2017年05月20日

憂うつを感じることの精神的および心理的利益

SOTT 魂の科学


憂うつを感じることの精神的および心理的利益
https://sott.net/en351223


ジョセフ・ポール・フォーガス
カンバセーション
2017年5月17日

(※写真:悲しい顔)
c Shutterstock

ホモサピエンスはとても気分屋の生物種である。悲しみや憂うつは、人間が生活の一部として、これまでも常に経験してきたものだが、今、私たちは、これらの感情を無視ないし低く評価する時代に生きている。

私たちの文化においては、一時的な悲しみのような正常な人間的感情がしばしば、病気として扱われるのだ。
https://books.google.com.au/books?id=oWmtN3wSJmoC&pg=PA123&lpg=PA123&dq=sadness+pathology&source=bl&ots=8un00x_5LB&sig=Syb3V0v7J-ddktcwUu6Vb-cnIxw&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwjPvLvR59rTAhXCm5QKHa6eAhkQ6AEITjAH#v=onepage&q=sadness%20pathology&f=false
操作的宣伝広告/マーケティングや自己啓発産業は、幸福をこそ私たちは求めるべきだと主張する。
http://reliawire.com/happiness-illusion-contentment/
http://www.thenational.ae/business/retail/has-happiness-in-advertising-been-overused
だが、憂うつが私たちにとって欠かせないものであることに変わりはなく、それは私たちが日常的に味わう気分の正常な範囲内にある。

幸福と未曾有の物質的富に対する信仰(カルト、賛美)がほぼ世界共通となっているにもかかわらず、西洋社会における幸福と人生の満足度はこの数十年間向上していない。
https://medium.com/@dailyzen/the-cult-of-happiness-2d25cef37a7d
https://internal.psychology.illinois.edu/~ediener/Documents/Diener-Seligman_2004.pdf

今こそ、私たちが生活の中で憂うつを感じることの役割を見直すべきである。それは正常なことであり、私たち人間が日々直面する状況や難題の数々に対処する上で、有益かつ適応性を高める側面すら持っているのだ。


悲しみの小史

人類の歴史の初期においては、短期間悲しみや憂うつを感じること(軽度の抑うつ状態と呼ばれるもの)は、正常な日常生活の一部だと考えられていた。
http://www.guilford.com/books/The-Positive-Side-of-Negative-Emotions/W-Gerrod-Parrott/9781462513338/contents
実際、人間精神が生み出した傑作の多くは、ネガティブな感情を呼び起こし、リハーサルを行い、さらにはそれを助長することを扱ったものである。

ギリシャ悲劇は、人生における通常の一コマとして、観客が不可避な不運を受け入れ、対処できるよう、ネガティブな感情を白日の下にさらし、人々を訓練するものだった。
http://www.ancient.eu/Greek_Tragedy/
シェイクスピアの悲劇は、このテーマを繰り返したがゆえに古典なのである。そして、ベートーベンやショパンの音楽、あるいはチェーホフやイプセンの文学のような偉大な芸術作品の数々は、悲しみの風景を探るものだが、これは長きに亘って、教訓的かつ有用なテーマだと認められてきた。



古代の哲学者たちもまた、充実した人生を送る上では、憂うつな気分を受け入れることが必要不可欠だと信じていた。エピクロスのような快楽主義の哲学者でさえ、幸福な人生を送るには、賢明な判断と自制を行い、不可避な災難を受け入れることが必要だと考えていたのである。
https://en.wikipedia.org/wiki/Epicurus

ストア派のような他の哲学者たちもまた、喪失、悲しみ、不公平のような不幸を予期し、受け入れるのを学ぶことの重要性を説いた。
https://en.wikipedia.org/wiki/Stoicism


悲しむことの意味合いとは?

私たちの感情や行為が時の経過とともに、どのように進化してきたかを研究する心理学者たちは、(気分や喜怒哀楽のような)全ての感情の状態には有益な役割があると述べている:それらは、私たちが反応する必要がある世界の状態についての私たち自身への警告なのである。
http://www.personal.kent.edu/~dfresco/CBT_Readings/keltner_%26_gross.pdf

実際、人間の感情の領域中には、ポジティブな感情よりもネガティブな感情の方が数多く存在する。恐れ、怒り、羞恥、嫌悪のようなネガティブな感情は役に立つ。というのも、これらは脅威となる状況や危険な状況を私たちが認識し、回避し、克服する上で有益だからだ。
http://reliawire.com/disgust-turn-on-ourselves/

だが、おそらくは最も一般的なネガティブ感情であり、殆どの臨床精神科医が取り組んでいる「悲しみ」の意味合いとは何だろうか?

絶望のような、激しくて持続的な悲しみは明らかに、深刻かつ衰弱的な疾患である。
http://reliawire.com/depression-information/
しかし、軽度で一時的な憂うつは、私たちが日々の難題や困難な状況に立ち向かう役に立つことで、適応性を高めるという重要かつ有益な目的を果たすだろう。
https://positivepsychologyprogram.com/negative-emotions/
これらはまた、競争からの離脱や撤退を周囲にコミュニケートする結果、保護となる覆いがもたらされるという、社会的な信号としての役目も果たしている。私たちが悲しみに暮れ、憂うつな表情をしていると、人々はしばしば心配してくれ、快く助けてくれるのだ。
http://psycnet.apa.org/journals/psp/53/1/94/

メランコリー(うつ病)やノスタルジー(過去への郷愁)のような、ネガティブな気分の幾つかは、心地良くすらあり、未来の計画とやる気を導く上で役に立つ情報をもたらすもののようである。
http://www.contempaesthetics.org/newvolume/pages/article.php?articleID=214
http://www.wildschut.me/Tim_Wildschut/home_files/Nostalgia%20JPSP.pdf

悲しみはまた、共感や同情、連帯感、そして、道徳的/美的敏感さをも高める。悲しみは昔から、芸術的創造性の誘因であった。
https://www.wired.com/2010/10/feeling-sad-makes-us-more-creative/

最近の科学実験も軽度の憂うつがもたらす利益について実証している。すなわち、憂うつな気分は、自動的かつ無意識なアラーム信号の役割を果たし、より注意深くてきめ細かな思考スタイルを促進するのである。
http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0963721412474458
つまり、憂うつな気分は私たちが、より注意深くなって、困難な状況に集中するのに一役買うのだ。

これとは対照的に、(幸福感のような)ポジティブな気分は、気楽で安全な状況を示す信号として働く結果、きめ細かさと注意が欠けた処理スタイルとなるのが典型的である。


悲しみの心理的利益

悲しみのようなナガティブな気分には心理的な利益があるという証拠が今や増えてきた。

これを実証すべく、研究者たちはまず、被験者の気分を(例えば幸せな、あるいは悲しい映画を見せることで)操作しておき、次に様々な認知的/行動的作業をさせて成果の変化を測定するのである。

悲しい気持ちや憂うつは数多くの利益をもたらす:

・記憶力の向上
ある研究では、(悪天候により)憂うつな気分となった結果、被験者たちは出て来たばかりの店の詳細な点までより良く記憶していた。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022103108001649
憂うつな気分はまた、不適切な、誤りの、あるいは誤解を招く情報のような、様々な邪魔による影響を減らす結果、目撃者の記憶力を向上させる。
https://experts.illinois.edu/en/publications/mood-effects-on-eyewitness-memory-affective-influences-on-suscept

・より正確な判断
軽度の憂うつはまた、人々が印象を抱く際の偏向や歪みも減少させる。例えば、僅かに悲しい状態で行なわれる判断によって、他人について、より正確で信頼できる印象が形成されるのだが、これは細部をより効率的に処理するせいなのだ。
https://www.researchgate.net/profile/Joseph_Forgas/publication/241071358_Can_negative_affect_eliminate_the_power_of_first_impressions_Affective_influences_on_primacy_and_recency_effects_in_impression_formation/links/5424f0020cf26120b7ac4b5b.pdf
憂うつな気分はまた、都市伝説を評価する際にも騙されにくくなり、懐疑心を高め、さらには正確に騙しを見破る能力を向上させることが分かっている。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022103108000693
https://www.researchgate.net/publication/222401249_On_being_happy_and_gullible_Mood_effects_on_skepticism_and_the_detection_of_deception
軽度の憂うつ状態にある被験者はまた、単純化されたステレオタイプを信頼しにくくなる。
http://faculty.wcas.northwestern.edu/bodenhausen/HASC.pdf

・やる気
他の実験では、幸せを感じている被験者と悲しみを感じている被験者に難しい知的作業を行ってもらったところ、憂うつな気分の人たちの方が、より一層努力してやり抜いたのである。
https://books.google.com.au/books?id=XftkAgAAQBAJ&pg=PA21&lpg=PA21&dq=negative+mood+improves+perseverance&source=bl&ots=sYypDVB1kH&sig=F0mkA-IlQX9hITLnDsPhgRZC-7U&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwiTmfCF8trTAhVFFJQKHZXEA74Q6AEIPzAF#v=onepage&q=negative%20mood%20improves%20perseverance&f=false
彼らは作業により多くの時間をかけ、より多くの質問に挑戦して、より正確に解答した。

・より良いコミュニケーション
憂うつな気分は、より注意深くて、きめ細かな思考スタイルを促進する結果、コミュニケーションも向上させる。悲しい気分の人々は、他人を説得しようとして、より効果的で説得力ある議論を行い、会話においても、他人の不明瞭な言葉を理解し、自分たちの言葉もうまく伝えられることが分かっている。
https://www.researchgate.net/publication/222692572_When_sad_is_better_than_happy_Negative_affect_can_improve_the_quality_and_effectiveness_of_persuasive_messages_and_social_influence_strategies
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ejsp.1950/abstract

・公正さの向上
他の実験では、軽度のうつ状態にある人々は、社会からの期待や社会的規範に対して、より注意を払い、他人に対しても利己的でなく振る舞い、相手をより公平に扱うことが分かった。
http://guilfordjournals.com/doi/abs/10.1521/soco_2012_1006


幸福信仰(カルト)に抗する

幸福感を称賛し、悲しさの美徳を否定する結果、私たちは自らに達成不可能な目標を課す。この結果、さらに失望することともなり、中には絶望に陥るのだと言う学者も居る。
https://www.psychologytoday.com/blog/give-and-take/201305/does-trying-be-happy-make-us-unhappy

良い気分で居ることには、幾つかの利点もあるものの、どんな場合でも望ましい訳ではないという認識も高まっている。
https://global.oup.com/academic/product/positive-emotion-9780199926725?cc=au&lang=en&

うつ状態で悲しく感じることで、私たちは自らが置かれた状況に、より注意を集中でき、監視能力が高まる結果、もっと厳しい状況にもうまく対応できるのである。

こうした発見が示すのは、幸福をたゆまず追求して行くと往々にして自滅する結果に終わるということだ。良い気分と憂うつな気分のコストと利益をもっとバランス良く評価すべきだというのが、長年の懸案なのである。


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SOTT編集部コメント:これらも参照のこと:
・悲しいのは本当に悪いことか?
https://www.sott.net/article/173158-Is-it-really-bad-to-be-sad
・絶望は良いことか?
https://www.sott.net/article/150112-Is-depression-good-for-you
・悪い気分は良いものだ
https://www.sott.net/article/262658-Feeling-bad-is-good
posted by たカシー at 09:41| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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