2013年11月18日

ケトン食概要

http://www.sott.net/article/265069-The-Ketogenic-Diet-An-Overview
ケトン食概要

医学博士 ガブリエラ・セグーラ
ヘルス・マトリックス
http://www.health-matrix.net/2013/08/09/the-ketogenic-diet-an-overview/#more-797
2013年8月18日


(写真)
ケトン食は動物性脂肪源に基礎を置いている


ケトーシス(=辞書の訳「<病理学用語>糖尿病のように,体内に過度のケトンが蓄積すること」)はしばしば誤解されるテーマである。その存在は飢餓あるいは何らかの代謝異常の危険信号と見做されているのだ。しかし、ひどい扱いを受けている1型糖尿病の場合は別としても(原注1)、これ以上真実から懸け離れた観方はないだろう。ケトンは ― 一般に信じられている神話とは反対に ― 正常な脂肪代謝によって得られる、私達の細胞に必要不可欠な癒しのエネルギー源なのである。


原注1:ソット・ドットネット・フォーラムのあるメンバーは1型糖尿病患者だが、ケトン食を実践中である。(1型を含む)糖尿病患者は低炭水化物食を行うことで驚異的回復を示すのが通常である。リチャード・K・バーンスタイン著、太田 嘉義・訳『バーンスタイン医師の糖尿病の解決』(金芳堂、京都、2009-11 第2版)参照。
http://srjrswim-notes.blogspot.jp/2012/08/dr-bernsteins-diabetes-solution-2007ed.html


全身がケトンを利用するのは、炭水化物 ― 別名グルコース、ブドウ糖とも言われる糖質 ― をエネルギー源とする場合よりも、ずっと安全かつ効率的なやり方である。カーボ(=炭水化物)を全く含まず、あるいは少量しか含まない(1日あたりの炭水化物摂取量が60グラム以下)場合(原注2)、私達の身体はケトンを生成する。(洞窟人のように)極低カーボ食を食べ、あるいはそれを全く食べないことで、私達はケトン代謝に適した身体になるのだ。


原注2:個人差があるものの、一般的には、カーボが0から70グラムの範囲であり、かつ、標準体重1kgあたり0.8から1.5グラムという、適量のタンパク質を摂取する場合である。妊婦や子供はタンパク質摂取を制限すべきでない。


実は、こんにちケトン食として知られているものは、巨大製薬会社が危険な抗てんかん薬のカクテルを導入するまでは、てんかん患者にとってのナンバーワン治療法だった。数十年掛かったものの、この食事法は再び注目を集めることとなった。これは深刻な発作に見舞われていた生後20か月の男児のためにこの食事法を求めた、ある親御さんのお蔭と言えよう。この子の父親は、神経科医がそのような治療法を提示しなかったために、ケトン食について図書館で調べねばならなかったのだ。この食事法を始めてわずか4日で、この子の発作は止み、ぶり返すことはなかった。(原注3) 全快したこの子の名前に因んで、「チャーリー基金」が設置されたが、今では世界じゅうでケトン食の実践が可能であり、その治療効果は口コミで広まっているのである。


原注3:エリック・コソフ『発作コントロールおよび神経疾患におけるケトン食』
http://asdnews.seesaa.net/pages/user/m/article?article_id=14071228
ジェフ・S・ヴォレック&ステファン・D・フィニー『低炭水化物生活の技術と科学』
http://低糖質.com/review/cat18/post_179.html


ケトン食は健康的なライフスタイルのために利用されるだけでなく、乳児けいれんや、てんかん、自閉症、脳腫瘍、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)、うつ病、脳梗塞、頭部外傷、パーキンソン病、偏頭痛、睡眠障害、統合失調症、不安症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、神経過敏、多嚢胞卵巣、過敏性腸症候群、胃食道逆流、肥満症、心疾患、にきび、2型糖尿病、振戦、呼吸不全、その他殆ど全ての神経疾患だけでなく、がんや酸素欠乏の後遺症として組織の回復が必要な症例にも用いられている。(原注4)


原注4:アントニオ・パオリ他『減量を超えて:極低炭水化物(ケトン)食療法レビュー』
(※上の論文の概要:
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-category-5.html
『超低炭水化物食やケトン食は1920年代よりてんかんの治療に用いられ、症例によっては薬物療法の必要性を完全になくすことができた。1960年代より先は肥満治療のよく知られた手法として広く知られることとなった。ここ数十年そこらでの最近の研究では、糖尿病や多嚢胞性卵巣症候群、ざ瘡(にきび)、神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、脳外傷、筋萎縮性側索硬化症など)、がんや呼吸器・循環器系疾患のリスク改善などさまざまな病理学的状態においてケトン食の治療的潜在能力に関するエビデンス(証拠)が提供されてきた。食事摂取を修正することは、しばしば生涯にわたる副作用がみられる治療となる薬物療法の減量や中止に有用となりえる可能性があり、詳細な研究が求められている。今回のレビューでは、このエビデンスの観点から生理的ケトーシスの意義について見直し、様々な疾患へのケトン食の治療的作用に対する考えられるメカニズムについて考察する。また今回のレビューではケトン食に対していくつかの先入観がまだあるかどうかについて疑問を投げかけることで、内科医の手による治療手段としてケトン食を用いることに対する障壁をなくすことができるかもしれない。』)


脳や心臓、腎臓といった私達の体内の器官や組織は、ケトンを燃料源とした方がずっと調子がいいのだ。心臓が動いているのをリアルタイムで見る機会があれば、心臓の周りを厚い脂肪組織が取り囲んでいるのに気付くだろう。実際、心臓外科医は毎日これを見る機会がある。幸せそうに鼓動している心臓とは、健康な脂肪の層に囲まれているものである。心臓と脳のどちらも、血糖よりケトンをエネルギーにして動いた方が、少なくとも25%効率的なのだ。


(ロゴ写真)
ケトン・パワー


ケトンはグルコースと違って、私達の身体にとって理想的な燃料である ― グルコースはと言えば、ダメージをもたらし、安定性に欠け、刺激が多く、実際、私達の寿命を縮める。ケトンには全く糖化作用が無い。すなわち、私達の身体をカラメル化したり、加齢したりしないのである。健康的なケトンはまた、がん細胞を飢え死にさせるのにも役立つ。というのも、がん細胞はケトンを燃料に用いることができず、成長するにはグルコースだけが頼りだからだ。(原注5) 私達の細胞内にあるエネルギー製造工場 ― ミトコンドリア ― は、ケトン食の方がずっとよく働く。安定的で燃焼が長持ちし、効率的に一定して働くことでエネルギー・レベルを向上させることができるからだ。それだけでなく、ケトン食は、私達のミトコンドリアからのエネルギー出力を増加させて、ダメージをもたらすフリーラジカルの生成を減らし、重要な抑制性の脳化学物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の生成を助けるような後成的変化(原注6)を誘発する。GABAには私達の生活の欠かせないリラックス効果があるが、ケトン代謝はGABAの生成にも都合がよく、この結果、私達の脳内で刺激性物質が伝達されることによる有毒な作用が軽減されるのだ。さらに最近のデータが示すところによれば、ケトン代謝は全身的な抗炎症作用を持つ以外にも、痛みを和らげる働きがあるという。(原注7)


原注5:ライナー・クレメント&ウルリケ・ケメラー『がんの治療や予防に炭水化物の制限は役立つか?』

原注6:遺伝暗号が生命にとってのハードウェアだとすれば、後成的暗号はそのハードウェアの振る舞い方を決めるソフトウェアにあたる。

原注7:デビッド・N・ラスキン&スーザン・A・マジノ 『神経系と代謝調節異常:ケトン食セラピーに関して集中的に現れてきた証拠』


ケトン食は直ちに複数のレベルに作用するが、 これはどんな薬にも真似できない。これはどうしてかと言うと、ミトコドリアは脂肪をエネルギーに用いるよう特にデザインされているからだ。私達のミトコンドリアが脂肪をエネルギー源として用いるとき、毒物による負荷が減少し、ATP産生に関与するミトコンドリア遺伝子の発現が増え、ミトコンドリアによるエネルギー出力が増大し、炎症を起こすようなエネルギー的最終製品の負荷が減少するのである。

このような驚異的な治癒効果が起きるカギは、肝臓による脂肪代謝とそれによるケトン体(β-ヒドロキシ酪酸およびアセトアセテート)生成がミトコンドリア内でのみ起こり、細胞内に化学物質を残す一方で、ミトコンドリアの外では、直ちに強力な抗炎症作用のある酸化防止物質を励起することにある。私達のミトコンドリアの状態は超健康であるための究極のカギであり、私達の中には、これらの枢要なエネルギー工場を癒すために、栄養サプリの形で特別なサポートを必要とする人々が居るのも事実であるところ、この食事法は彼らが適切なバランスを保つ上でもやはり究極のカギなのだ。

現代社会における主要なエネルギー源は糖質だが、それらは細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアに送られる前に、まず細胞質のスープの中で処理される必要がある。脂肪というエネルギー源の場合は、このような処理は必要無い;それは直接ミトコンドリアに送られ、エネルギー生産に使われるのだ。つまり、糖質からエネルギーを作るのは、脂肪から作る場合よりも複雑なのである。クリスチャン・アラン博士とウォルフガング・ルッツ医師が『パンのない生活』に書いている通りだ:


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炭水化物はエネルギーを得る上で不必要である。脂肪からは、等量の炭水化物からよりも多くのエネルギーが得られ、低炭水化物食は、エネルギー生産系をより効率的にするものだ。さらに言えば、多くの臓器は脂肪エネルギーの方を好むのである。
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実際のところ、1分子当りで得られるエネルギーは、脂肪の方が糖質より多いのである。慢性的/自己免疫疾患のうち、エネルギー不足を伴うものが何と多いことだろうか?慢性疲労はどうだろう?線維筋肉痛は?リウマチ性関節炎は?多発性硬化症は?がんは?アランとルッツに戻ろう:


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ミトコンドリアは細胞の発電所だ。そこでは体内のエネルギーの殆どが産出されているので、得られるエネルギー量は、ミトコンドリアがいかにうまく働いているか次第なのである。エネルギーについて考える場合、ATPを大量に生産して、全身が正しく機能するようにしているミトコンドリアについて考える必要がある。細胞によってミトコンドリアの数は様々だが、全細胞容量の50パーセントはミトコンドリアだ。疲れたとき、もっと炭水化物が必要だなどと考えてはいけない;そうではなくて、どうしたらミトコンドリアによるエネルギー生産を最大化できるかと考えるべきである。。。もし、ミトコンドリアの中に入れるくらいに小さくなることが出来たら、そこに何が見つかるだろうか?最初に分かる事とは、ミトコンドリアが専ら脂肪をエネルギーとして用いるようにデザインされているということである!
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つまり、脂肪こそ薬なのであり、薬として脂肪を用いればよいのだ!

こうした全ての情報からすれば、私達の医療介護機関は到る所でケトン食を推奨していそうなものだが、悲しいかなそうではない。主流派の栄養士は、糖質こと炭水化物を主食として勧めているのである。このことで問題なのは(幾つかあるのだが)、高カーボ食を摂取している場合、私達は脂肪代謝によってケトンを生成することができず、このため、ケトン生成によって身体を癒す機会を逸しているということである。グルコースを主な燃料に用いている世界に住むということは、様々な癒しの得られない食品を食べているということなのだ。


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私は、低カーボ食を始めて、今日で1週間半になるんだけど、本当に驚くべきことになったと言わなくてはならないわ!!! 最初の何日かは、頭痛がして、気だるく、脚も重く感じたのよ。だけど、それが過ぎたら、エネルギー一杯になった。もう午後3時になっても疲れ知らずよ。一番いいのは、絶えず食べ物の事を考えて悩まなくなったこと。内心から穏やかであるとはこういう事を言うのね。肌もきれいになったし、髪だって。朝食にはベーコンと卵、昼食にはポークチョップか何かの肉を、夕食には普通豚肉と、そして時々は幾らかインゲンも食べてるわ。体重も少し減ったのよ!やったー!!!
― アメリカ、アンジェラ。ソット・ドットネット・フォーラムより。
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私達は3百万年近い間ケトン食を行って来たのであり、それが私達を人間らしくしたのである。私達が脳を育み、進化したのは、まさにこのライフスタルによってなのだ。しかし、私達皆がこの失われた知恵を取り戻す努力をしない限り、もはやそうは行かない。こんにち、人間の脳は縮んで来ているだけでなく、歳をとったり、アルツハイマー病やパーキンソン病、老人性痴呆症のような病気に苦しむときには、脳委縮が常態となっているのだ。

一方で新研究の結果、細胞サイクルを調節する上でのミトコンドリアの重要な役割が解明され始めた ― 単細胞の受精卵が成熟した生物へと育つ生命プロセス、そしてまた、髪や皮膚、血液細胞、内臓が新しいものになるプロセスである。細胞サイクルの進行を取り巻く、複雑かつ高度に編成された数々のイベントにおいて、ミトコンドリアは単にエネルギーを生み出す傍観者であるにとどまらず、れっきとした参加者だったのだ。(原注8) 細胞分裂のために必要な全ての栄養を生み出すという重要な責任を考えれば、何らかの調整を行っているのも合点が行く。ミドコンドリアと細胞サイクルとの間の、長い間無視され、見過ごされてきた繋がりは、私達の身体における食事の役割を理解する上で、もっとずっと注目される価値がある。このケトン代謝というテーマについてはもっと詳しく調べねばならない。というのも、それは私達が、最高に健康な生活へと転換をはかるカギを握っているからである。


原注8:トーレン・フィンケル、ポール・M・ウォン『クレブス回路、細胞周期に出会う:ミトコンドリアとG1/S期移行』


ミトコンドリアの機能障害

ミトコンドリアは細胞のためのエネルギーを生み出すが故に、細胞の発電所として大変良く知られている。しかしこれらはまた、細胞がどんな具合に老い、分裂し、死ぬかを調節する遺伝子オーケストラの指揮者でもあるのだ。これらは私達の組織体内の全ての細胞において、どの遺伝子のスイッチをオンにし、どれをオフにするかの指示を手伝う。これらはまた、新しい脳内結合を作ったり、私達の身体を修理し、再生するのに必要な燃料も供給する。

主婦だろうと、スポーツマンあるいは労働者だろうと、エネルギーは私達の誰もが、日々何を行う上でも重要な話題だ。私達の幸福や立ち居振る舞い、そして、目の前の仕事をこなす能力こそが、1人1人にとってのエネルギーの物差しである。だが、私達はどうやって食べ物からエネルギーを引き出しているのだろうか?

体内でのエネルギー産出やそれに向いている食べ物の種類に関しては、数多くの、根拠のない作り話が存在している。主流派科学に言わせれば、炭水化物こそ、ミトコンドリアがエネルギーを生み出す際に使用している燃料だということになる。このプロセスは酸化代謝と呼ばれる。というのも、このプロセスにおいては酸素が消費されるからだ。ミトコンドリアによって作られたエネルギーは化学的な「電池」と呼ぶべき、ユニークなアデノシン三リン酸(ATP)という名前の分子に貯えられる。それから、エネルギーを貯えたATPは、細胞内をあちこちと運ばれて行き、特定の酵素の要求があり次第エネルギーを放出するのである。燃料を生み出す以外に、ミトコンドリアはまた、酸素に関係ある副産物も生み出す。これは活性酸素種(ROS)と呼ばれるものだが、一般にはフリーラジカルとして知られる。しかし、主流派が黙して語らないのは、ミトコンドリアが炭水化物ではなく、脂肪を使ってエネルギーを生み出すよう特にデザインされているということだ。


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出所:クリスチャン・アラン博士、ウォルフガング・ルッツ医師『パンのない生活』

ミトコンドリア内でのATPの生成はとても複雑ないくつかのステップを経て行われるが、ATP生産における5つの主要な部分に着目すれば、どうやってミトコンドリア内でエネルギーが作られ、どうして脂肪がミトコンドリアの働きを最適化するカギなのかは十分理解できる。個々の物質名にはあまり気を取られないで、全体像を見るようにして欲しい。

ステップ1 − 食物由来の燃料源をミトコンドリア内に運ぶ

まず最初に、燃料をミトコンドリアの内部に入れなくてはならない。あらゆる活動はそれから始まる。燃料はカーボから得られるが、脂肪から得ることも出来る。脂肪酸というのが、脂肪の化学名であり、中から大サイズの脂肪酸が、L-カルニチン(L-carnitine、◆脂肪を燃焼させるために必要なアミノ酸の一種)の助けによって、壊されないまま、まるごとミトコンドリア内に入って行く。L-カルニチンというのは、脂肪酸をミトコンドリア内部へと運ぶ地下鉄のようなものだと考えればいい。L-カルニチン(肉や肉体を意味するギリシャ語carnisが語源)は主として動物性食品に含まれている。

カーボから得られる燃料は、まずミトコンドリアの外で分解される必要があり、分解によって得られた物(ピルビン酸化合物)はミトコンドリア内に運ばれるか、あるいは、嫌気的代謝によってミトコンドリアの外でエネルギー生成に用いられることになる。後者は酸素が存在しない場合のATP産出法で、非常に非効率的である。

ステップ2 − 燃料がアセチルCoAに変換される

ピルビン酸化合物 ― カーボを分解して得られたもの ― がミトコンドリア内に入ると、それはまず酵素反応によって、アセチルCoAに変換されねばならない。

ミトコンドリア内に入った脂肪酸は、直接分解されてアセチルCoAとなるが、これはベータ酸化と呼ばれる。

アセチルCoAは、次のステップにおいて、ミトコンドリア内でATPが産出される際の出発点となる。

ステップ3 − アセチルCoAの酸化とクレブス回路

クレブス回路 (別名、トリカルボン酸回路◆【略】TCA、あるいは、クエン酸回路)というのは、アセチルCoAを酸化させて、その結果アセチルCoAから電子を取り除き、ミトコンドリア内に酸素がある場合には副産物の二酸化炭素を作り出すものである。

ステップ4 − 電子が呼吸鎖の中を運ばれる

アセチルCoAから得られた電子は ― 究極的にはカーボや脂肪に由来するものだが ―、ミトコンドリア内での電子伝達系を構成している数多くの分子の間を行き来する。それら分子の幾つかはタンパク質であり、あるいは補助因子分子である。これら補助因子の1つは、主として動物性食品中に含まれている、コエンザイムQ10と呼ばれる重要な物質だ。これが無くては、ミトコンドリアによるエネルギー産出は最小となる。このコエンザイムQ10がスタチン剤(◆コレステロールの生合成に関わる酵素を阻害することによって、血清コレステロールのレベルを下げ、脂肪を減らす薬)によってブロックされると、人々の健康に壊滅的な影響を与える。ステップ4においてはまた、酸素が電子を受け取ることにより水が生成される。

ステップ5 − 酸化的リン酸化

電子が電子伝達系を進んで行くうち、ミトコンドリアの膜の内外に電子的ポテンシャル差(ないしは化学勾配)が形成される。このような化学勾配が原動力となって、ATPが合成されるのが酸化的リン酸化である。それから、ATPはミトコンドリアの外に運ばれ、細胞が何千という生化学反応のいずれかを行う際に使用されるのだ。

だが、どうしてカーボより脂肪の方が良いのだろうか?

ミトコンドリアが存在しなければ、エネルギーを得るための脂肪代謝は限られ、あるいは、あまり効率的でなくなる。しかし、自然は進化の過程で我々にミトコンドリアを与えてくれた。ミトコンドリアはエネルギーとして特に脂肪を用いる。脂肪は動物が長距離を旅したり、狩りなどの仕事をしたり遊んだりする際の燃料となる。というのも、脂肪からはカーボよりも、燃料電池であるATPが多く得られるからだ。ミトコンドリアを持つ高等哺乳動物である我々が脂肪を摂取しなくてはならないというのは、生化学的に筋が通る。ミトコンドリア内におけるカーボ代謝では1つのグルコース分子から、36個のATP分子が得られるのに対し、脂肪代謝だと1つの脂肪酸分子から、48個のATP分子が得られるのである。同量の食べ物でも、脂肪の方がカーボよりも多くのエネルギーをもたらすのだ。だが、それだけではない。ミトコンドリアによる脂肪燃焼 ― ベータ酸化 ― の結果作られるケトン体は、脳のあらゆる病気に関係する過剰興奮や酸化ストレスを安定させるし、それはまた何と言っても、健康で生き生きしたミトコンドリアを生み出し、ダメージを与え炎症を起こす、過剰生産されたフリーラジカルを減らすのである!
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ミトコンドリアはアポトーシスという名で知られる細胞の自殺を調節している。このため、死ぬべき老化した機能不全の細胞が死んで、新しい細胞が後を引き継ぐ場所が出来るのである。しかし、ミトコンドリアが機能障害に陥って、正常な細胞に死ぬよう信号を送るようになると、これは最悪の状態だ。例えば、脳細胞が破壊される結果が、アルツハイマー病、パーキンソン病等々として知られるような神経変性の症状である。ミトコンドリアが機能障害に陥る結果生じる影響は、とても広範囲に及ぶ。というのも、ミトコンドリアの健康状態は、私達の体内の全ての細胞、組織、器官のそれを大きく左右しているからだ。

このような破壊が起るきっかけとなるのは普通、コントロール無しに生成されるフリーラジカルで、それが身体の組織、脂肪、タンパク質、DNAに対して酸化によるダメージを及ぼし;これらを錆びさせるのである。このダメージが酸化ストレスと呼ばれるもので、酸化コレステロール、動脈硬化(錆びたパイプ)、脳障害の根底にはこれがある。酸化ストレスは痴呆症、そしてまた自閉症の主な原因でもある。

私達の身体は、フリーラジカルの生成を阻止する抗酸化物質をも作り出すのだが、このシステムは毒のある環境と高カーボ食、すなわち、こんにちのライフスタイルと食事によっていとも簡単に圧倒されてしまう。

ミトコンドリアにはまた興味深い特徴があって、細胞内の他のどの構造部品からも異色の存在となっている。例えば、ミトコンドリアは独自のDNA(mtDNAと表記される。ミトコンドリアDNA)を持っている。これは広く知られている細胞核の中のDNA(n-DNAと表記される。天然DNA)とは別物である。ミトコンドリアDNAは大部分が母系に由来し、このためミトコンドリアは女性的な生命力とも見做されるのである。このmtDNAは環状に並んでいて、保護するためのタンパク質の覆いを持っていないため、その遺伝子コードはフリーラジカルの攻撃にさらされやすいのだ。あなたが十分に動物性脂肪を食べないと、ミトコンドリアの健康を保ち、それらの死を防ぐ、有効なミトコンドリアの膜を育むことができないのである。

もしあなたの体内のどこかに何らかの炎症があると、あなたのミトコンドリアはダメージを受ける。ミトコンドリアの機能喪失や死は、どんな病気でも多く起こる。食事や環境的要因がもとになって酸化ストレスが生じる結果、ミトコンドリアが傷つくという道を辿り、最終的には病気へと至るのが一般的だ。

自閉症やADHD、パーキンソン病、うつ病、不安症、双極性障害(躁うつ病)、脳老化は、いずれも酸化ストレスによるミトコンドリアの機能障害と関係がある。ミトコンドリアの機能障害は、鬱血性心不全、2型糖尿病、自己免疫疾患、老化、がん、その他の病気の一因となる。

nDNAは、細胞があなたの身体の代謝や修理、構造の健全性をコントロールするタンパク質をプログラミングする上で必要な情報を提供するのに対して、mtDNAは、あなたの生命エネルギーの生産と使用を指揮する。核やnDNAを持たない細胞でも、自殺(アポトーシス)することは可能なのだ。

機能する上で必要なエネルギーの大きい組織や器官の細胞ほど、ミトコンドリアを数多く持っている。ミトコンドリアにはエネルギーを生み出す役割があるからである。脳や筋肉、心臓、腎臓、肝臓中の細胞には、数千ものミトコンドリアが含まれていて、細胞の質量の40%にもなる。エンツォ・ニソリによれば、成人は10億の1億倍(10×1千万×10億)のミトコンドリアを持っており、全体重の10%にもなると言う。(原注9) 各細胞には、数百のミトコンドリアと数千のmtDNAが含まれているのである。


原注9: マシューズ・CM『あなたの内の聖なる女性性を育む』


「タンパク質」の被膜(ヒストン)を持たないmtDNAはnDNAのようには守られていないので、不安定化分子、中でも、有毒な農薬や除草剤、興奮性毒、重金属、揮発性薬品によって、非常に傷つけられやすい。この結果、フリーラジカル生産のバランスは極端に崩れ、ミトコンドリアやそのDNAにダメージを与える酸化ストレスが生じるのである。その結果、私達の細胞は過剰興奮や炎症を起こすが、これはパーキンソン病等の病気の原因となるだけでなく、気分障害や行動障害をも惹き起こす。

エネルギーが十分ある生活は、幸せで健康である。それはまた、思考の集中度合いや切れ味にも反映する。エネルギーが不足すると、特に気分障害や痴呆症になったり、精神機能が緩慢になったりする。ミトコンドリアは前頭前皮質 ― 私達の脳の隊長である ― が完全にオンラインで居られる能力と複雑に結び付いている。脳細胞には、学んだり記憶したり、ニューロンを調和的に発火させる上で必要不可欠なエネルギーを作るためのミトコンドリアが詰まっているのだ。

サーチュイン遺伝子(=長寿遺伝子)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A4%E3%83%B3%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90
はミトコンドリアを保護して、その健康と機能を向上させる。(原注10) これらは糖化作用のない、すなわち低カーボ食からは良い影響を受け、反対に、高カーボ食はミトコンドリアの機能障害や活性酸素種の形成を惹き起こすのだ。


原注10:アラン・R・ヒップキス『エネルギー代謝、変性タンパク質、サーチュイン遺伝子、加齢:これらのメカニズムが収束?』 


もう1つ、ミトコンドリアの機能障害の原因となるのは、ヘルペス科ウィルスのようなウィルスによる潜伏感染である。拙稿『ウィルスのような「ジャンク」DNA、DNAの機能を高めるケトン食、および彗星による始動について』
http://www.health-matrix.net/2013/01/27/on-viral-junk-dna-a-dna-enhancing-ketogenic-diet-and-cometary-kicks/
で述べたように、全部という訳ではないが、あなたの「ジャンク」DNAの殆どは、ウィルスに似た特性を持っている。もし病原性を持つウィルスに体内のDNAやRNAを牛耳られれば、病気やがんになるだろう。

単純ヘルペスウイルスは人々の間に広まっている病原体で、ミトコンドリアDNAを狙っている。単純ヘルペスウィルスは、病原体によるmtDNAのダメージに対し非常に敏感なタイプの細胞である、感覚神経に潜伏するのだ。(原注11) ウィルスの潜伏感染は、アルツハイマー病のような神経変性病患者に、脳細胞の喪失を惹き起こす。(原注12) 拙稿『心臓発作、CFS(慢性疲労症候群)、ヘルペス・ウィルス感染と迷走神経』
http://www.health-matrix.net/2013/08/06/heart-attacks-cfs-herpes-virus-infection-and-the-vagus-nerve/
において考察したように、ヘルペス・ウィルスに潜伏感染する結果、人々は予想以上の数の病気に罹っているかも知れないのだ。


原注11:H・A・サフラン&J・M・ペアー&J・A・コルコラン他『単純ヘルペスウィルスは宿主であるミトコンドリアDNAを抹殺する』

原注12:E・ポルチェリーニ&I・カルボーネ他『アルツハイマー病患者の遺伝子シグネチャーは語る:脳のウィルス感染に注意』


ヘルペス科に属するウィルス(すなわち、サイトメガロ・ウイルスとEBウィルス。殆どの人々はこれらに潜伏感染している!)は、私達のミトコンドリアDNAを狙うことがあり、ミトコンドリアを機能障害に陥れて、神経変性病を惹き起こす。しかし、ケトン食を食べていれば、mtDNAの安定化に役立つ。というのも、ミトコンドリアは脂肪を燃料にしているときがベストな状態だからだ。偶然にも、アルツハイマー病こそ、ケトン食が最も治癒力を発揮しうる病気なのである。(原注4)

私達の「現代」病に対してミトコンドリアの機能障害が果たす役割には驚愕すべきものがある。慢性疾患を治したければ、最適なエネルギー源を選ぶことが不可欠だ。私達の周りの環境から得られる食物と私達の身体の求めるエネルギーとのインターフェースがミトコンドリアなのだ。そして、動物性脂肪に基礎を置くケトン代謝こそ、私達のミトコンドリア内におけるエネルギー出力を最大化する後生的変化のための合図を送り、私達の身体を癒す代謝なのである。


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自分の身体がこんな風に反応するなんて信じられないわ。私はカーボを全く受け付けないんだと思う。私は長年過労に苦しんでいて、部屋を真っ暗にしてよく眠るようにしてもダメだったのよ。だから、朝目覚めるとすぐベッドから出て、這いずりまわることもなく、1日中ほとんど意のままに過ごせることがどれだけ素晴らしいかは、言葉では言い表せないわ。そしてまた長い事患っていた慢性の腸障害もついに解決した。職場の同僚2人が、「別人みたい」とコメントしてくれたわ。穏やかな気分で、プレッシャーを感じて興奮することも無くなり、ストレスともおさらばよ。計ってないけど、体重も少し軽くなり、間違いなく服も緩くなった。もう長い事お腹の肉がだぶついていて、腰をかがめて靴を履くのも諦めてたのにね!
― ブルーファイア、56歳、アメリカ、ソット・ドットネット・フォーラムより
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ケトーシスをもう少し詳しく見てみる

血液や尿の中にケトンが存在する状態がケトーシスだが、これは常にネガティブな状況として、飢えに関係があるとされてきた。ケトンが絶食中に生成されるというのは正しいが、ケトンはたっぷり食べている時にも生成される。ただし、炭水化物を豊富に摂取している時はこの限りではない。というのも、カーボ代謝がケトン代謝を抑えるからである。食事中に殆どカーボが含まれない時、エネルギーを供給するため、ケトンが脂肪から作られるのである。沢山の脂肪と充分なタンパク質を食べていて、とても飢えた状態とは言えなくても、このことは当てはまるのだ。

既に見たように、ケトン食は沢山の病気、特に神経疾患の治療に役立つことが証明されている。厳密に言えば、ケトン食というのは高脂肪食であって、身体が最低量のグルコースしか栄養源としないよう、炭水化物を完全に、あるいは殆ど取り除いた食事のことなのである。こうすることで、脳も、その他の臓器/組織も、必ず脂肪(脂肪酸)を燃料エネルギー源にしなければならなくなるのだ。もし、あなたのカーボ摂取量が多いと、インシュリン・ホルモンのせいで、あなたは結局、脂肪とカーボの両方を脂肪組織に貯め込むことになる。たまたまタンパク質もまたインシュリン分泌を刺激するものだが、ケトン食は高タンパク質食ではない。それは基本的に主として動物性食品、それも特に脂肪に依存する食事なのだ。


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最近、年に1度の血液検査を受けたわ(コレステロール等々)。結果を話す時ドクターは、健康そのものだ!と言ってた。それから彼は、素晴らしい「低脂肪で果物たっぷりの菜食」を続けるよう励ましてくれたわ。「頑張りなさい!」ってね。私は黙って笑ってたわよ。次に受診するときには、彼に私の食事法を話すつもりよww
― 1984、アメリカ、ソット・ドットネット・フォーラムより。
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脂肪を燃焼させる代謝の副産物の中でも、いわゆるケトン体 ― アセトアセテート、β−ヒドロキシ酪酸、アセトン ― は、主として肝臓で作られる。私達の身体が専ら脂肪をエネルギーとして動いているときには、大量のアセチルCoAが作られ、これがクレブス回路の能力を超えると、これら3つのケトン体が肝臓のミトコンドリア内で作られるのである。私達の血中のケトン体濃度が上昇すると、脳は直ちにそれをエネルギー源として利用する。ケトン体は血液脳関門をたやすく越えて行くのだ。ケトン体はまた溶解性に富むので、血液によって、他の臓器/組織へも容易に運ばれる。ケトン体がエネルギーとして使われるとき、アセチルCoAが分泌されるが、これは次にクレブス回路へと向かい、再びエネルギーを生み出す。

てんかんの治療のためにケトン食を与えられた子供は、ケトン食を止めた後も長期に亘ってけいれんに悩まされることがないものである。これが意味するのは、ケトン食が病気からの防護に役立つだけでなく、病気の振る舞いをも変えてしまうということで、こんなことはどんな薬でも無理だ。(原注13) アルツハイマー病では、ケトン体のレベル上昇と共に、記憶力が向上する。人々の脳は飢えることで、ついに最も必要な脂肪を受け取るのである!実際、全ての神経疾患がケトン食で良くなるのだ。


原注13:M・ガージオ、M・A・ロゴウスキー、A・L・ハートマン『ケトン食の神経保護および病気緩和効果』


ケトン食のご利益は早ければ1週間で現れ、3週間ほどのうちに徐々に大きくなって行く。遺伝子発現、特に代謝や成長、発達、ホメオスタシスに幾つかの変化が現れるのである。

脳の海馬はとてもストレスに弱く、この結果、脳細胞の喪失を招くことになる。海馬とは脳内の、記憶や学習、感情に関与している部分だ。偶然にもケトン食は海馬内でミトコンドリアを生成する遺伝子のコード化を促すため、より多くのエネルギーが利用可能になる。ミトコンドリアが増え、エネルギーが増えるということは、大きなストレスへの備えが増すのである。(原注14)


原注14:マーワン・マアルーフ、J・M・ロー、M・P・マットソン『カロリー制限、ケトン食、ケトン体の神経保護的特性』


幾つかの動物実験の結果、ケトン食によって海馬内のミトコンドリアの総数が50%増加し、脳内のATPが増えることが示された。(原注15) それ以外の動物を使った研究でも、ストレス一杯の刺激に曝された時、ケトン食を摂取している個体群は摂取していない対照群と比較して、海馬内の脳細胞間のコミュニケーションが60%もスムーズなまま保たれた(原注16) これはとても重要なことである。というのも、過剰なストレスの結果、海馬とその情報検索能力はダメージを受けることがあり、その結果、あなたは「上の空」になったり「そそっかしく」なったりし、あるいはまた前頭前皮質の思考や行動を管理する能力にも影響が出るからだ。


原注15:K・ニーレン、J・L・ベラスケス『Aldh5a1-/-マウスにおけるATP濃度及び海馬ミトコンドリア数に及ぼすケトン生成食の影響』

原注16:K・バウ『ケトン食の抗けいれんメカニズムの一部としてのエネルギー代謝』


ケトン食はまた、抑制性の神経伝達物質であるGABAのレベルも上昇させる。そしてGABAは、主要な神経変性症の根底にある過剰興奮ばかりか、不安症その他の気分障害を落ち着かせるのにも役立つ。ケトン食はまた、有毒な環境から過剰なフリーラジカルが生み出されるのを抑える、抗酸化のプロセスも促す。それはまた抗炎症のプロセスも促進する。

ケトーシスはまた、私達の細胞の中で「デブリ」のように振る舞って、細胞の適切な機能を妨げ、加齢を進めるタンパク質も掃除してくれる。(原注17) これは基本的に、オートファジー(自食作用)と呼ばれる作用によって行われる。この作用は、古くなってダメージを負った細胞成分をフレッシュなものと置き換えることによって細胞や組織の健康を守るものだ。この作用は変性疾患や加齢、がん、そして細菌感染からあなたを守る。ケトン食はあなたを若返らせるだけでなく、ウィルスやバクテリアの感染にも罹りにくくするのである。(原注18) これは大気圏上層部から侵入してくると思しき、不気味なウィルスやバクテリアによる感染症の数が増加し(原注19) (詳しくは『黒死病再考:ウイルスおよび宇宙とのつながり』参照)、
http://www.health-matrix.net/2011/05/11/new-light-on-the-black-death-the-viral-and-cosmic-connection/
http://takapachi1962.seesaa.net/article/278274552.html
私達を病気にさせる高レベルの放射能が蔓延している現状においては(詳しくは『デトックスするか死か:福島原発メルトダウンの放射性粒子に立ち向かうための自然放射線防御セラピー』参照)、
http://www.health-matrix.net/2011/03/19/detoxify-or-die-natural-radiation-protection-therapies-for-coping-with-the-fallout-of-the-fukushima-nuclear-meltdown/
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=60954194
まことに適切な対処法である。どちらかだけでも、ミトコンドリアの状態に対する悪影響から、以前よりも私達は病気に罹り易くなっている。しかし、ケトーシスによって、私達は最悪の事態に備えることが出来るのである。


原注17:PFフィン、JFダイス『ケトン体はシャペロン仲介自食作用を刺激する』
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902277205621680

原注18:J・M・ユク、吉森保、E・K・ジョー『自食作用とバクテリア感染症』

原注19:チャンドラー・ウィックラマシンジ、ミルトン・ウェインライト、ジャヤン・ナリカ『SARSの起源に関する手掛かり発見?』


ケトン食によってオートファジー(自食作用)を高めるのはとても大切な事だ。というのも、オートファジーのターゲットは、細胞内で発達する、非常に厄介なウィルスやバクテリアだからである。(原注20) 細胞内のウィルスやバクテリアはミトコンドリアに深刻な機能障害を惹き起こす恐れがあるが、ケトーシスはここでも断然有効な対抗手段なのだ。


原注20:ブライアン・ヨーディー&岩崎明子『オートファジー(自食作用)の調節とウィルス感染の病理』


(図)
ケトン食

a強力な証拠あり
心臓血管リスクの諸パラメーター
糖尿病
減量
てんかん

b証拠が蓄積中
にきび
神経疾患
PCOS =polycystic ovary syndrome、多嚢胞性卵巣症候群
がん

図の出所:アントニオ・パオリ他『減量を超えて:極低炭水化物(ケトン)食療法レビュー』(=原注4の文献)


断続的な絶食とケトン食によるケトン体の産出はミトコンドリアの機能障害に対する最も有望な処置である。(原注21) カロリー制限を行った個体の研究で見られる長寿というご利益は、私達の身体がミトコンドリア内での脂肪燃焼代謝にシフトするためなのだ。ケトン食を行うことで、私達はカロリー摂取量を減らさなくても脂肪燃焼代謝の状態に移行できるのである。


原注21:ダグラス・C・ウォレス、ファン・ウェイウェイ、ヴィンセント・プロカッチオ『ミトコンドリアのエネルギー特性と治療学』


ケトーシスは、主流派科学が推奨する、炭水化物の豊富な食事の抱える問題 ― とりわけ不安症、大食症、神経過敏、振戦、気分障害 ― の全てに対して有効だ。人々に高脂肪食の摂取を思い止まらせるのは犯罪なのである。というのも、ケトン食は人間や動物による実験で腫瘍を縮小させており、私達の脳のストレスや毒性に対する弾力性を高めるからだ。

ケトン食では、私達の身体が生来持っている精神安定剤であるGABAの生成が増加するのに加えて、アセチルCoAの生成も増えるのだが、この結果クレブス回路内でのNADH(還元型ニコチンアミド・アデニン・ヌクレオチド)の生成も増加する。このNADHは私達の体内における450以上の生体生化学反応で用いられ、その中にはDNA修復の際の細胞内信号伝達や支援が含まれる。ケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸は、ピルビン酸より多くのエネルギーを持っているため、より多くのATPを生成する。ケトーシスはまた重要な抗酸化物質の生産を高め、私達の環境内にあるグルタチオンのような有毒物質によるダメージを抑える。

ケトン食を与えた動物の海馬中のミトコンドリアはまた、mtDNAのダメージに対しても耐久性があり、不適切な時期に細胞が自殺するアポトーシスも滅多に起こらなくなる。

ミトコンドリア・エピゲノム医療センターの所長であるダグラス・ウォレス博士が述べているように、「ケトン食は複数のレベルで作用するようである:それは興奮性のニューロン活動を低下させ、生体エネルギーを生み出す遺伝子の発現を増加させ、ミトコンドリアの発生と酸化エネルギーの生産を増加させ、ミトコンドリアによるNADPH(エノイル-ACPレダクターゼ)の生産を増加させ、その結果、ミトコンドリアの酸化ストレスを減少させるのだ」(原注21)

ケトーシスに適応する結果、最適な膜構成(membrane composition. membrane -> "mem-brain(脳)")を作り上げ、維持するやり方が著しく変わるのだが、これは単に私達が食事から健康的な脂肪を体内に供給するためだけでなく、フリーラジカルや、炎症の仲介物質の生成が減ると共に、抗酸化物質の生成が増えるためでもある。これは実に理想的なバランスのとれた状態なのだ。

加えて、『ヒトの脳の進化:淡水および海産食物資源の影響』(原注22)という本から引用した以下の部分にも留意した方がいいだろう:


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人間の脳にとって、グルコースに代わる主要な燃料としてケトン体を用いる事には重要な利点が2つある。1つ目は、通常人間はかなりの体脂肪を蓄えているので、ケトンを作るための脂肪酸に不自由しないことだ。2つ目は、食料の入手が途絶えがちであるときに、脳のエネルギー必要量の一部をまかなうためにケトンを用いる結果、幾らかのグルコースが他の用途に解放され、グルコース合成の際の有害な筋破壊のリスクと、グルコースに依存している他の細胞すなわち、赤血球の機能低下のいずれもが大いに軽減されることだ。脳によるケトン摂取にはある興味深い特質がある。すなわち、新生児や幼児の方が大人より4から5倍、摂取が早いのだ。ゆえに、幼児の脳が効率よくケトンを利用するのは、ある意味、大人の脳よりも予備燃料をうまく使用できるからだと考えておそらく間違いない。幼児期に予備燃料として用いられるケトンの役割は重要だが、それは脳のための単なる予備燃料ではない ― それは脳脂質を合成するための主な材料でもあるのだ。

私は、ケトンを生成する能力は人間の脳の拡大と共進化してきたという仮説を立てた。この能力向上は、胎児および新生児が発育する間に、体脂肪中の予備の脂肪酸が増加することと直接関係がある。脳の大きさを著しく大きくし、しかも知的洗練さを著しく向上させるには、極めて長い間、すなわち、2百万年とまでは行かなくても、最低でもおそらく百万年くらいの間、確実で豊富なエネルギー供給が必要となる。当初のある時点まで、大きくなったヒトの脳に必要なエネルギーはグリコーゲンやアミノ酸からのグルコース化合物のような、グルコースや短期的な予備のグルコースによってまかなうことができた。より安定的で豊富な食料供給を得た後、ヒトの脳がゆっくりと大きく進化して行くに連れてさらに脳を拡大できたのは、多量の脂肪を蓄積でき、そのような脂肪庫内の燃料に迅速確実にアクセスできたお蔭だった。脂肪の蓄積は必要不可欠だったが、それだけではまだ不十分で、偶然にケトン代謝を行う能力が向上する必要があったのである。体脂肪内への抜きん出た燃料蓄積と、途切れることなくグルコースと置き換わることが可能な脳の燃料であるケトンが迅速かつ豊富に手に入るという事態が組み合わさった結果、人間以外の霊長類を含む、他の陸上哺乳類にはどうやら手に入れることができなかった、カギとなる予備燃料を得ることができ、ヒトの脳だけが大きくなったのである。
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原注22:ステファン・クネイン、キャスリン・スチュワート『ヒトの脳の進化:淡水および海産食物資源の影響』
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB07872936
http://www.gondo.com/cnn/news/010523-1.htm
http://www.dino-pantheon.com/backyard/paleoanthropology.html


ケトン食に私達の脳を守る効果があるのは議論の余地がない。ミトコンドリアの機能障害に対して有効であるという数多くの証拠からして、ケトン食はストレスが多く有毒な環境に住む私達全員に適用可能である。ケトン体は私たちが進化するのを手助けしてくれた、治療効果のある物体であるが、こんにちの有毒な世の中では私達に分が悪く、私達のミトコンドリアは常に何らかの形で破壊され続けている。このようにダメージを受けたmtDNAを持ち、あるいは生まれついての突然変異のために、代謝系を変更できない(すなわち、L-カルニチン代謝異常の)人々が出てくるのは明らかだが、そのようなケースでも更にダメージを受けるのを止め、あるいはスローダウンさせられる場合もあろう。健康に恵まれていた私達の祖先は、こんにちの私達が住んでいるようなレベルの毒性に対処する必要がなかった。それでも彼らは最適な食事をとっていたのである。こんにちの環境を考えると、せめて生理的に最適な食事をとる必要があるのだ。

私達の血流の中に治癒効果があるケトン体を循環させるには、高脂肪で、カーボは制限し、タンパク質を適度に含んだ食事をとる必要がある。ケトン体の生産量を増やす断続的な絶食と共に、より健康的なmtDNAを持ったミトコンドリアを作り出す筋力トレーニングを行うことで、私達は逆境に打ち勝つことができるのだ。

こんにち「普通の食事」だと考えられているものは、実際には巨大アグリビジネスや巨大製薬会社の利益を図ろうとする科学の堕落に起因した異常なものである。産業界や農業界が私利を図ろうとした結果、こんにちのような食事が普通となった、それ以前の時代に遡って調べてみれば、ケトーシスが通常の代謝状態であることが分かるだろう。こんにちの人間の代謝状態は常軌を逸している。今こそこれを変えるべき時なのである。
posted by たカシー at 13:52| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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