち明けた女性が、あの夜、危険な何か=エイリアンがシェアしたくない何かを話していたという何よりの証拠だった。道理で彼女の記憶は、ああも強力にブロックされていた訳だ、と彼は言った;あの女性は「彼らが」話を続けるのを許さないのよ、と言っていたが、その意味がこれで分かったよ。

ローラには未だ、フレディーの説を信じる心構えが出来て居なかった。彼女に言わせれば、目撃ラッシュだって、ミレニアム病の大流行の一端に過ぎなかったからだ。1人の人が巨大なブーメランを見たと主張した結果、あとの人たちはおそらく、こうした主張を耳にして興奮した結果、同じ物体を見たと想像しているのだ。もし、エイリアンが沢山乗り組んでいる、気の毒な地球人たちを大勢誘拐した宇宙船が大量に飛んでいたというのなら、その証拠はどこにあるというのか?

「証拠はどこよ?」と彼女はフレディーに尋ねた。「お願いだから、忌々しいエイリアンを見せて頂戴」

結局、あのペンシルバニアの夜に失われた時間を体験した女性からは、あれ以上の証拠は得られなかった。ローラとの最初のセッションの後、電話して来た彼女は、気が変わったと言う。彼女がもう1度セッションをしに戻ることはなかった。

ローラは自分の研究を進めた。彼女はUFOの目撃談や、その他の超常現象について読み続けた;憑依霊解放も続けたし、時折はエクソシズムも行った。彼女とフレディーは、未だにウイジャボードでの実験を行い、別のリアリティに棲む存在にコンタクトしようとしていた。

やがて、晩夏のある晩に、ローラは驚くべき体験をした。それは1993年8月16日のことだった。ローラは家族と共に夕食を済ませた。夜が更けてきた。ルイスは家の中に居たが、ローラは子どもたちのうち3人と裏庭に居て、家族用のビニール・プールで泳ぎながら、空を見詰めていた。これは流星群が見える週だったので、ローラと子どもたちは、プールでリラックスしながら流れ星が見えたらと思っていたのだった。

ローラが後に書いているのだが、彼女たちがほんの束の間、空を見詰めていると、突然、巨大な黒いブーメラン型の物体が直接、家の真上に現れて、プールを蔽ったという。かなりの低空で、おそらく屋根から3mくらい上なだけだった。それはゆっくりと動き、音は立てていなかった。

「ママ、あれを見て!」子どもたちは叫んだ。「あれは何?」

ローラは何と言っていいか分からなかった。

「ガチョウの群れよ」と彼女は言い、なりふり構わず説明した。「冬支度で南に渡るの」

すると、2機目のブーメランがやって来た。

こちらは、最初のUFOから西に15mくらい離れたコースを取り、これまた低空飛行で、家の近くにやって来た。水に浮かびながら、ローラは物体を注意深く観察した。彼女は羽ばたく羽を探し、隠し通せない鳴き声を聞き分けようとしたが、ガチョウの群れであることを示すようなものは何も見えず、何も聞こえなかった。これは単体で飛ぶ固体で、表面の風合いは黒くてメタリックだった。ツヤのある外観には、ファミリープールの光が反射して見えた。

それは、彼女たちの頭上を通過し、向こうの家々を越え、中学校の上空へと通り沿いに進んで行ったが、そのうち、夜の闇の中に消えてしまった。

子どもたちは我を忘れて叫んでいた。ローラは何と言えばいいか分からなかった。一体何に対してこれほど叫んでいるのか見ようと、ルイスが戸外に出て来た時、ローラはさっき言った言葉に拘り、ガチョウの群れが2つ見えたのだと夫に話した。

そんなことがあり得ないのは、ローラも知っていた。いや、鳥の類ではあり得なかった。自分の目で見てしまったものは、彼女にも消し去ることはできなかった。

だが、彼女が見たのは一体何だったのだろう?

それから数日のうちに、ローラは有り得る答えを2つに絞った。彼女自身がミレニアム病に感染してしまったのが真相か、あるいは、UFOが実際に飛んでいたというのが、否定できず/避けることのできない客観的現実なのだろう。

* * *

ローラがじっくり考えなくてはならないことは他にもあった。

「失われた時間」の存在を示唆した女性についてである。高速道路での夜についての彼女の説明は、ローラにとって妙に身に覚えのある要素を含んでいた。失われた時間というエピソードを体験し、後に、エイリアンにアブダクトされたと主張した人々の説明の多くにしてもそうだった。

彼女たちの物語は、ローラのそれと関連していた。ローラはそれを感じることが出来た。

こうした報告の全ては、これまでの人生で起こったとローラが感じている数多くの奇妙な出来事に似ていた。窓から覗き込む顔、森の中の赤ん坊の夢、寝室で何度も感じた存在。そしてもちろん、寝室の窓越しに明るい光が差し込む夢を見た夜。この時は、翌朝目覚めると彼女が戸外の暗闇の中を歩いていたと分かったのだった。

ローラはこれらの繋がりから長いこと目を背けてきた。だから、フレディーの説にも抵抗があったのだ。だから、目の前に証拠があっても、立ち向かい戦ってきたのだ。

それらはあまりにもリアル過ぎた。

(続く)
posted by たカシー at 22:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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