2017年08月13日

恋するエクソシスト − 「起こるかも知れないこと」の物語(上)

恋するエクソシスト − 「起こるかも知れないこと」の物語(上)
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/


トーマス・フレンチ
セント・ピーターズバーグ・タイムズ(現タンパ・ベイ・タイムズ)
2000年3月


プロローグ


これは、類まれなラブストーリーと言えよう。あなたがこれから読もうとしているのは、銀河/星々を舞台とした、愛と生まれ変わりの物語だと言っても誇張ではないだろう。1つの時代が黄昏を迎え、次の時代が黎明を迎えるさなかに展開した宇宙的ロマンスである。描かれているのは、全て実在の人物に起きた出来事だ。舞台はパスコ郡である。要点はこうだ:少年が少女と出会うというのは型通り。だが、この少女は他の女の子のようではなかった。少女の持つ能力と興味は普通では無かった ― これは控えめな言い方である ― だが、彼女は少なくとも表面上は、一般的な生活習慣に従って生きることを選択していた。少女は少年と結婚し、子どもを育て家族を成し、普通であろうと努めた。それでも長い年月の間に、いわゆる悪魔憑きや夜空に浮かぶ光る物体、その他、科学では説明できない数多くの体験を経た結果、少女は通常の考え方を全て捨てた。少女は、少年が全く悪いのだと確信した。おそらくは闇の勢力が、本物の夫のコピーと彼を置き換えたのだろうと。少女は少年/少年の邪悪なコピーと離婚し、すっかり絶望して、仕事に慰めを求めたのだが、なんと、その仕事というのは、悪と戦い、エイリアンの一団だと彼女が信じる実体たちとチャネリングで交信することだった。彼女に言わせれば、このエイリアンは、現代の恋愛の暗黒面についての知識を持って居るとのことで、彼らは少女に同情し、彼女のためにお見合いデートをお膳立てして。。。

おっと待った。ちょっと先走り過ぎたようだ。


第1章
エクソシスト、マスタープランを熟考し、ハリケーンの中、戸外に飛び出して母親に反抗
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist1-2.html

写真
[提供:ローラ・ナイト]
少女時代のローラ:カウガールの服装で、母方の祖父の新車のポンティアックに登ってポーズ。1956年撮影。

物語の始まり。エクソシストはまだ子どもだった。

これは、彼女が亡者や、物理体内に居たことの無いような実体に話しかけたりし始める何年も前のことである。この時の彼女はまだ自分が何者なのかも分かっていなかったし、世の中がしっくりこないという事実を受け入れてもいなかった。

結婚して5人目の子どもを産むや、人生の崖から飛び降りる羽目になる、というのも後の事。ビジョンに心を開くのも、名前を持たない実体と対峙して、彼らを永久の闇へと追い返すのも後の事。銀河の向こうの隅からもたらされる言葉を口述筆記するのも、息子を連れて、彼が前世を送った物理体が眠る墓を訪ねて行ったのも、窓ガラスから覗き込む顔や森の中の赤ん坊の夢について思案に暮れたのも、何年も宇宙の謎に関する思索に没頭するも、彼女自身の心以上に謎めいたものはないということしか結局発見出来なかったのも、後の事である。

こうした事があるずっと前から、ローラ・ナイトの探究は始まっていた。それが始まったのは、数十年前、彼女がフロリダ州の西海岸で、成長期を過ごした子供時代のことだった。その頃既に、彼女は好奇心を糧としていたのだ。丁度その頃、ローラの、怪物のような、驚くべき、英雄的な好奇心が芽生えたのである。幼い頃から彼女は、物事は乱数表に基づいて出鱈目に決まるというような考え方に甘んじるのを良しとしなかった。彼女は、宇宙にはきっと設計図=意味という基調を成すグリッドがあると思い、それを知りたがった。彼女は図書館という図書館の本を読み漁った。彼女は素粒子物理学に没頭した。彼女はフロイトとユングを熟読した。彼女は新約聖書を原文で読むためにギリシャ語を勉強した。彼女は、物事の潮流を、元素周期律の言語を、ベートーベンの月光ソナタの魅力的な和音進行を理解したがった。

だが、これらを理解しただけでは十分でなかった。ローラは単なる理解だけでなく、体験することを渇望した。

それである日、彼女は嵐の中へと乗り出して行ったのである。

これは1966年のことで、ハリケーン『アルマ』がメキシコ湾に暴風雨をもたらしている最中だった。この時ローラは14歳、パスコ郡北部のハドソン郊外にある、海岸から800mと離れていない農場に家族と一緒に暮らしていた。アルマのせいで、波が山のようになっているとラジオで聞いていたローラは、波の荒々しさを自分の目で確かめたかったのである。ローラは、浜辺に連れて行ってくれるよう母親にせがんだが、ダメと言われてしまった。


写真
[提供:ローラ・ナイト]
1959-60学年期、タンパのブロワード小学校2年生のローラ


当時を振り返ってローラが言うには、その日の午後遅く、彼女は行動を起こした。彼女の母親は、クロスワードパズルを解きながら、居眠りをしていた ― 当時を振り返ってローラは、「大変な眺めが見られたこの日に、この女性はなんと世俗的な作業を行っていたのだろう」と、今でも驚いてみせる − そこでローラは双眼鏡を掴むと、戸外に抜け出した。彼女が目指したのは、お気に入りのクスノキで、これまでもメキシコ湾を覗くために、よく登った木だった;彼女が今考えていることをするのに理想的な場所だったのである。雨風の中、前のめりになりながら、彼女はこの木に向かってゆっくりと前進した。泥と瓦礫の海の中をよろめきながら進んで行く。彼女の周囲には、はっきりとオゾンの臭い ― 土くさい刺激臭で、殆ど硫黄のような臭い − が漂っていて、アルマがここに居るのが分かる。


写真
[提供:ローラ・ナイト]
タンパの母方の祖父の家の前で。ローラ13歳


ようやく木に辿り着くと、いつもの見晴らしのいい場所まで、彼女は登って行った。3本の枝に分かれているこの場所は、地面から9mほどの高さがあり、頂にほど近い自然の揺り籠となっている。中にグッと入り込んだ彼女は、大渦巻の中心に身を置くことになった。クスノキは荒々しく揺れ;風はヒューヒューと叫び;雨粒は彼女の圧力を感じるくらい目の中にガンガンと入って来て、口にも入り込む。雨でびしょ濡れの双眼鏡越しに西の方向を見ると、メキシコ湾内一面に、黒い波が渦巻いているのが辛うじて見分けられる。

ローラは内心平静を保とうとする。家から出て来た時、彼女は幾らか恐ろしかった。だが、今の彼女は怖れを越えた高みに達していた。ハリケーンが彼女と、可視界の全てを飲み込み、揺り籠の中の彼女を揺さぶるうち、彼女は完全な穏やかさと圧倒的な爽快感が混じり合った、高揚した気分になっていた。彼女は台風の目=カオスの中の意識となっていたのだ。彼女は死のうとも怖くなかった。

その瞬間、ローラの人生における疑問 ― その後の年月も長く抱き続けることになる疑問 ― が、はっきりと浮かんできた。ハリケーンの中に思い切って出て来たのは、勇敢な行動なのだろうか?それとも、馬鹿げた行いだろうか?彼女の中に何か素晴らしいものがある証拠だろうか?それとも、少しおかしな何かの初期的な兆候だろうか?

ローラには、このような疑問について考えている暇は無かった。彼女は激しい嵐の中に飛び出してきたのだ。彼女は目に入った水をぬぐった。彼女は自分の中に恍惚感が押し寄せてくるのを感じた。彼女は暗い空に顔を向けて、自分には歯が立たないパワーと恩寵と栄光に身を任せた。

* * *

他にも疑問はある。

嵐の中に出て行きたいという人々には、何が起こるのだろうか?この風(※ウェイブ)は彼女を、どこに連れて行くのか?風は彼女をバラバラにしてしまうのか?それとも、雲の上の何処かへと運ぶのだろうか?彼女と近づきになった者はどうなのだろう?嵐は、彼(ら)には手を出さないのだろうか?それとも、彼らもまた吹き飛ばされてしまうのか?

ローラは既に答えを見付けている。少なくとも、彼女なりの答えを。彼女の残りの人生の在り様の詳細の中にそれはある。これから私がシェアしようとしている説明の中に、その答えがあるのだ。


写真
[提供:ローラ・ナイト]
生まれたばかりの赤ちゃん:生後1か月になったアリエルを抱くローラ。1989年9月撮影


実は、間を空けながらも、私がローラを取材して5年になる。彼女と出会ったのはクリアウォーターで開かれていた、UFOやエイリアンとの遭遇に興味を持つグループのミーティング会場でだった。私はキャリアの大半において、リポーターとして期待されるような物語を書いてきた。法律家や教師、警察官についてである。このミーティングに出掛けたのは、気分転換のためだった。私は別の類の人=普通でない誰か=違った誰かを取材したかった。そんな彼/彼女がおそらくそこに居るだろうと思ったのだ。

私はそれまでローラの名前も聞いたことがなかった。偶然にも彼女は、ゲストスピーカーとしてそこに居たのである。もし私の参加したのが、別の日のミーティングだったら、彼女とは出会っていなかっただろう。私はこれを偶然と呼ぶが、ローラは違うだろう。

グループの前で、彼女は自分の物語の基本的な内容を説明した。彼女曰く、自分はサイキックであり、チャネラーであり、また、エイリアンにアブダクトされたと言って来る人々に施術するヒプノセラピストである;自分はエクソシストでもあるという彼女の言葉は、殆ど付け足し=ちなみにという感じだった。これだけでも相当なものだが、さらに彼女は、ニューポートリッチーにある彼女たちの家の上空を飛んで行く2機のUFOを子どもたちと一緒に見たと言ったのである。

聴衆の中に座っていた私は、聞いている話を理解しようと努力していた。私が最も衝撃を受けたのは、彼女の話す物語ではなくて、彼女という女性そのものだった。彼女は誠実で賢く、ユーモアがあり、大いに好ましい人柄だった。彼女は、自分の話の全てを理解するよう求めなかった;守りに入る気配を見せるという風でもなく、自分がぶっ飛んでいると認めたのだ。自分でも、どこまで信じていいのか分からないと言う。

「これまでも、そして、これからも、こうした事について、私は懐疑派であり続けるつもりよ」と彼女は聴衆に語った。「それでも、正しい方向に向かっているという気はするわ」

あの日以来、もう何年にもなるが、私は繰り返しローラにインタビューを行い、彼女に付き従ってUFO総会に行き、彼女が銀河系内の他の恒星系に棲む実体とコミュニケートを試みるチャネリングセッションの幾つかに同席した。それでも未だに私は、彼女をどう理解すべきか分からないのだ。ローラが、彼女の身に起こったと主張することの多くは、衝撃的で、奇妙で、不穏どころではなかった。私自身も、それに続く場面を目撃してしまったような場合には、それに関する説明の殆どは、ローラの記憶や言葉、知覚に頼るほか無かった。読み進められればお分かりになるが、そうした事の全てには議論や解釈の余地が大いにある。

ローラが本物のサイキックかどうか、私には分からない。彼女が実際に悪魔と対峙したり、地球外生命体と話したことがあるのか証明しようにも、どこから手を付けていいのか分からないのだ。実際、彼女が自分の人生について語ったことの多くは、彼女の作り話かも知れない。私には本当とは信じられないのだ。ローラとは長い付き合いになるので、彼女の誠実さについては十分信頼しているのだが、彼女が本当に自宅の上空に2機のUFOが飛来したのを見たかどうかは分からない。彼女が見たと思っているのは確かだ。

だが私がここで述べる物語は、亡者の霊や悪魔やUFOについて語ろうとするものではない。当初から私はこれを、1人の女性が、不可知なるものを受け入れ、手の届かない何かを探し求めようとする物語として見てきたのだ。

私たちの多くも、実は自分なりのやり方で似たような探究を行っているものだ。例えば物理学者は、宇宙の起源について理解しようとして労を惜しまない。彼らが到達した、これまでのところベストな説明はこうだ。すなわち、元々は空虚しかなかったのだが、やがてある瞬間に、宇宙の全物質 ― こんにち存在して居る私たちの身体や、地球、太陽、全ての恒星系、全ての銀河 ― が、凄まじい爆発の結果、突如として出現するに至ったのだ。これが彼らの理論である:ある時までは無だったのが、次の瞬間には全てが生じたという。

個人的には突飛かつひどく不満足なものだと思う。かといって、これが正しくないと言い切るつもりもないのだが。

何百万というアメリカ人が、毎週日曜日に教会に通い、2000年前に生まれた1人の男=神なる父と、人間である母親との間に生まれた息子についての物語に思いを巡らせる。この物語によると、この男は長じると、死者を生き返らせたりといった数々の奇跡を行い、ついに33歳の時、拷問され殺されたのだが、やがて墓から起き上がると、天に居る父神の元に戻ったという。その時以来、この神の息子の血を象徴するものを飲み、肉体を象徴するものを食べるのが、この物語の信奉者たちにとって最も神聖な儀式の1つなのである。

私はこの物語を信奉する人々をディスるつもりはない。私自身も、この信仰の内側で育ったし;子ども時代のカトリックの教義問答のクラスでは、聖体拝領は象徴でなど無く、毎週日曜のミサで私たちは本当にキリストの身体を食べるのだと教わっていた。

それにしても、何ともワイルドな物語である。

ローラが受け入れた「起こるかも知れない事態」は、これと比べてどれくらいワイルドだろう?あなたが魂の実在を信じるのなら、霊たちが私たちの周りを徘徊しているという考えの方がずっと受け入れ難いと思うだろうか?地球上での生命の進化について学んだ内容を踏まえたとき、生命は他の惑星で生まれて、他の恒星系で進化し、そのような生命体が実は近所に紛れ込んでいるという風に考えるのはどれほどの飛躍だろうか?


写真
ノーマルとパラノーマルが混じり合った生活:最も苦手な雑用である家族7人分の洗濯に取り組むローラ。1995年11月撮影。


全然違う/大いに飛躍しているとは誰にも言えまい。

私たちは皆、不可知なるものに惹き付けられる。謎は食べ物や水のように、私たちを生きながらえさせてきた糧なのだ。謎あればこそ、私たちはベッドから起き出し、何かに取り組む。謎こそが私たちの人生に深みと風合いと意味を与えるのである。

だが、ローラが行っている探究は明らかに全く違うレベルだ。エイリアンの存在を受け入れたがっている人は多い;だが、ローラのように、リビングでの即席の交信術会で彼らとチャットしようとする人は殆ど居ないだろう。

彼女と一緒に行動する機会を持ち始めるや私は、彼女が答えを求めて行う探究が彼女とその家族にとってどんな意味合いを持つのだろうと、考え始めていた。彼女に起こる事、彼女が体験した事、体験したと思っている事によって、彼女たちはどこに導かれるのだろうか?

そうしたければ、ローラが見たと信じているものを疑えばいい。彼女の出した結論、そこに至る論理、彼女の精神状態を疑えばいい。しかし、ローラ自身もまた実在の人間であることを知って欲しい。彼女は運転免許証も持っているし、税金も納めている。彼女には家族が居る。そして私たちの多くと同様、彼女は単に、彼女自身や彼女の生活、世界における彼女の居場所が持つ意味を理解しようとしているだけなのである。

それが彼女の物語なのだ。

以下は、このエクソシストが木の上から降りて来てから起きた事の物語である。


第2章
ローラ、バラに水をやり、闇の勢力につき熟考し、神と対話
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist1-2.html

夜が明ける直前に、1羽のモッキングバードが家の裏の森から、早くも鳴き声を上げた。彼女が手にしているカップからは、クリームをたっぷり入れた濃いコーヒーが香る。ありがたいことに、隣の基地外ヤギはまだ起きる気配が無い。

ローラは、もう妊娠7か月目だと思いながら、庭をゆっくりと歩いて行く。静かな早朝の空気を吸い込むと、日が昇るのを待ちつつ、彼女はバラに話しかける。

「ハロー」。ありったけ優しい、なだめるような声で、彼女はバラにこう言うのだ。「私が恋しかった?」

ローラは庭で過ごす、このひと時を大事にしている。彼女の夫のルイス・マーチンは、製材工場での仕事の準備に忙しい。彼女の4人の子どもたちは、まだ家の中で眠っている;彼女の5人目の子どもは、彼女の子宮の中で静かに泳いでいるところだ。隣家の山羊というのは、巨大な角を持ち、血走った眼をした4本足のテロリストで、自分の進路に入って来た相手を突くのが大好き。すっかり日が昇ってから、最初の奇襲攻撃を行うのが常だった。

こうした事情が相俟ち、夜明け時こそ、ローラが自分のための束の間の時間を過ごす絶好のチャンスなのだ。それで彼女は毎朝5:30には起床してこっそりと外に出、花の世話をしながらコーヒーを飲んで、思索に耽るのだった。

1989年の夏のことだった。ローラは家族と共にハドソン郊外の農村地帯に住んで居た。少女だった彼女が木に登った家から、そう遠くない場所だ。彼女は今37歳。眼光鋭い緑色の瞳。腰のあたりまで伸ばした、豊かな茶色の髪。たえずより奥深い何か見つけようと探る、正直な顔。彼女は自分が何を探し求めているのか、はっきりとは分からなかった。確かなのは、理解しなくてはという、やむにやまれぬ必要性を内心感じていることだけ。少女時代に彼女を突き動かしたのと同じ好奇心だ。ただ、その頃と違うのは、名状しがたい空虚さ=彼女の生活の中の何かが正しくないという漠然とした感覚が、今は伴っていることだった。

結婚後数年するうち、ルイスは彼女が人生を共に過ごすべき相手ではなく、他の誰かがどこかで彼女を待っているのではないかという思いが、時折ローラを苦しめるようになった。そんな気持ちは馬鹿げた、女学生が抱くようなロマンチックな空想だと、彼女は自分に言い聞かせたが、この思いはしつこく去来し、彼女の脳裏にこびりついて離れなかった。

ローラはお腹の中の子どもが育つ様子にワクワクしていた。この興奮に浸っていると、結局万事大丈夫なのだろうと思えてくるのだった。単に赤ん坊を身ごもっているのではない、と彼女は自分に言い聞かせた。この妊娠は、彼女自身が新たな生活を迎えるチャンスなのだ。

ローラの人生には、既に随分と多くの事が起きていた。彼女はタンパと、例の木がある祖父の農場で育った。彼女の父親は、家族で経営するドラッグストアで働いていたが、彼女が生まれる前に家族を捨てて出て行った。そのため、彼女の母親は帳簿係として働き、ローラと彼女の兄のためにベストを尽くした。離婚後、一家は方々に引っ越したが、母の実家や、親戚の誰かの元に身を寄せることもしばしばで;その後数年の間に、彼女の母親は4度、結婚と離婚を繰り返した。

ローラは自分の居場所を見つけるのに懸命だった。彼女は早熟で ― 彼女の母親によると、ローラは3歳の時には読み書きができたという ― 学校の成績が良かった。それどころか、ローラは学校など楽勝だと思っていた。学外でありったけ読書していたので、わざわざ宿題などしなくても、成績優秀だったのである。しかし、成長するに連れて、彼女は苦労を感じるようになった。他の同年代の子どもたちは、フットボールの試合や壮行会に夢中だったが;放課後の彼女は、歴史書を読み漁ることに刺激を感じていた。皆は土曜の夜のデートの相手を探したがったが;ローラは生化学の基礎を理解したがった。

ローラの母、アリス・ナイトはそんな彼女が心配だった。そこで彼女はローラを精神科医のもとに連れて行った。医師は何回かローラを診察し、幾つかテストを行うと、ローラと母親、そして学校のカウンセラーに診断結果を伝えた。

「彼女が問題なのではありません」。ローラと母親は、医師の言葉を覚えている。「実際に問題なのは、彼女が、この部屋に居る私たちの誰よりも、そして教師全員よりも、賢いことです」

だが、問題はそれだけではなかった。少女の頃から、ローラは自分が根本的に皆と異なると感じていた。彼女には、普通の人には分かる筈がない事が分かるという自覚があった。彼女は人々の心を見通し、彼らの本質を感じ、彼らの生活の中でエネルギーが使われるパターンを読み取ることができたのだ。彼女が見る奇妙な夢は正夢となるらしく;近所を歩いていると、通りかかった家々の中で起こっていることの一端を、彼女は見、聞き、嗅いでいるように感じた。

後に娘からこのことを聞かされた彼女の母親は、娘には天賦の才があると認めたものだった。

「彼女には、いわゆる第六感があったわ」とナイト夫人は振り返る。「彼女には他人のことが分かるのよ」

ローラと母親にとって、これは圧倒的過ぎる能力だった。他にも、遥かに恐ろしいエピソードがある。3歳のある日、ローラは何かが起こりそうだという感じがして昼寝から目を覚ました。戸外の砂利道を近づいて来る足音を聞いた彼女は、押し入れに駆け込むか、ベッドの下に潜り込むべきではないかしら、と思った。すると、彼女が身体を動かすより早く、奇妙な顔が寝室の窓に現れた。それは大きなトカゲのような顔だった。心の中で、彼女は顔が話しかけてくる声を聞いた。

「隠れようとしても無駄だ」。顔は彼女に言った。「然るべき時が来たら、我々はお前を見つけ出すだろう。お前がどこに行き、何をしていようとな」

ローラの子ども時代には、似たような出来事が続いて起こった。ある時は、彼女の寝室の窓が空いているのが見えたのだが、それはまるで、何かが彼女を取り殺そうとしているかのようだった。またある時は、ハッとして目覚めるや、1つのビジョンが見えたのだが、その中には恐ろしいクリーチャーども ― 窓に見えた顔とそっくりの、トカゲタイプのクリーチャー ― が、出て来たのである。この連中は彼女を森の中に連れて行ったのだが、そこで彼女が見せられたのは、両手足を切断された赤ん坊の死体が眠る浅い墓穴だった。クリーチャーどもは彼女に対して、お前をこんな風に始末するのはた易いことだと警告した。

ローラが母親に対して、これらの出来事を話すと、母はバカじゃないの、と言った。

「単なるあなたの想像よ」とナイト夫人。

ローラ自身は、これが本当にあったのだと信じたかった。だが、大きくなるに連れ彼女は、これらの瞬間に見えたものは、単なる白日夢、自分の空想の産物だったのだと、自らに言い聞かせるようになった。ローラはこれらの出来事について、他の誰かに、特に大人に対しては話すのを止めることを学んだ。それでも、こうしたエピソードは終わらなかった。彼女がヒルズバラ・コミュニティ大学に入り、ルイスと出会い、彼と結婚して、家庭を築くようになっても、それは続いた。

普通であろうとして、ローラはベストを尽くした。最初の2人は娘、次は息子、その次は娘と、彼女は子供を産んでいったし、その合間には家計の足しになるよう、様々な仕事に就いた。彼女は教会に通っていたし ― ローラはメソジスト派で育てられたが、今は夫のルイスと共に、ペンテコスト派の教会に通っている ―、庭を手入れしたり、食料雑貨を買ったり、家計の苦しさを嘆いたりと、他の主婦と同じようにして暮らしていた。

だが、いくら懸命に家事に打ち込んでみても、ローラは世間的な物の見方に馴染めなかった。依然として彼女は、子どもの頃と同様、世界を違った風に見ていたのだ;未だに神話学や天文学のあらゆるテーマを読み漁って、答えを探していた;未だにミステリアスで奇怪な体験に悩まされていた。

夜中にベッドの中で目覚め、部屋の中に自分とルイスの他にも何かが居ると感じることも度々だった。こうした出来事の後、彼女はしばしば病気になった。耳の感染症などの病気が悪化したのだ。時折、家の一部の温度が奇妙に寒くなることもあった。彼女の周りではガラス製品が壊れた。彼女が動揺したり驚いたりすると、手も触れないのに壊れるのだ。コップやランプ、ベッドの上の窓ガラス、友人の新車のBMWの窓ガラスまでが割れた。

そんなある夜、こんなことがあった。夫の隣で目覚めると、家が白い光を浴びているのだ。彼女はまだ夢うつつの状態で、これは何でもない、単にピックアップトラックの一団が、窓越しにヘッドライトを照射しているんだろう、と自分に言い聞かせた。彼女は再び眠りについた。だが、翌朝目覚めて見ると、彼女は上下逆さまになっていた。頭が脚の所に、脚が枕の所にあったのだ。まるで、外を歩いてきたかのように、彼女の寝巻の裾はびしょぬれで、雑草が付いていた。

ついにローラは、自分が決して普通でなどあり得ないという事実を受け入れることにした。彼女が他の皆と同じようなら、人生はずっと簡単だっただろう。だが、それは叶わぬ望みなのだと、今や彼女は悟ったのである。この時、彼女は新たな方向に心を開いた。憑依霊解放や悪魔祓い(エクソシズム)を行い始めたのである。。。

「あら、嫌らしい虫がついたわねえ」。庭に群れ咲くバラの葉を見詰めながら、ローラは言った。「すぐに取ってあげましょうね」

彼女は、夜明けの戸外が好きだった。朝日が木々の間に広がって行き、未だ草の上には露がついている、このひと時、彼女は花の世話に没頭できた。近くをハチがブーンと飛ぶ音を聞き、ハチドリが花々の上の空中に浮かぶのを見ていると、彼女はこの世界にはバランスが存在していることを思い出す。彼女はユリの花 ― スズランやデイリリー(◆ユリ科の多年草で、主に鑑賞用だが、食用としても使われる)、
カップと受け皿のようなその花の形 ― や、目の覚める黄色の壁のように咲き乱れるマリゴールドに憧れた。でも、バラが彼女のお気に入りだった。バラはとてもデリケートで、彼女に時間と手間をかけるよう求めたので、子どものように思えたのだ。彼女は寝室のすぐ外、家の東側でバラを育てていた。夜にはバラの香りが彼女を眠りに誘った。

ローラは、森に囲まれた、この家での生活を愛していた。だが、つい先頃彼女は、驚くべき予言を受信した。彼女はウイジャボードを持っていて、それをいじりながら、祖父母が亡くなった今、近傍にある彼らの農場をどうしたらいいかと尋ねたのである。彼女が指を、プラスチックの小片に滑るようフェルトが貼ってあるプランシェットの上に置いて質問をすると、見る間にプランシェットが前後に滑って、ボード上に配列されたアルファベットの文字列をなぞって動くのだ。一文字ずつ、彼女には答えがもたらされる。さて、お告げによると、彼女は祖父母の地所を売りに出せとのことだ;生活がまた変化するのにも備えよという。彼女の一家は引っ越すだろう、とボードは告げる。彼女たちはモンタナに行くだろう。

ローラには分からなかった。彼女は人生の殆どをフロリダで過ごして来たのだ。だが、ボードは執拗に勧める。

“M-O-N-T-A-N-A”とボードは綴った。

ローラは必ずしもこの考えに反対ではなかった。おそらくモンタナはいい所だろう。だが彼女は、とりわけ5番目の子どもが生まれようとしている人生のこの時期にこうも思い切った引っ越しをするなどということは考えられなかった。彼女は庭を歩き回り、お腹の赤ん坊を感じながら、自分の身に起こった全ての事を振り返りつつ、どういう意味があるのか理解しようとした。彼女は自分の行く手に待ち受ける事々に思いを致した。多くの可能性、蓋然性、僅かな可能性が、現実になろうとして戦っていた。

彼女は繰り返し、まだ何かがある、何かをしなくては、という気持ちに襲われた。子ども時代から彼女は、何ごとであれ彼女に起こることには隠れた意味があり、彼女には見えないようになっている計画が存在しているのだろうと感じていた。今や彼女はそう確信した。彼女が学び体験した全ての事は、たとえ恐ろしいものであろうと、成就されるのを待っている、ある役割の土台を形作るものだったのだという確信が高まるのを彼女は内心感じていた。

でも、自分の役割とは何だろう?それが分からない苦しみは耐え難いものだった。

彼女は、神からうまいことそれを聞き出そうとした。毎朝バラに囲まれながら、ローラはどうか計画を説明してくれるようにと神に頼んだ。期待は裏切らないから、と約束した。もし、答えを教えてくれたら、彼女は最大限に努力するだろう。彼女は誓った。だが、彼女はどうしてこのような人生を歩んで来なければならなかったのかも知りたかった。どうしてあれほどまでに学ぶよう駆り立てられたのか?一体どうして、彼女の心中ではああした思いの全てが駆け巡らねばならなかったのか?どうしてこうも虚しく感じるのだろうか?結婚のせいだろうか?それとも、彼女はどこか具合が悪いのだろうか?

教えて欲しい、と彼女は言った。神様、もしあなたが存在し、私がここに居ることに理由があるのなら、それは何か教えて頂戴。道筋を示して。次はどちらに向かうべきなのか、どうか教えて。

* * *

ローラの家には始終モーツァルトの音楽が流れている。テープデッキで再生された彼の楽曲は、スピーカーから流れ出て、高温域に達したかと思えば、急降下し、200年前に亡くなった、この男の歓喜の旋律で聞く者をお構いなくからかう。

ローラは最近、しょっちゅうウォルフガング・モーツァルトを聞いている。彼女はお気に入りの作品 ― アイネ・クライネ・ナハトムジークや魔笛からの抜粋 ― を集めたテープを作り、午後、家事をしている間じゅう、それをステレオでかけている。テープに合せてハミングしたり歌ったりしながら、ベッドメーキングをしたり、皿を洗ったり、赤ちゃんに授乳したりするのだ。

赤ちゃんは女の子で、アリエルと名付けられた。

神と庭で会話したほんの数か月後だったが、ローラはこの上ない喜びに浸っていた。僅かな可能性はもはや可能性ではなかった。今、それは生を得たのだ。

最初に起こったのは、ローラが神について、ある理解に達したことだった。彼女は、彼から答えを引き出そうとしても意味が無いという判断を下した。神が彼女のために何かを計画しているとしたら、計画上然るべき時に、彼は彼女にそれを示すことだろう。

その一方で、ローラは十分すぎるくらい忙しかった。赤ん坊の世話だ。アリエルがこの世界にドラマチックな登場を果たしていた。ある8月の夕方早く、ローラの陣痛が始まり、深夜過ぎまで彼女が奮闘すると、医者は帝王切開を行った。だが、痛みは十分に報われた。娘は美しく、ローラはついに彼女を抱っこ出来たのだ。

他にもやるべき仕事があった。5人目の子どもが生まれると、ローラとルイスは、もっと大きな家が必要だと判断した。ローラはニューポートリッチーの中心から遠くない所に、1つの物件を見付けた。それは内装が壊れていた ― 「修理できる方にお勧め」と不動産屋の広告には書かれていた ―が、大きな庭と5つの寝室があった。

ローラはワクワクした。彼女はこれこそが新しい家だと直観した。

ここに住まなくては。彼女は自分に言い聞かせた。何が彼女に起きるにしても、ここから始まることだろう。彼女はそう感じた。

1つだけ、ローラが最初にこの家を見つけた時、彼女の印象に残らなかったことがあった。彼女とルイスがそれを購入するまで、考えてもみなかったことが。

この家はモンタナ通りにあったのだ。

※家の写真


第3章
ナチス兵が通りに 巨大なブーメランが空に
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist3.html


「忌々しいライト(信号)ね。早く変わって頂戴」とソファーの上の女性は言った。

この女性の目は閉じられ、伸ばした身体には毛布が掛けられていた。毛布の上で曲げられた両腕が微かに動いている。彼女は、自分が未だ車のハンドルを握っていると思っているのだ。

1mほど離れたイスに座っているローラには、何のことか分からなかった。

「何ですって?」

「信号が青に変わるのを待ってるのよ」と女性は言う。突然、彼女の声音が変わった。「おお、パトリック!あなた、何したの?」

何か問題が起こっていた。ローラは女性と一緒に、ある日の出来事を順々に振り返っていた。ローラがこの女性に、目を閉じてゆっくり呼吸するように言うと、女性は催眠状態になって、ターンパイクでの夜に戻って行った。彼女は、ローラに出来事を一通り話していた。未だ催眠状態の彼女は、映画のシーンを振り返るようにして、今一度話を繰り返した。

女性は、ティーンエイジャーの息子パトリックと、ピッツバーグ(◆米国ペンシルベニア州)
での葬式から戻る車中に居た。雪が降っていた。霧が立ち込め、道路は凍結していた。2人は路面が、これよりましかも知れないと思い、別の高速道路に迂回することにした。やがて、広告板の前に信号が見えてきた。信号は青で、青色の楕円形のライトが広告板の前にぶら下がっているのだが、これでは意味がない。女性は自分の空想の産物だろうと思って目をこすったが、甲斐は無く、信号は無くならなかった。それどころか、益々大きくなって来たので、彼女はパトリックにも見えるか訊いたのだが、彼には見えないらしく、電気がどうだとか言うばかりだった。すると、彼女は何かにクルマのコントロールを奪われるのを感じた。もはや彼女は運転しておらず、他の何かにコントロールされるまま、益々大きくなるライトへと向かって行く。

そこで場面がスキップする。

突如として場面が変わり、彼女と息子はどこかの道路を走っている。彼女たちが今走っているのはウェーンズバロという小さな町で、それは高速から外れた、メリーランド州境のすぐ北にある。何かが起こったのだ。走行距離計は80キロメートルを指しているのだが、どうやってそんなに走ったのか、2人には分からなかった。気が付くと2人は、ウェーンズバロにある信号機の前に居たのだ。女性がハンドルを握ったまま、信号が変わるのを待っていると、助手席に居る彼女の息子は、葬式で誰かにもらったクッキーの缶を開けようとしている。ところが彼が難儀しているので、彼女はダッシュボードの小物入れに折り畳みナイフがある筈だと教えた。ナイフを取り出した彼は、クッキー缶を開けようとして、手を切ってしまう。今、彼は血を流している。信号待ちをする2人。パトリックの手から血が流れている。

「えっ、パトリック!」女性が言う。「何やってるの?後部座席にタオルがあるでしょ。取って」

イスに座ったまま、ローラはこの女性を注意深く眺めている。ローラの友人の1人であるフレディー・アイアランドもまた、彼女を注視しつつ、部屋の隅から、この催眠セッションの様子をビデオに撮っていた。


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気紛れな霊を探して:ソファーに横たわるフレディー・アイアランド。写真手前のスーザン・ビターレから憑依霊解放を行うローラの霊媒となっている。1995年撮影。ヴィオレッタ・ゲインが傍らからローラに助力している。この憑依霊解放はニューポートリッチーにあるローラの母親の家で行われた。「子どもの前ではできないのよ」とローラは言った。


ここの所で、女性は動揺した。息子が手を切ったせいだけではない。彼女は何かに動転している。彼女の息使いが速くなった。彼女は腕を上げて胸の前で組んだ。何かから身を守ろうとしているようだ。

ローラは女性に、万事順調だと言った。彼女も息子も安全であることを思い出させようとしたのだ。だが、彼女たちは最初の、ターンパイクの所まで戻らねばならなかった。やり直しだ。

「もういっぺんやりましょう」。ローラは言った。「今度はもう少しゆっくりね」

1993年4月15日火曜日の晩のことだった。ローラとフレディーと被験者は、ニューポートリッチーのモンタナ通りにある、ローラの家の居間でワークを行っていた。外は嵐だ。家の中は静かで、聞こえるのは、慰めるようだがしつこく質問を繰り返すローラの声と、混乱して神経が高ぶった、被験者である女性の声だけである。時折、一家が飼っているオカメインコがさえずる声と;フレディーがローラに何か囁く声が加わった。

もっと質問するんだ。フレディーはローラに、この女性にもっと多くの質問をするようにと言った。フレディーはかなり興奮していた。彼は興奮すると、少々強引になるところがあった。ローラは気にしなかった。彼女はフレディーを尊敬していたし;2人の間には、強引さは大目にみるという不文律があった。

2人はただの友達ではなかった;彼女たちは宇宙の謎の解決に取り組む、宇宙の探検者だった。臆病にしていては何の成果も得られない。

この夜は、彼女たちしか家に居なかった。ローラの子どもたちは ― もう3歳になっていたアリエルも含めて ― ローラの母親の家に行って居た。ルイスは仕事で遅くなっていた。

自分の結婚生活についてどう考えるべきか、ローラには未だ分からなかった。ルイスは善人で、礼儀正しく仕事熱心だったし、子どもたちにも精一杯誠実に振る舞っていた。だが、ローラに対しては、益々彼が遠ざかって行くように思われた。もはや2人とも殆ど言葉を交わさなかった。この頃には、ルイスはローラをどうしていいか、分からなくなっていたようだ。傍に居ながらも、彼は彼女にとって、ずっと離れた存在だった。あるいは、彼女の方がずっと離れてしまっていたのかも知れない。

ある夜、ローラは気掛かりな夢を見た。彼女は別の生に居る。第2次大戦中のヨーロッパの何処かだった。この夢の中で、彼女は他の男と結婚していて、彼女の心はこの男のものだったが、それはルイスに対する風とは違っていた。彼女たちは幸せであり、幸せは努力しなくても、自然に得られた。だが、それも長くは続かなかった。夢の中で、彼女は夫が殺されるのを見ていた。彼女は家のバルコニーに立ちつくしている。下の通りにはナチスの兵士たちが居て、彼女が見ている前で、兵たちは夫を捕まえ、射殺したのだ。

この夢はローラの頭から離れなかった。暴力的な終わり方のせいだけでなく、夢の中の夫に彼女が寄せる思いの深さのせいだった。夢を見たずっと後までも、ローラは彼のことを考えた。この男性は彼女の潜在意識が空想で作り出したものではなく、本物だと彼女は感じた。彼女は本当に彼を知っており、彼もまた彼女を知っていて、2人は単に結婚していただけではなく、お互い、相手のために生まれてきていたのだと、彼女には思われた。

この夢は夢ではあり得ない、過去生のビジョンだと彼女は判断した。彼女が他の生のものだと確信しているビジョンは他にもあった ― 古代エジプトに居た生やフランス革命の最中のパリに居た生 ― だが、ナチス・ドイツのものが最も強力だった。これは彼女の脳裏から離れなかった。

ローラは、このような考えは忘れようと懸命に努力した。そんな風に過去生を夢見て何の役に立つというのだ?彼女はルイスと結婚して、子どもたちを設けているのであり、彼らとの関係を変えようにも、もう手遅れなのだ。子どもたちは大きくなっていた ― 一番上の娘は、もう14歳だった ― のであり、ローラは子どもたちに対して自宅で教育を行うことに決めていた。学校時代の自らの経験からして、ローラは公教育をあまり評価していなかった。彼女の考えでは、学校は厳しすぎるどころではなく、そこで子どもたちが実際に教わるのは、黙っていること、質問しないこと、言われた通りにすることであり、そうやって言われた通りにし、言われたことが本当だと信じるような、独りよがりの消費者になることなのだった。

ローラは沢山の本を持っていた;家の壁という壁は本棚で覆われていた。彼女は黒板とチョークも持っていた。そして最も重要なことだが、彼女自身好奇心旺盛だったし、子どもたちの好奇心も理解していた。彼女は物理学を教え、彼女たちを文学と神話の世界に誘い、蔵書にある殆ど全てのテーマについて教えた。彼女の授業は伝統的なものとは違っていた。彼女にとって、人生が真の学校だったし、とりわけ彼女たち一家の実生活こそが真の教育だった。そして彼女は教育と日々の生活とをすっかりブレンドするように努めた。子どもたちが入浴している時には、彼女たちの肩の筋肉や足の腱を指し示し、解剖学を教えた。一緒にケーキを焼いている時には、ニンジン・ケーキの原料がどんな風に結合しているか説明して、化学のレクチャーを行った。

「彼女たちの教室は」、彼女は言う。「この世界なのよ」


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ママのベッドで一安心:熱を出した娘のアリエルを撫でさするローラ。1995年撮影。


ローラは子どもたちの才能を開花させ、彼女たちの想像力を解き放ちたかった。彼女はほぼ四六時中、娘たちと一緒だった。数年間、様々な仕事をした後、彼女は自宅の外ではもう働かなくなった。彼女はデイケアやベビーシッターがあまり好きではなかった。

「私、充実したひと時さえあれば十分だという風には思わないの」と彼女は言った。「ずーっと、というのがいいのよ」

子どもたちだけが教育を受けている訳ではなかった。ローラ自身も幾何級数的ペースで知識を吸収していた。この数年彼女は、彼女自身が永年解明に取り組んできた疑問を、徹底的に追求しようと心に決めていた。

彼女は占星術を学び、自分自身や他人の星図を書いていた。幽体離脱や霊的オーラ、ESPに関する文献を読み、クリスタルや瞑想や体外離脱体験について徹底的に調べていた。彼女はまた、ウイジャボードを使った実験も続けていた。こうした実験を、彼女はしばしばフレディーと一緒に行った。

34歳になるフレディーは、やせて背が高く、静かで低く重々しい声で話す男性である。彼の本職は、テレビショッピング番組を制作している地元企業の業務マネージャーだった。しかしローラは、数年前に出会った時から、フレディーには生来、霊媒の素質があると信じていた。2人は最初のうち、ウイジャボードを使ってロトくじの当たりを探り、一山当てようとした。今の彼らは、亡者や霊と話そうとしていた。そこから「他のリアリティー」に呼びかけようというのだ。

ローラは常に、見かけの事象の裏に潜む、より深いパターンを探し求めた。彼女は気象について学び、新聞をスキャンし、洪水や地震を記録した。家の中にゴキブリが見付かった時でさえ、それらの事象を全て何とか結び付けようとした。

子どもたちもしばしばあきれ顔だった。


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まずは銃後に平和を:ある晩、チャネリング・セッションが始まる前。台所で喧嘩して騒いでいたジェイソンとエイミーを引き離すローラ


「ママ」、彼女たちは言った。「落ち着いて」

ローラは今では、催眠セッションにすっかり没頭していて、時折セッションはエクソシズム(悪魔祓い)へとエスカレートした。ローラは永年来、催眠術に関心を抱いていて、このテーマの文献を徹底的に読み漁り、授業も受けていた。彼女は催眠術を利用して、彼女が「憑依霊解放」と呼ぶものを行うようになった。このセッションでローラは被験者を催眠状態にし、生きた家主に憑依している亡者の霊と思われるものを探すのである。彼女が後に説明してくれたところによると、こんなことがあった。被験者に質問して探って行くうち、ある男の霊を見つけたのだが、彼は家の火事で死んだという;別のセッションでは、若い被験者の憑依霊解放を行ったのだが、見付かったのは少年の霊で、この子は食料品店の駐車場で車に轢かれて死んだ後、恋しくて友人の子どもに憑依していたのだ。

ローラのテクニックは単純明快だった。彼女は被験者に催眠術をかけて、憑依霊を探り当てる。そして、彼らに語りかけ、彼らの悩みが何か分かると、彼らに対して、大丈夫だから被験者を解放して、光の中へと進みなさい、と言うのである。要するに彼女は、亡者相手のカウンセラーを自認していたのだ。

エクソシズムの場合は違う。この場合の実体 ― 「闇の実体」とローラは呼んだ ― は、自分の物理体を持つことがない。いわゆる悪魔である。

彼女がエクソシズムを行ったのはほんの数回だけだった。何度かは、気掛かりな振る舞いをする子どもたちに対するもので;何度かは、自堕落な習慣に危機感を募らせ、一体何が原因かと不思議に思っている大人たちに対するものだった。

エクソシズムを行うため、ローラは出来る限り、万全の準備を行ってきた。霊憑依に関して、見つかる限りの文献を読み;カトリック教会が行ってきた、伝統的なエクソシズムの文献を研究した。彼女が行う儀式はずっと略式で、被験者に催眠術をかけ、実体に出会うと追い払うというものだった。


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また土曜の夜よ:チャネリングの定期セッションに備えて、スピリットボードの前に座り、アリエルにおやすみを言うローラ。1995年撮影。


こうした実体に話しかける際、ローラは時折、一風呂浴びたい気分になる。連中はスライムのように気色が悪く、人を騙すのである。そして、彼女を脅かすのだった。

「あなた、なんて名前なの?」彼女は実体の1つに問いかけた。

「名前などあったことが無い」それは答えた。

「誰に遣わされたの?」

「わが師だ」

対峙した相手が本当に悪魔なのかどうかは、ローラにも分からなかった。彼女に分かったのは、何か ― ある種のネガティブなエネルギー ― が、犠牲者たちの中に入り込んでおり、彼女がエクソシズムと呼ぶ、こうしたセッションを行った後には、そんなエネルギーが立ち去っているということだけだった。

こうしたセッションが滅多に無いことを、彼女は有り難く思った。憑依霊解放の方がずっと多かった。多い時には、週に1回は施術して欲しいとお呼びがかかった。彼女は平気だった;エクソシズムに比べれば、憑依霊解放は全くストレスがなく、必要な彼女の感情エネルギーも遥かに少なかった。彼女の憑依霊解放アプローチは、普通のカウンセラーそっくりで、途中までは彼女が行っていた他のセラピー・セッションと同じだった。

彼女はこれを「亡者との対話」と呼んだ。

数多くの被験者を通じて、様々な悪魔/亡者たちと出会ってきたローラだったが、今夜、彼女の目の前でソファーに横たわっている女性のような被験者にお目にかかったことは無かった。

「忌々しい信号ね。早く変わって頂戴」。女性は再び言った。

ローラが後に語ったところによると、この女性に出会ったのは、この夜の2週間前のことだったという。2人が言葉を交わすうち、ローラが自分はヒプノセラピーをやっているのだと、話のついでに告げたところ、この女性は数年前、ペンシルバニアの高速道路で奇妙な体験をしたと言い出したのだ。何かが起こったのだが、女性にはそれが何か分からなかった。だが、彼女によると、この件について考えるたびに、彼女はすっかり動揺してしまう ― 自分でも全く理解できない程に − というのだ。彼女は理由が知りたかった。その晩に何が起こったのか理解したかったのだ。催眠術をかけて、彼女が何を見たのか調べてみようとローラが提案したところ、女性は同意したのだった。

そして今、この女性は目を閉じたまま、ローラの家の居間に横になって、夜通し、ドライブを再現しているのである。ローラに対して何度リプレイしてみせても、結果は同じだった。彼女が息子と一緒にターンパイクをドライブしていて、別の道に迂回しようとすると、彼女には信号機の青いライトが見えてくる。そこで場面がスキップする。毎回、同じところでスキップするのだ。そして突然80キロ先のウェーンズバロの信号の場面になり、彼女の息子がナイフでクッキー缶を開けようとして、手を切るのである。

ローラはこの80km区間で何が起こったのか調べることにした。隅でビデオを撮っていたフレディーは、もう分かったと思った。そのせいで、彼はとても興奮していた。

「これはエイリアン・アブダクションだよ」。彼はローラに言った。

フレディーはUFOの大ファンだった。近年、他の惑星から旅して来たクリーチャーと遭遇したという気掛かりな体験談をカミングアウトするアメリカ人が ― 確かな数字は不明だが ― 増えていることなど、ローラもフレディーも、百も承知だった。こうした人たちの多くが信じ、あるいは信じていると主張する体験談とはこうだ。すなわち、エイリアンが車中や寝室から彼らをアブダクトし、何らかの孤立無援の状態にしておいてから、様々なタイプの宇宙船に連れ込み、医学や科学の実験台にする。その後彼らは日常生活に戻されるのだが、アブダクションの記憶は全てブロックされている。この人達には、何が起こったのか思い出そうとしても、思い出せない;エイリアンの記憶は後になってよみがえる。しばしば催眠術によって。というのが典型的なパターンである。

こうした人たちの物語には注目する必要があるとフレディーは信じている。アブダクティーと称する人たちにインタビューを行ってきたハーバードの精神医学者であるジョン・マック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=79079566
を始め、この現象に通じている他の人々もまた同意見だった。

ローラはそこまで確信している訳ではなかった。フレディーにせき立てられて、アブダクションの報告を読んではいたが、納得していなかったのである。ローラは多くの事を抵抗なく信じていた;彼女の全人生は、他の人々が馬鹿馬鹿しいと思うような、様々な宇宙の実相についての考察に捧げられてきたのだ。それでも、リトル・グレイが、何百、何千という人々をアブダクトして、空に浮かぶしゃれた母船か何かの中でお医者さんごっこをしているという話を信じるには抵抗があった。アブダクションなるものが、そんなに数多く起きているのなら、どうして証拠が全く無いのだろうか?誰もこうしたエイリアンや宇宙船の決定的スナップ写真1枚撮れないのはどうした訳だろうか?ビデオがあるだろうか?こうしたエイリアンはなぜ、ジェラルド・リベラ・ショーに登場しないのか?

他の多くの人々と同様、ローラもこの人たちは何かひどいトラウマを経験していて ― おそらくは、子ども時代に性的虐待に遭い ―、その埋もれた記憶が、潜在意識の中で今、別の類の遭遇体験に変形して浮びあがってきたという方が遥かに有りそうだと思っていた。おそらくこうした人たちにとっては、寝室に入って来て彼女たちを犯したのが、義父や母親のボーイフレンドだったという事実と向き合うよりも、それが実は掟知らずのエイリアンだったと想像する方が楽なのだろう。

ローラはこうしたアブダクション報告が急増した理由を看破したと思っていた。すなわちこれは、集団ヒステリーなのだ。西暦2000年が近付いてきて、おそらくこの人達は少々いかれてしまったのだろう。彼女はこれを「ミレニアム病」と名付けた。

今晩ローラが施術している、この女性には一体何が起こったのか解明すべく、ローラが彼女の痛みを取り除こうとしていることの理由も、これで完全に説明がつく筈だ。催眠をかける前、ローラはこの女性に子ども時代のことを尋ねたが、それは、虐待や家族問題など、感情/精神の不安定さを説明するような兆候が何か無いか探ろうとしてのことだった。だが、女性の話には、失われた時間について説明するような点は見当たらなかった。

ローラはくじけなかった。ローラはこの女性にもっと深い催眠をかけることに決め、もっとゆっくり呼吸するよう指示し、もう一度、あの夜のことをリプレイさせた。今回、女性は、駐車場のことを思い出した。青いライトが光るのを見た後、彼女はクルマが高速道路を離れるのを感じ、今、彼女と息子は食堂の前の駐車場に停車していた。彼女が最初に信号を見た広告板から、そう遠くない道路脇だった。

「次に何が起きたの?」とローラは言った。

「忌々しい信号ね。早く変わって頂戴」とソファーの上の女性は言う。

スキップする場面に戻ってしまった。何が起こったにしても、それが駐車場に居た瞬間と、彼女の息子が手を切った瞬間との間のどこかなのは確かだ。

そこでローラはもう1度試みることにし、女性に出来る限り深い催眠をかけた。お気に入りの部屋の中に座っているところを想像してみて、とローラは被験者に優しく語り掛けた。おそらくは、あなたの家の居間か;それとも書斎かしらね。どこでもいいの。安全だと感じられる場所よ。部屋に入ったら、リクライニングチェアを想像して。リクライニングチェアに座って、気持ちよく安んでいると、目の前にテレビがあるわ。テレビの画面に、あの夜の場面を映し出して、何が見えるか描写して頂戴。

あなたの手にはリモコンがあるわ。それを使えば、テレビを操作できるのよ。早送りしたり、巻き戻したり、消したりね。あなたが安全に感じて、コントロールを失わないでいられるよう、どんな操作だってできるのよ。

高速道路のシーンに女性は戻った。助手席には彼女の息子が居る。彼女たちは迂回することにした。広告板が近づいて来た。

ゆっくり進めて、とローラは彼女に言った。リモコンのポーズ・ボタンを押して、テープをコマ送りさせるのよ。

信号が見える。青い光よ。広告板の前だわ。まばゆいばかりよ。クルマのコントロールを失ったわ。クルマが道路から離れて行く。やがてクルマは駐車場に停まった。食堂の外にある駐車場の中よ。なぜなのかしら。待って。誰かやって来るわ。誰かがクルマの方に近づいて来るの。

ローラは、それが誰なのか描写するよう頼んだ。

「できないわ」と女性。またしても彼女は動揺していた。過呼吸になっている;二の腕が引きつっていて;彼女は痛そうに腕をさすった。

「できないとはどういう意味?」とローラ。

「彼らがそうさせないのよ」

何が起こっているのか話して頂戴、とローラは彼女に懇願した。あなた、誰のことを言ってるの?誰が話すのを止めさせたの?

女性は首を横に振るばかりだった。

「できないわ」。彼女は言った。「できないのよ」

* * *

この夜、可能性が僅かだった筈のリアリティーが、めくれるように姿を現わし始めた。ローラの理解がシフトし始めるに連れて、宇宙も一緒にシフトした。

それは突如として起こった訳ではない。だが、ゆっくり、少しずつ起きたのだった。

ソファーの女性がすっかり動揺してしまったので、ローラはこの夜のセッションをお開きにした。あまりのトラウマでなければ、彼女は調査を続けたかった。そこでローラは女性の催眠を解き、もう一度、改めてセッションをしましょうね、と言った。皆が帰った後、ローラは、被験者が明かした話の意味するところを考えた。フレディーの言う通りなのだろうか?この女性と息子は、エイリアンにアブダクトされたのだろうか?

最初のうち、ローラは依然懐疑的だった。すると、それから数週間の間に幾つかの出来事が起こり、彼女の疑念は少しずつ剥がれ落ちて行った。新聞やテレビが、この地域で何度もUFOが目撃されたと報じたのだ。1993年4月の中旬から下旬にかけて、パスコ、ヘルナンド、パイネラスの各郡で10数人の人々が、巨大なブーメランの形をした機体が空を飛んで行くのを見たというのである。目撃者の1人である、ヘルナンド郡の保安官代理は、機体には標識が無く、青色のライトがあしらわれていて、翼幅は少なくとも60mあったと語った。彼はそれを数分間見ていたのだが、やがて人間の作った飛行機には不可能なスピードを出して飛び去ったという。

「私の現時点の知識からは、この星のものとは思えない」と保安官補はセント・ピーターズバーグ・タイムズの記者に語った。「地球上の物体で、あんな風に空中に浮かんだり、急発進できるものはないよ」

新聞記事を読んでみて驚いたのだが、このブーメラン型物体が最初に目撃されたと報告されているのは、4月15日火曜日の晩、ニューポートリッチーにおいてであり、それはローラが例の女性に対して居間で催眠セッションを行った晩なのだ。この晩に飛行物体を見たという人の家は、ローラの家から6区画ほどしか離れて居なかった;この人が寝室の窓から機体を見たのは、テレビドラマ『L.A.ロー 七人の弁護士』が22時に始まった直後だったという。

記事を詳しく読んで行くうち、ローラは他の点にも気が付いた。この目撃者が巨大なブーメランを目撃したと主張する時間は、ローラのセッションが佳境に入っていた、まさにその時間帯なのである。実際この目撃者は、UFOがローラの家の近所の空中に静止していたのを見たと言うのだ。

フレディーにしてみれば、こうした事はいずれも、失われた時間について打ち明けた女性が、あの夜、危険な何か=エイリアンがシェアしたくない何かを話していたという何よりの証拠だった。道理で彼女の記憶は、ああも強力にブロックされていた訳だ、と彼は言った;あの女性は「彼らが」話を続けるのを許さないのよ、と言っていたが、その意味がこれで分かったよ。

ローラには未だ、フレディーの説を信じる心構えが出来て居なかった。彼女に言わせれば、目撃ラッシュだって、ミレニアム病の大流行の一端に過ぎなかったからだ。1人の人が巨大なブーメランを見たと主張した結果、あとの人たちはおそらく、こうした主張を耳にして興奮した結果、同じ物体を見たと想像しているのだ。もし、エイリアンが沢山乗り組んでいる、気の毒な地球人たちを大勢誘拐した宇宙船が大量に飛んでいたというのなら、その証拠はどこにあるというのか?

「証拠はどこよ?」と彼女はフレディーに尋ねた。「お願いだから、忌々しいエイリアンを見せて頂戴」

結局、あのペンシルバニアの夜に失われた時間を体験した女性からは、あれ以上の証拠は得られなかった。ローラとの最初のセッションの後、電話して来た彼女は、気が変わったと言う。彼女がもう1度セッションをしに戻ることはなかった。

ローラは自分の研究を進めた。彼女はUFOの目撃談や、その他の超常現象について読み続けた;憑依霊解放も続けたし、時折はエクソシズムも行った。彼女とフレディーは、未だにウイジャボードでの実験を行い、別のリアリティに棲む存在にコンタクトしようとしていた。

やがて、晩夏のある晩に、ローラは驚くべき体験をした。それは1993年8月16日のことだった。ローラは家族と共に夕食を済ませた。夜が更けてきた。ルイスは家の中に居たが、ローラは子どもたちのうち3人と裏庭に居て、家族用のビニール・プールで泳ぎながら、空を見詰めていた。これは流星群が見える週だったので、ローラと子どもたちは、プールでリラックスしながら流れ星が見えたらと思っていたのだった。

ローラが後に書いているのだが、彼女たちがほんの束の間、空を見詰めていると、突然、巨大な黒いブーメラン型の物体が直接、家の真上に現れて、プールを蔽ったという。かなりの低空で、おそらく屋根から3mくらい上なだけだった。それはゆっくりと動き、音は立てていなかった。

「ママ、あれを見て!」子どもたちは叫んだ。「あれは何?」

ローラは何と言っていいか分からなかった。

「ガチョウの群れよ」と彼女は言い、なりふり構わず説明した。「冬支度で南に渡るの」

すると、2機目のブーメランがやって来た。

こちらは、最初のUFOから西に15mくらい離れたコースを取り、これまた低空飛行で、家の近くにやって来た。水に浮かびながら、ローラは物体を注意深く観察した。彼女は羽ばたく羽を探し、隠し通せない鳴き声を聞き分けようとしたが、ガチョウの群れであることを示すようなものは何も見えず、何も聞こえなかった。これは単体で飛ぶ固体で、表面の風合いは黒くてメタリックだった。ツヤのある外観には、ファミリープールの光が反射して見えた。

それは、彼女たちの頭上を通過し、向こうの家々を越え、中学校の上空へと通り沿いに進んで行ったが、そのうち、夜の闇の中に消えてしまった。

子どもたちは我を忘れて叫んでいた。ローラは何と言えばいいか分からなかった。一体何に対してこれほど叫んでいるのか見ようと、ルイスが戸外に出て来た時、ローラはさっき言った言葉に拘り、ガチョウの群れが2つ見えたのだと夫に話した。

そんなことがあり得ないのは、ローラも知っていた。いや、鳥の類ではあり得なかった。自分の目で見てしまったものは、彼女にも消し去ることはできなかった。

だが、彼女が見たのは一体何だったのだろう?

それから数日のうちに、ローラは有り得る答えを2つに絞った。彼女自身がミレニアム病に感染してしまったのが真相か、あるいは、UFOが実際に飛んでいたというのが、否定できず/避けることのできない客観的現実なのだろう。

* * *

ローラがじっくり考えなくてはならないことは他にもあった。

「失われた時間」の存在を示唆した女性についてである。高速道路での夜についての彼女の説明は、ローラにとって妙に身に覚えのある要素を含んでいた。失われた時間というエピソードを体験し、後に、エイリアンにアブダクトされたと主張した人々の説明の多くにしてもそうだった。

彼女たちの物語は、ローラのそれと関連していた。ローラはそれを感じることが出来た。

こうした報告の全ては、これまでの人生で起こったとローラが感じている数多くの奇妙な出来事に似ていた。窓から覗き込む顔、森の中の赤ん坊の夢、寝室で何度も感じた存在。そしてもちろん、寝室の窓越しに明るい光が差し込む夢を見た夜。この時は、翌朝目覚めると彼女が戸外の暗闇の中を歩いていたと分かったのだった。

ローラはこれらの繋がりから長いこと目を背けてきた。だから、フレディーの説にも抵抗があったのだ。だから、目の前に証拠があっても、立ち向かい戦ってきたのだ。

それらはあまりにもリアル過ぎた。

(続く)
posted by たカシー at 22:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

恋するエクソシスト − 「起こるかも知れないこと」の物語(下)

第4章
本稿の著者、『黄金の野蛮人』に出会いびっくり仰天
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist4.html


写真
対照的な小世界:居間でテレビを見ているローラの子どもたち。1995年撮影;隣の部屋では、ローラがチャネリングをしている。


私がローラ・ナイトと出会ったのは、彼女が巨大な空飛ぶブーメランを見たという日から1年半後のことだった。

私は「闇の実体」や「憑依霊解放」など聞いた事も無かった。タンパ湾近くに住む誰かが本当にエクソシズムを行っていると主張している事など知らなかった。「巨大な空飛ぶブーメラン」という言葉を目的語に持つような一文を書いて欲しいと真顔で依頼される日が来るとは、予想だにしなかった。


写真
ローラの本棚。彼女の知識追究の証である


私が初めてローラと会ったのは、1995年2月25日土曜日の午後、クリアウォーター図書館の東分館においてだった。『相互UFOネットワーク』=頭文字の通称MUFONの方がよく知られている、UFOおよびエイリアン・アブダクションの民間調査組織があるのだが、彼女と私はいずれも、その地方支部ミーティングに参加するためにそこに居たのである。私はタンパ湾にこんな地方支部が存在することも、ましてや、集会に公共図書館を利用するほどのメンバーを抱えていることも知らなかった。もっと詳しく知りたかったので、出かけて来たのだった。

こんにち、UFOに関係ある事なら何でも国民的ブームになっているが、この時はその初期段階だった。SFテレビドラマ『X-ファイル』もまだ第2シーズンだったし、FOXネットワークもまだ、いわゆる「エイリアン解剖ビデオ」をオンエアしていなかった。私の知人で、UFOを見たことがあった ― 少なくとも、私に対してそう認めていた ― のは、以前行っていた美容院の担当美容師だけだった。

それでも、この土曜日に図書館に居た会衆はエキサイトしていた。異界や地球外知性に対する関心が国じゅうで大いに盛り上がり、高まって来ていることを彼らは知っていたし;エイリアンの来訪は、この星の生命の由来を証明するものかも知れないという考え方を支持する方向に、公衆が深遠なるシフトを行っている、その第1波こそが自分達なのだと、彼らは感じていた。長年嘲笑されてきたこの人達も、ようやく注意とリスペクトを集めつつあった。

この日のローラは、控えめに言っても、聴衆に強い印象を与えていた。彼女の講演する番が来ると、彼女はたちまち部屋の人びとの心を掴んだ。彼女の存在感は圧倒的で、放射能を放っているかのようだった。只者ではない存在感だった。別に映画スターに間違えられそうなルックスではない;太り過ぎで髪は少々ボサボサだったし、服装は反逆的なくらい流行遅れだった。彼女はレギンスをはいていたのだが、少々タイト過ぎだったのを覚えているし、彼女のチュニックは、琥珀色のビーズをあしらい、金色の螺旋が描かれたものだった。彼女を一目見るなり私は、「彼女の居間にはきっとエルヴィスの胸像が飾ってあるんだろうな」と独り言を言ったものだ。

だがどうしたものか、ローラはこうした特徴の全てを自分にとっていい印象を与えるように利用していた。彼女はどぎつかったし、自分でもそれを知っていたが、お構いなしだった;それどころか、途方もない自由とパワーを印象付ける派手さを楽しんでいた。彼女の目は輝き;髪は自由に流れ;僅かに歪んだ微笑みは、周りの空気を燃え上がらせた。

メモも見ずに行ったと思われる短い講演で、ローラは彼女の生活の概要を述べた。子ども時代のこと、エクソシストとしての働き、失われた時間を体験した女性との催眠セッション、彼女と子どもたちがプールの真上に現れた2隻の宇宙船を見た事について、いずれもかいつまんで話した。彼女はまた、その頃スピリットボードで体験した事についても話した。ウイジャボードにそっくりだと思ったが、これはもっと精巧なものだった。彼女が言うには、このスピリットボードを使うことで彼女とフレディー、そして友人たちの何人かは、カシオペア座を構成する星々に居る(※実際は交信の経由点である超新星がこの方向にあるだけ)、彼女が「第6密度の存在」と呼ぶものと交信を開始していた。

ローラの話の乱暴さは、その日私が聞いた中でも、余裕で1番だったが、そんなことは問題では無かった。彼女は賢く、チャーミングで、彼女自身や子どもたち、夫、そして彼女の一家が全く型破りな中流生活を送っている事について冗談を言った。彼女は、正体が良く分からない第6密度の存在についてさえ冗談を言った。彼らが「『ブラジルから来た少年(The boys from Brazil)』」
http://mixi.jp/view_item.pl?id=202041
だと言ったのだ。私には彼女が何の事を言っているのか全く分からなかったけれども、彼女の話しぶりに笑ってしまった。(※交信録940730では” Boys in Brazil”となっていて、内輪の冗談で「宇宙の責任者」をこう呼んでいたとのことです。)
https://cassiopaea.org/forum/index.php?topic=15443.msg126393#msg126393 の注6

彼女のパフォーマンスを楽しく見ていたのは、私だけではなかった。私と長年コンビを組んでいるSPタイムズ紙・カメラウーマンのシェリー・ディーツは、今回のMUFONミーティングにも同行してきていた。私たち2人は、同紙で追跡取材を行えるような、類まれな人物を探していたのである。この日のローラを見、講演を聴いたシェリーと私は、私たちの期待を遥かに超える取材対象を見付けたと確信した。

同紙の他のプロジェクトに取り組んでいる合間も、私たちは引き寄せられるようにニューポートリッチーにあるローラの家を訪れ、彼女や彼女の家族、そして彼女の友人たちと一緒にブラブラとして過ごした。その度に私たちが目の当たりにしたのは、自分の日課を主体的に決めて日々の生活を送る女性の姿だった。ローラの日々の予定には、見たところ互いに相容れない要素がびっしり詰まっていた。彼女は確かに、「歩くパラノーマル現象のバイキング」だった。しかし彼女はまた、5人の子どもたちの母親でもあり、エイリアンや悪霊を追跡する合間には、夕食の支度をしたり洗濯もしていた。彼女はまるで、
ベット・ミドラーと
ダミアン神父、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%B3%E7%A5%9E%E7%88%B6
ドナ・リード(◆女優。地上より永遠に(1953)でアカデミー助演女優賞を受賞)、そして、
スカリー捜査官(=『X-ファイル』のFBI捜査官)
を足して4で割ったような、卓越した存在なのだ。

ローラはあらゆるカテゴリーを無視した。彼女は、MUFONミーティングで最初に出会った日に私が当てはめようとしたものを始めとする、いかなるカテゴリーにも納まったことがなく、今後もないだろう。彼女の家の中を見て回ったが、居間にエルヴィスの胸像は無かった。だが、彼女の家の暖炉の上の棚には、エドワード8世の肖像をかたどった、不気味で、殆ど幽霊のような陶器の水差しがあった。ローラの祖父がこれを買ったのは1937年、エドワード王が「王冠を賭けた恋」の末、平民のアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと結婚するために退位した直後のことだった。

型にはめた観方はこれくらいにしておこう。

ローラの家全体が、彼女の生きざまを納めた巨大な1冊の百科事典なのであり、彼女の好奇心と興味の幅広さを証明するような物で溢れているのだ。

壁には祖父の集めたヴィクトリア時代の印刷物やイエスを描いた絵、世界地図、彼女の子どもたちが美術の時間に製作した作品、特大のタロットカード、子どもたちが貼ったスタートレックのポスターがあった。本棚には、ローラが研究のために読んだ、ものすごい数の本がぎっしりと並んでいた。ほんの数冊だけ書名を挙げれば、次の通りだ。すなわち、
『UFO事件の半世紀―ロズウェル事件からMIBまで』(※キース トンプスン (著), Keith Thompson (原著), 小林 等 (翻訳))、
『歴史としての聖書』(※ワーナー・ケラー)、
『死海文書の研究』、
『エイリアンの知性』、
『謎の惑星「ニビル」と火星超文明』(※ムー・スーパー・ミステリー・ブックス、ゼカリア シッチン (著) ※原題:創世記再考)、
『接近遭遇を超えて』、
『無限と心―無限の科学と哲学』(※ラッカー,R.【著】/好田 順治【訳】 現代数学社)、
『あなたの隣のET』。
https://www.bibliotecapleyades.net/exopolitica/esp_exopolitics_ZZZN.htm

ある日、ローラとこうした研究の話をしていた私は彼女に、科学の教科書を暗記したり、パラノーマル現象を調査していないとき、純粋に楽しむために、あなたはどんな本を読むのか、と尋ねた。すると、彼女の息子のジェイソン ― 当時12歳の彼は、私たちのインタビューに同席するのが好きだった ― が、肩をゆすって笑い出した。

「ママはパピーラブものを読むんだよ」と彼は言った。

私には何の事だか分からなかった。

「ほら、」とジェイソンは言った。「男女が恋に落ちて、デートをし、やがて結ばれるんだよ」

彼は本棚の1つに手を伸ばして、読み過ぎて擦り切れたペーパーバックを引き抜いた。それは『黄金の翼』(※二見文庫 ジ 3-27 ザ・ミステリ・コレクション) 文庫 アイリス・ジョハンセン (著), 酒井 裕美 (翻訳) ※原題:黄金の野蛮人)
http://ameblo.jp/daiana/entry-10018093168.html
という本で、表紙では荒い息遣いで胸を波打たせている女性が、筋骨隆々たる男性に身を任せていた。

ジェイソンはこの本を、訳知り顔でニヤニヤしながら手渡して寄越した。

「193ページを見て」と言って、彼は、男同士なら分かるだろう、という風に意味ありげにうなずいた。

ローラと彼女の生活を一面的な観方で片づけてしまうのは無理だと気付く瞬間というものがあった。エクソシストでサイキック、開明されたエイリアンとの遠距離通信者だというのが、1つの捉え方だったが、こうしたことに加えて彼女は、Hな場面が彼女の愛読する恋愛小説のどこにあるのか探し出すような、思春期の息子の母親でもあるのだ。ローラという人間がようやく分かってきた。彼女が信じている事の全てに同意はできないものの、こうした一面は彼女を理解する上で役に立った。

子どもたちの何人かが、たまたま1-2学期間だけ公立学校に入ることもあったが、ローラは依然として殆どの内容を自宅で教育していた。彼女はうまくやっていたと思う。ジェイソン ― 彼は兄弟姉妹の真ん中で、ただ1人の少年だった ― と彼の姉妹たちは賢く、十分に教育を受けていた。彼らはたゆむことなく、書き、読み、ピアノを弾き、自分達だけの秘密の暗号を発明し、面白半分に数学の問題を解いた;歴史や科学、あるいは文学に関して、私がどんな質問をしても、彼らは同年輩の子どもたちの殆どと比べて、遥かに進んだ内容を答えるのが常だった。


写真
壊れた王の像:ローラによると、このエドワード3世の水差しは、1998年、アリエルが金紙を手に、王冠を折って欲しいと言いながら部屋に入って来た時に、壊れたという。この時、エドワード王の後ろ側に置いてあった皿が、はっきりした理由もなく前に倒れて来て、この水差しは床の上に転がり落ちたのだ。


いろいろな点で、彼女たちの生活は奇妙だった。彼女たちのうちの少なくとも2人が、母親と同じようにパラノーマルな能力を持っていると主張した;映画『シックス・センス』 (※Wikipedia:(The Sixth Sense) は、1999年のアメリカのホラー映画)
が公開される何年も前、ジェイソンはニコリともせず私に、彼には路上で彼の周りを歩き回る亡者の霊が見えると言っていた。だが、こうした風変わりな事が数多くあるとは言え、彼の姉妹たちは未だ子どもだった。彼女たちはゴミ出し当番について不平を言った。家族のバンの前の席に誰が座るかで議論した。テレビの前にソファーを並べ、(中近東からインド、パキスタン、アフガニスタンにかけて生息する=)怠惰なジャングルキャットのように、大の字に寝転んで、何時間も画面を見続けた。

年長の2人、アレシアとアンナ ― 私が出会った時、2人は16歳と13歳だった ― は、母親に困惑していた。これは驚くにはあたらなかった。ティーンエイジャーの少女の殆ど全員が、しばしば自分の母親の趣味の悪さに愕然とするものなのだ。だが、アレシアとアンナの場合、2人が愕然としたのは、母親が毎週火曜の晩に友人を集めて、第6密度の存在とチャネリング交信を行うからだった。

「ママ、」とアレシアは言った。「ビンゴ・パーティーじゃだめなの?お願いだから、タッパーウェア販売パーティーにしておいて」

シェリーと私が、ローラに対するインタビューを続けて、過去の歳月のうち、未だ教えてもらっていない、空欄になっている部分を埋めてくれるよう頼むと、子どもたちは話を聞いていて、彼女たちなりの詳細な印象を付け加えた。様々な出来事に関して、彼女たちはローラの証人なのだ。彼女たちは、ローラが述べる出来事の多くに立ち会っていて、ローラの話を確証した。彼女たちは、プールの上空をブーメランが飛んで行ったのを覚えていたし;チャネリング・セッションも見ていた。エクソシズムに関しては、子どもは参加が許されなかったが、エクソシズム・セッションについても彼女たちは知っていた。

ローラより10歳年上のルイス・マーチンは、妻のパラノーマルな活動に関しては殆ど語らなかった。シェリーと私が彼らの家を訪ねた時も、多くの場合、ルイスは近くに居なかった。この頃、彼はある建設会社に勤めていて、大抵の場合、仕事か釣りに出かけていて留守だった。一度彼と話したことがある。ルイス曰く、彼はフロリダ南部で育ち、子ども時代の殆どは、義父と一緒にエバーグレイド国立公園を歩き回って、狩りと探検をして過ごしたと。彼は未だにアウトドアが大好きだった。

私はルイスが気に入っていた。彼は常に礼儀正しく、親しげで ― 彼は大きなたこのある手で、男らしく握手してくれた ―、子どもたちとの生活を楽しんでいるようだった。殆どの子どもたち同様、ジェイソンと姉妹たちは、ルイスが彼らをピックアップトラックで釣りに連れて行く折には、父親から気にかけてもらうのが好きだったし、そうしてもらいたがった。だが、ルイスが庭でパターをしているのを見ていると、妻が進もうとしている方向について、彼はどう思っているのだろうと思案せずには居られなかった。彼がローラを罵るのを聞いたことはないが、彼女の行動に関心を示すのも見たことがなかった。ローラがフレディー他と、カシオペアンとチャネリングして研究しているときも、ルイスはしばしば隣の部屋で、サンドイッチを食べたり、テレビを見たりしていた。時にルイスは、家に帰って来ても、すぐに中に入って来ず、アプローチの私道にトラックを止めたままラジオの音楽を聴いていた。


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陰に潜んで:ローラが土曜の夜のチャネリング・セッションをしている間、ルイス・マーチンはしばしば表には出ず、じっとしていた


ルイスの無関心さは、一つ屋根の下で起こっている事に対する比較的穏やかな反応だった。私はローラと、彼女の風変わりな活動の全てを刺激的に感じたが、明けても暮れても、それら全てを見ながら暮らすように強いられていた訳ではない。彼女と接触した際の様子だけ見ていても、彼女がどれほど懸命なのか分かった。チャネリングと憑依霊解放だけではなかった。アトランティスに関してさらに一抱えの本を読み、見た夢をリスト化し、悪の本性について熟考し、占星図を書き、バンパイアやエイリアンについて数多くの論文を書き、UFO総会にクルマで出掛け、最近ブラジルで目撃されたエイリアンについてメールを書き送るという具合で、ローラは絶えず活動していた。

多くの夫婦と同様、ルイスとローラは明らかに平行線の生活を送っていた。だが、この頃のローラからも、結婚生活についての不満を聞いたことはない。時折彼女は疲れて気もそぞろに見え;電話の声も、時たま少し元気がなかった。だが、それだけのことだった。大抵の場合、彼女は忙し過ぎて、落ち込んでいる暇も無いようだった。彼女は絶えずつむじ風のように動いていた。子どもたちをドライブに連れ回し、大量の洗濯物を乾燥機に入れ、クロップ(=ミステリー)・サークルについて調べ、チャネリング・セッションの交信録をテープから起こしていた。

彼女は常に大音量で何かの音楽をかけていた。彼女はベートーベンやブラームス、数えきれないオペラや合唱曲に夢中だったが、ピンクフロイドが大好きなのは言うまでもない。予想通り、彼女のお気に入りの1つは『狂気』(※原題:月の暗い側)だった。彼女は映画を見に行ったり、フレディー他の友人たちと気晴らしの小旅行に出掛けたり、娘たちの髪をすいたり、ジェイソンが『新スタートレック』のアンドロイドである「データ」を真似るのを見て笑うのが大好きだった。彼女はユーモアのセンスを失うことがなかった。

ある時、私たちは朝食をとるため、食堂に立ち寄ったことがある。ローラから注文をとる際、ウェイトレスはホームフライ(◆一口サイズに切ったジャガイモをフライパンでいため、味付けした家庭風のジャガイモ料理)
とグリッツ(=とうもろこしから出来たお粥のようなもの)
のどちらにしますか、と訊いた。

「グリッツは誰が作ったの?」とローラは言った。

ウェイトレスはオーダーをとる手を止めて、伝票から顔を上げた。

「うちの兄だけど」。自信なさそうな笑みを浮かべながら、彼女は言った。

「彼はフロリダの生まれ?」ローラは尋ねた。

"No."

「じゃあ、ホームフライにしておくわ」

ローラのペースについて行くのは、いつだって大変だった。シェリーと私は必死でついて行こうとした。ローラの憑依霊解放を見学したこともあったし;彼女とフレディーが主導するチャネリング・セッションの幾つかに出席もした。さらに、ローラの周りに居る多くの人たちとも話した。失われた時間を体験した、パスコ郡の女性にも会った。彼女の話を聞いてローラは大いに動揺した;問題の夜に彼女とクルマに乗っていた彼女の息子も、私たちのインタビューに参加した。

女性も息子も、紙面では匿名を希望したが、少なくともローラが語った内容の基本的な部分については、その通りだと請け合った。私も、この女性との催眠セッションの晩にフレディーが撮ったビデオを見た。セッションの全部は映っていなかったし、女性の話の大部分は聴き取りにくかったが ― 彼女はとても静かに話していた ―、ローラとフレディーとこの女性が述べていた、セッションの本質的な部分は映っていたと思う。

私たちは、ローラのエクソシズムには出席を許されなかった。行われる機会もまれだったようだし、ローラが言うには、エクソシズムのセッションは、記者の同席や終了後の被験者インタビューを認めるには、あまりに個人的であり、且つ、展開の予測が難しいとのことだった。その上、彼女が言うには、彼女自身、エクソシズムにはいつも心をかき乱されるので、手がける回数を減らそうとしているとのことだった。最初に会ってから1年かそこらで、彼女はエクソシズムを全く止めてしまった。

つまり、ローラの物語のうちでも、特にこの部分は、ほぼ全面的にローラの述べた内容に基づいているのだ。エクソシズム・セッションで時々ローラのアシスタントを務めたフレディーの話だけが、唯一の裏付けだった。

取材の最初から、ローラがエクソシズムやその他の多くの事に関して、私たちに嘘をついているということもあり得るだろうとは思っていた。彼女は、窓に見えた爬虫類人の顔や赤ん坊の夢、割れるガラスの記憶をでっち上げたのかも知れなかった。もし彼女がそうしようと思えば ― それには、彼女の子どもたちだけでなく、他の多くの人々の協力も必要だったが −、彼女は何年にも亘る、ひどく手の込んだでっち上げを演出することもできただろう。

だが、シェリーも私も、そんなでっち上げを窺わせるような手掛かりを見かけることはなかった。数年の付き合いの中で、ローラがペテン師の類で、金儲けや評判のために、パラノーマルの研究をでっち上げていることを暗示するような証拠は見つからなかった。全ては彼女が、自分の人生/生活/生命を完全かつ正確に説明しようと全力で試みる人間であることを示していたのである。

私が答えにくい質問をしても、彼女は言葉を濁さなかった。それどころか彼女は、過ちをおかしたり、後悔の残る事をした過去の多感な時期についても、自分から進んで打ち明けてくれた。例えば、20代のはじめ、ある人との別れと祖父の死が重なって動揺した彼女は、自殺を試みたという。これを話すのは彼女にとってた易い事ではなかったが、彼女はそうしたのである。

加えて、圧倒的な量の活動 ― チャネリング・セッションだけでなく、数千ページに上る注釈やエッセー、論文も書いていた ― は、ローラの興味の深さが本物であることの証しだった。私たちが彼女を取材し始めるよりずっと前から、彼女がこうした問題に没頭してきたのは明らかで;彼女と初めて出会ったMUFONミーティングの日も、私たちが聴衆の中に居ると知る前から、彼女はエクソシズムやチャネリングについて話していたのだ。私たちに見い出された後のローラは、新聞に彼女についての物語が載ることについて、ためらいがあると繰り返し明かした。時には、自分の物語に対して読者がどう反応するか心配したローラが、掲載について考え直して欲しいと言ってくることさえあった。

お金がローラの活動の原動力ということは全くなさそうだった。彼女はつつましい生活を送っており、クルマは中古のバンで、子どもたちが育った家は、絶えず修理が必要だった。ローラは、パラノーマルな活動によって資金を稼ぐことには関心が薄かった。彼女はセラピー・セッションで最低費用しか請求しなかったが、十分な実入りがあった訳ではない。数年前、彼女が私たちのために、チャネリング・セッションの交信録を作ってくれたので、私たちは対価として1万円支払った;それ以降も、彼女は追補として数百ページ以上も交信文をくれたが、手間賃の1銭も受け取ろうとしない。

彼女がひと儲けしたかったのだとしたら、相当下手なのだろう。

* * *

私は見逃していた。

ローラと一緒に過ごしている間じゅう、そして、彼女について考え、彼女を理解する手掛かりをまとめ上げようとしている間じゅう、最初から目の前にあった細部の1片を、私は見過ごしていた。彼女の内心で起こっていたことについて、多くを語っていた細部を。

パピーラブ本。

ローラの本棚には、あらゆる分野の科学書や歴史書、そしてパラノーマルの本が既に揃っていて、彼女が読むのを待っていたのに、一体どうして、彼女は恋愛小説などを読んで時間を無駄にしていたのか?このような本が、どうして彼女にとって重要だったのか?他の本では得られないような、どんな発見がそこにあったのか?

それは私の目の前にあった。

だが、私にはそれが見えなかった。


第5章
ベトナム戦争の残響:ジェイニーと戦死した彼女の兄の謎
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist5.html


写真
宇宙からの答えを探る手:ローラとフレディーは、カタログで見付けたスピリットボードを用いて、カシオペア座に棲む実体とコンタクトを確立したと確信した


午後10時41分、ローラはテープレコーダーの録音ボタンを押した。

「準備OKよ、みんな。今日は1996年2月3日だわ」
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=79656384
https://cassiopaea.org/forum/index.php/topic,25857.msg308032.html#msg308032

彼女とフレディーは、居間のテーブルに置いてあるスピリットボードの周りに座っていた。ローラの右手の指2本と、フレディーの指2本が、ボードの真ん中に伸び、プランシェットの上に軽く乗せられていた。ボードの、プランシェットを大きく取り巻く円周の上には、アルファベットの文字が印刷されていた。

「ハロー」とローラが言うと、プランシェットは文字から文字へと、向きを変えながら動き始めた。ローラは一本調子で、一度に1文字ずつ、切れ目なく流れるように文字を読み上げる。

"W-O-R-D-S-M-E-A-N-L-I-T-T-L-E."

部屋の隅には、ローラの友人の1人 ― スーザン・ビターレという名の女性 ― が、ノートとペンを持って座って居た。ローラが文字を読み上げると、スーザンはそれを書き留める。ローラの読み上げが止まると、スーザンはノートを見ながら、書き留めた文字列が実際にはどんな文だったのか、大声で読み上げるのだ。

「単語の持つ意味は限られている(Words mean little.)」

他の参加者は部屋のあちこちに座っている。シェリーと私もそこに居た;今回はルイスもだった。私たち全員は、カシオペアン ― あるいは別の誰だろうが、実際に回答をもたらしている者 ― が、私たちにシェアしたがっている内容を見、聞き、そして学ぶのである。

"Okay," ローラは彼らに尋ねた。「今夜はいくつか質問があるわ。まず、あなたたちからここに居る誰かに特に何かメッセージはある?」

プランシェットが動いた。

"T-H-E-N-E-E-D-T-O-D-E-L-I-V-E-R-M-E-S-S-A-G-E-S-F-L-O-W-S-N-A-T-U-R-A-L-L-Y-"

文字の流れは延々と続くかに感じられる。スーザンは自分が書き留めた文字列を検討し、いっときおいてから、文字列の流れを単語に区切った結果を発表する。

「メッセージは自然に流れるよう伝える必要がある(The need to deliver messages flows naturally)から、時間をかけて手を加えてはダメだ」

ということで、交信が始まった。ローラと友人たちは質問を行った。プランシェットがボードじゅうを辿って行く。回答が書き留められ、大声で読み上げられる。

この夜、議論のテーマは多岐に亘っていた。ローラたちは、ネットで話題になっていた巨大な宇宙船について質問した。土星の周りを回っていて、地球と同じくらいの大きさがあるという。全くのナンセンスだと、カシオペアンは言った。

彼らの回答した実際の文字列を単語に区切ると次の通り:「人工的に拵えられた物語だ(IT WAS AN ARTIFICIALLY CONSTRUCTED TALE)」

最近知り合ったある男について、彼はエイリアンにコントロールされているのか、とローラが尋ねた。時々、という答えだった。彼女はチュパカブラについて質問した。これは、最近プエルトリコで目撃報告された奇妙なクリーチャーで、動物を虐殺して、その血を飲むと言われる。場の誰かが、このクリーチャーはエイリアンじゃないだろうか、と言う。「どうなの?」とローラ。

回答:「それは、見た通りのものだ」

「このクリーチャーが人間を襲う可能性はある?」

「あなたは。。。のメカニズムが完全には理解できていない。。。」


写真
四元素:ローラがチャネリングに使っているスピリットボードの4隅には、土、水、空気、火のシンボルがあしらわれている


セッションは延々と続けられた。プランシェットが文字から文字へと動き続ける。ボードには、コンマ、ピリオド、括弧のような句読点/記号もあって、プランシェットは時折、これらの上にも動いて行く。

ボード近くに座った私は、全体の様子を注意深く眺めていた。ローラとフレディーの肩や腕を観察して、彼女たちが故意にプランシェットを押したりする兆候を見逃すまいと思ったのだ。何も見つからなかったが、これだけで、作為が入り込んでいないと証明された訳ではない。私はローラが読み上げる答えの1文字1文字を聞いていた。普通、それらは即座にもたらされ、中断なく流れて来る。それをローラは一本調子で読み上げるのだ。

ローラは完全に神経をボード上に集中し、作業に没頭しているようだ。それでも、交信の合間に室内の誰かが話しかけると、彼女は耳を傾け返答している。フレディーは一種のトランス状態になっているらしく、目を半ば閉じている;呼吸も遅くなっているようだ。

私がチャネリング・セッションに参加するのも、これで4回目か5回目になるのだが、未だに何が起こっているのか全く分からない。ローラないしフレディーがプランシェットを意識的に操作しているのだろうか?それとも無意識にか?それとも、回答は本当に、遥か銀河彼方の一隅からもたらされているのだろうか?疑問に思うことすら馬鹿げたているように思われる。私に出来るのは、座って警戒の目で見、注意を払うことだけだ。

ローラとフレディーは、この存在とのセッションを1994年から行ってきた。スピリットボードを用いて何年も実験を繰り返した末 ― ローラはこのボードを書籍販売業者のカタログのパラノーマル・コーナーで見付けた ―、ようやく別のリアリティに居る存在と接続できたのだという。この存在が、いわゆるカシオペアンだ。またの名をシーズ。ローラは普通、そう呼んでいる。目下ローラとフレディーは、毎週土曜の夜に彼らと会話を続けている。

セッションに参加してみても、依然として私にはこの第6密度の存在というのが、一体何者で、どうしてニューポートリッチーに長居してローラやフレディーと何時間もしゃべり続けたがるのか説明できない。私が知っているのは、彼らが地球人よりも高い次元に存在していればこそ ― 悲しいかな、私たちは第3密度というステータスまでしか達していない ―、ローラの家の居間にひょいと現れて、過去と現在のみならず、未来の秘密もシェアしてくれるということだけである。

ローラは秘密を知りたかった。彼女はセッションを繰り返し行い、シーズに対して、彼女の人生/生活や過去、地球の運命、その他頭に浮かぶ限りのあらゆる質問をした。歴史や科学、宗教について質問した。ビッグフットやヒトラー、ケネディー大統領についても尋ねた。

この数か月、彼女はシーズに、息子のジェイソンのことを訊いている。ごく幼かった頃から、彼には奇妙な事が起こっていた。ローラが言うには、3歳か4歳の頃からジェイソンは、彼が今生きているのとは別の生についてとりとめもなくしゃべりだした。彼の話は詳細に亘った。彼は、別の家や別の家族について話した。サムソンという名の黒い犬や、兄弟姉妹、親友について話した。時折彼は、この友人と長い事話していた。トイレに座ったまま、恰も彼女と一緒に居るかのように、延々と会話を続けた。彼は彼女をジェイニーと呼んだ。

それだけではない。ジェイソンは、この別生で、自分がどんな死に方をしたのか知っていた。彼は何年か前、催眠術にかかった状態で、これについても話した。彼は飛行機に乗っていたのを覚えている。彼が言うには、飛行機を操縦していると、自機にミサイルが命中して煙がたちこめ、その後何も見えなくなったのだ。

そこでローラは、シーズに教えてくれるよう頼んだ。どうしてジェイソンは別の家族の記憶を今生まで持って来たのか?どうして彼は、飛行機の飛ばし方を知っていると真顔で言うのか?

答えは驚くべきものだった。シーズは彼女にこう語った。すなわち、ジェイソンは前生で空軍のパイロットとしてベトナム戦争に従軍していたが、彼の機は地対空ミサイルで撃ち落とされた。だから、ジェイソンは墜落の様子と、戦死するまでの人生について、詳細に覚えているのだと。

このケースのように、ボードからもたらされる反応は時として単純かつ直截的だった。だが多くの場合、それは曖昧で分かりにくかった。また、シーズが、語ることを拒絶するテーマも多くあった。そうする結果、関係者の自由意志に干渉することになるというのだ。シーズはなかなかどうして、自由意志を重視するのである。

いかに分かりにくいものだろうと、回答の全てはテープに録音され、書き留められた。そして、やり取りは最終的に交信録に起こされ、浄書される。この時点で交信録は1000ページ近くになっており、手掛かりや結び付き、さらには、次にエネルギーを傾けるべき方向に関する忠告を探して、ローラはそれら全てを仔細に調べ終えていた。それらに関する彼女の話を全て聞いたのだが、彼女は明らかにこう考えている。すなわち、おそらく、もしかしたらだが、彼女はついに宇宙の青写真(設計図)を見付けたようなのだ。今、彼女は、それを解読する術を学ぼうと努力しているのである。

そう聞いて、これがこの上なく魅力的だと思われたら、考え直した方がいいだろう。確かに、時としてボードからもたらされる答えは、興味深く、楽しいことすらあるが、シーズは2度ばかし、シェリーと私に対して直接、語り掛けてきたことがあるのだ。ある夜、私がノートPCをカバンにしまって、退出の身支度をしていると、彼らは私に、席に戻るように言ったのだ。それは丁寧ながらも、断固たる調子だった。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=78635718
https://cassiopaea.org/forum/index.php/topic,26027.msg310285.html#msg310285

「どうか未だ席を立たないでいただきたい、ミスター・フレンチ」という文字列がボードからもたらされたのだ。

ローラは一瞬沈黙した後、「どうして?」と言った。

「私たちから彼に言いたいことがある」

私は席に腰を下ろした。第6密度の存在から何かするよう言われると、人は耳を傾けてしまうものだ。それでも、私は笑わずには居られなかった。

続けてもたらされた言葉は、私に向けた激励だったが、特別ドラマチックなものでもなかった。シーズが私に対して言うには、私は幾分厳しい時期を経験してきたが、ようやく「潜在意識への扉」を開き、「自分という存在の変容」を検討する方法を学んだのである。良い事が近い将来起こるだろう、と彼らは仄めかした。

「沢山の変化がまだこれからやって来る」

これについては今のところ、特にシーズに先見の明があったとは思われない。

それにしても、セッションでもたらされる交信文の多くは、かなり退屈な内容である。1文を構成する単語の綴りが1度に1文字ずつ送られてくるのだから、回答の文章が伝達されて来るには大変な時間が見込まれる上に、常に彼らが関心を抱いていると思われる、チャクラや電磁波バースト等の概念は、ローラとフレディーにしか分からないようだった。ローラの家の居間に座っている間、私は何度もあくびをかみ殺した。

だが、私個人としては、セッションが退屈で安心を感じていた。実はその結果かえって、チャネリング・セッションの信頼感がいくらか増すように私には思われたのだ。なぜ人々は、エイリアンが居たら面白いと期待するのだろう?実際にパーティーで彼らの隣に座らねばならなくなったら、中にはほとほと退屈させるようなエイリアンも居て、高速転送チャネル(hyper drives)等々のメンテナンスについてとりとめもなくしゃべりだす、という方がありそうではないか?私は真面目に言っているのだ。もしシーズが私たちに、銀河のニュースフラッシュを見せたり、癌の治療法や永久に生きる方法を話したり、(マフィアと手を結び、長年にわたり不正行為を働いたとされる、失踪した労働組合指導者=)ジミー・ホッファ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%95%E3%82%A1
の死体を発見したりしていたら、私は疑わしく感じていたことだろう。ローラが全てをこれ見よがしに指揮調整しているのではないか、という思いが募ったことだろう。だが、何週間見ていても、セッションでの謎解きは遅々として進まず、同じ問題を突破できぬまま、やりとりが続いていた。

「真実全体は理解しにくいものだ」と、ある夜、シーズは宣言した。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=50426652
https://cassiopaea.org/forum/index.php/topic,34920.msg496566.html#msg496566

「私たちは何をすべきなのかしら?」とローラは尋ねた。

「あなた達には所詮、あなた達なりのやり方しかできない」

セッションの交信録をテープから起こすのは退屈な作業であるが、それでもローラは自らこれに取り組み、キーボードに向かったまま真夜中過ぎまで作業していることもしばしばだった。幾つかの謎については、少しずつだが解き明かされようとしている、と彼女は言う。

ローラも今となっては、エイリアンが地球に干渉しているという考え方に対して本気で異を唱えはしなかった。どうやら彼女は、UFOが実在しており、アブダクション報告の多くも本当であると受け入れる気になったようだ。

カシオペアンとの交信録の研究を始めて数か月になるローラは、地球や、その他の惑星で、善なる勢力と悪しき勢力との間で戦いが行われていると言う。それはローラがエクソシズムを行っている最中に目にする、光と闇の戦いに似ているそうだ。ローラによれば、銀河の地方ごとに様々なエイリアンの種族が居るという。そのうちの幾つかは、シーズと同様、この宇宙についての理解を促進することにのみ関心を持っているが、他の幾つかは悪意に満ちている。ローラが繰り返し語ったところによれば、これら闇サイドのエイリアンは組織ぐるみで、人類のエネルギーを、そして肉体までも食べているという。

「私たちは食物連鎖の天辺に居る訳じゃないのよ」と彼女は言う。

このダークサイドのエイリアンこそ、子どもの頃に彼女に付きまとったトカゲに似たクリーチャーに他ならない、と彼女は断言した。彼女の説に、できるだけ忠実な言い方をすれば、このエイリアン ― 彼女はしばしば彼らを「リジー」と呼ぶ ― にとって、彼女は脅威であり、連中は彼女をコントロールしよう、できれば滅ぼそうとしているのだ。

このテーマについて、ローラがシーズに質問を重ねるに連れて、リジーに関する彼女の説は、益々不吉なものとなった。ローラが出会ったある女性は、彼女に夢の話をしたのだが、その中でこの女性は、ワニのようなクリーチャーにレイプされたという;これがリジーなのは明らかだ。ローラは至る所で連中を見かける。ローラによれば、連中は人々の体内に装置をインプラントして、行動を監視している。さらにローラに言わせると、それ以外に、リジーに操作されているゾンビ人間も居るという。連中はこのような人々の人格を盗むか麻痺させるかして、残りの抜け殻=ゾンビをスパイや兵隊として使うのである。彼女は、世界じゅうで起きている暴行銃撃事件の陰に、リジーの存在を感じさえするという。

1996年3月のある日、私がローラの家でインタビューをしていると、ルイスが入ってきて、スコットランドで起きた銃撃事件の話を始めた。銃を持った男が学校に侵入して銃撃を行い、16人の子どもたちと教師を殺したのだ。
http://blog.goo.ne.jp/hanamamagon/e/7e66196f5afe5bab57993ae8b7343afa

「私が言ったのは、まさにこういうことよ」とローラは言った。

ルイスは嘲笑した。彼は明らかに、妻の説を全く信じて居なかった。

「私は普段から冷静だけど、インプラントされているかも知れないな」。突然目を大きく見開くと、彼はこう言った。「お前は知らないんだ」

ローラは彼を無視した。ルイスは立ち去った。

リジーに関するローラの説の全てを聞いた後、私はローラに、エイリアン・アブダクションと言われるものの多くも連中のせいだと思うか、と尋ねた。彼女は、イエスと言った;連中自身がアブダクションを実行しているか、あるいはヒューマノイド・エイリアンに実行するよう指示しているのだという。このヒューマノイドというのが、多くのアブダクション報告に出てくる「グレイ」と呼ばれる、大きな目をした灰色の小人のことだ。

ローラの場合はどうなのだろうか?彼女の過去の人生に起こった、奇妙な夜中のエピソードを振り返ってみて、彼女は自分もアブダクトされたと思っているのだろうか?

私が初めてこの話題を持ち出した時、ローラは答えなかった。その可能性があると彼女が考えたのは明らかだが、私の質問がこの方向に向かうと、彼女は目に見えて落ち着かなくなった。だが時間が経つに連れて、彼女は徐々にこれについて話す気構えが出来て来たようだった。彼女が言うには、勇気を奮い起こしてシーズに尋ねたところ、彼らは、子ども時代以降、確かにリジーは彼女を繰り返し連れ去ったと請け合ったとのことだ。そうだとしても彼女は、実際に起こってしまった過去の出来事を引きずりたくなかった。

私が彼女と行った、あらゆる会話の中で、唯一このテーマにだけは、彼女も尻込みした。この問題に関する会話を強いたりすると、彼女は座ったまま身をよじらせ、顔から血の気が引き、目を逸らした。

「そのことについては考えたくないの」と彼女は言って、涙をこらえるのである。

何か月か経つうち、このテーマこそ、ローラについての謎を解明する上で核心となるものだということが、益々明らかだと思われてきた。

シェリーと私は依然として、私たちに対して話している事をローラは純粋に信じていると感じていた。何かが彼女の身に起こっていたのだ。だが、それは何だったのだろうか?

実のところローラたちは、地球外生命体との恐ろしい遭遇に耐え忍んできたのかも知れない、ということだってあり得ると私は思っていた。私自身はUFOを見たことはなかったけれど、エイリアンが実際に存在していて、実は、彼らの一部は友好的でも愛らしくもないという可能性を受け入れることにためらいはなかった。それでも、ローラが私に語ったことの多くをどう理解したらいいのか、判断がつきかねた。

以前彼女は、アブダクトされたと信じている人々の話は怪しいと言っていたので、ローラは少女の頃に、トラウマとなるような虐待を受けていて、虐待の記憶を隠ぺいするためにエイリアンに関するエピソードを考え出したということもあり得ると私は思っていた。彼女の幼い頃の経験の細部は、この考え方にフィットした。一連の男たちがローラの子ども時代に登場しては去って行った。ローラの両親が離婚した後、彼女の母親は4回再婚したのだ;義父の1人は、彼女を数日間連れ去ったことがある、とローラは言っていた。

私はローラに、義父か誰かに虐待されたことはあるかと尋ねた。彼女は、そんなことは断じてない、と答えた。連れ去られた時の詳細について尋ねると、分からない、と彼女は言った。彼女はその時のことを殆ど覚えておらず;彼女に言わせれば、全てがブランクなのだった。

私は、他の可能性もあり得ると思った。もしかするとローラは、窓に見えた顔、その他の奇妙なエピソードの全てを、彼女の人生にドラマチックな要素を取り入れるために想像したのではなかろうか。退屈だったか、孤独だったか、あるいは単に捨て鉢になって、こんな途方もない空想を作り上げ、それで頭が一杯だったということはあり得ないだろうか?エクソシズムや憑依霊解放、シーズとのチャネリングといった一切の事が、興味が尽きないよう潜在意識が絶えず演出し続けている、大規模で常軌を逸した芝居に過ぎないとしたら、どうだろうか?


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新年の祝砲:1995年の大みそかの深夜、ルイス・マーチンが外で祝砲を撃とうと、ショットガンの準備をしている。その右はローラの母、アリス・ナイト。左に居るのは、ローラの友人のサンドラ・デパオリ。彼女はこの2か月後に亡くなった。それ以来、ローラはチャネリング・セッションでサンドラとコミュニケートしている ― ローラによれば、「私はボードのこっち側に来てからの方が、そっちに居た頃より具合がいいわ」とサンドラは言ったそうだ


そして、もちろんながら、最も簡単な説明もあった。ローラが何らかの精神疾患に罹っていたとしたらどうだろうか?

この可能性については、彼女自身も繰り返し指摘していた。

「時々、自分はイカれてるんだと思うのよ」と彼女は私に言った。「基地外であるというのは、こんな感じじゃないかしら?だって、本物の基地外の中には、まともに見える人も居るでしょ」

この可能性に言及する都度、ローラはそれを否定した。私たちの多くと同様、彼女も時折カウンセラーや心理学者に相談したことがあるという。だが、これまで何らかの精神病だと診断されたことはなかったのだと。

取材の初期の時点で私は、新聞社の費用で精神科医に診てもらうことをローラに依頼しようと考えた。彼女に起きていることが、病気のせいだと医者が診断したらどうだろう?ローラが躁うつ病か、妄想症、あるいは精神分裂病だと言われたら?

だが、結局私は、ローラに対して精密検査を受けるよう頼まなかった。それは正しくないと感じたのだ。彼女と一緒に居る時間が長くなって行くほど、彼女を無理にでも病院送りにしようという気はなくなって行った。彼女に起こっている事が何だろうと、その展開の仕方には、じつに注目すべきものがあった。彼女は子どもたちを育て、フレディー他との友人関係を楽しみ、始終読書し、学び、イマジネーションの及ぶ限り探検しているのだ。

この女性は1つの人生を送っている。完璧とはいかず、かすってさえいないかも知れない。だが、それは彼女のものであり、しかも非凡なものなのだから、私は干渉するつもりはなかった。

* * *

私の目の前で、私には説明できないような事が起きていた。ローラが行うちょっとした事が、私には理解できなかった。彼女がチャネリングしている時に、ボードにもたらされる文字のように。時として彼女の読み上げ方は実に速く、文字は一つの流れとして出て来た。どうしてそんなことができるのだろうか?彼女が、彼女の潜在意識が、答えをでっち上げているとしたら、ためらいや中断もなしに、どうしてあんなに速く作文できるのだろう?

「イエス」「ノー」で済む答えだけではないのだ。時として答えは長くて、込み入っている。幾つかはローラが言っているように聞こえる;彼女が答えを考え出し、それから単語、さらには文字へと分解して読み上げるのだと想像できる。だが、答えの中には、ローラが言っているようには全く思えないものもある。そうした答えは、他の誰か、ローラが知っていそうもない事を知っている誰かからもたらされるように聞こえる。

いずれにしても、どうして時折、彼女があれほど素早く文字を読み上げられるのか、私には理解できない。文字がドッと出てくるのを聞き、それがどんな単語になるのか考えようとしても、私の脳がついて行けないのだ。文字は溶け合い、長くぼやけたノンストップの音の流れになってしまう。

おそらくこれは何の証拠でもないのだろう。おそらく、こうした全ては、ローラが私の出会った誰より賢く、頭の回転が速いということを示しているだけなのだろう。

だが、このような考察をいくらしても、プンタ・ゴーダの町への旅で起きた出来事の準備にはならなかった。

* * *

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プンタ・ゴーダでの奇妙な1日:ベトナム戦争で戦死した、ある空軍大尉の墓の前に佇むローラと息子のジェイソン。ジェイソンは前生では、この大尉だったかも知れないとローラは考えた;だが、故人の遺族は、信じられないと思った


発端はジェイソンだった。

ローラは息子の前生についての記憶について、依然として考えを巡らせていた。今生では彼に男きょうだいは居ないこと。撃墜された時に彼が載っていた飛行機について。出来る限り教えて、と彼女は未だにシーズに問いかけ続けていた。彼らは彼女に、1つの名前を教えた。

実際には、シーズは彼女に、2つの名前を教えた。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=28840512
それらはファーストネーム(名)とラストネーム(姓)かも知れなかったし、ファーストネームとミドルネームかも知れなかった;それは知りようがなかった。すぐ後で述べる理由から、これらの名前はここでは伏せておく。

ローラと友人たちは、この名前を手掛かりに、自分達で幾らか調査を行った。すると、1969年4月に、ベトナム戦争における飛行機の墜落で戦死した、ある空軍大尉の記録が見付かった。この大尉のファーストネームとミドルネームが、シーズの教えてくれたものと合致するように思われた。

調べたところ、この空軍大尉が育った町は、パスコ郡から南にわずか2時間ほどのプンタ・ゴーダというところだった。ローラがこの大尉の葬儀を行った葬儀社に電話したところ、遺族を知っているという葬儀社の社員が見付かった。この男の話では、大尉の2人の妹が、未だこの地域に健在とのことだった。彼のお蔭で、ローラとジェイソンは、大尉の2人の妹と会う段取りとなった。

ある晴れた土曜の朝、シェリーと私はローラとジェイソンに従って、プンタ・ゴーダへと向かった。私たちは、姉妹の一方の家で、彼女たちと会った。一人は59歳、もう一人は63歳だった。こんな異様な会談に立ち会うのは私も初めてだったが、姉妹の対応は実に暖かく、優しかった。全員が居間に座ると、姉妹は家族の歴史をシェアしてくれ、アルバムを見せてくれた。

「これが母よ」と一方が言った。

「母さんね」ともう一方が言った。

姉妹は私たちに、二人の兄のことや、彼の飛行機が墜落した際の悲嘆について語った。姉妹は私たちを、兄が眠る墓地に連れて行った。ジェイソンは、大尉の墓石を見詰めて立ち尽くした。彼はこの朝の間、殆ど一言も話さなかった。今では何も話そうとしない。

この日、墓の前に立ち尽くすジェイソンのイメージ以外で私が覚えているのは、大尉の生涯の詳細について姉妹が語ったことと、そしてそのいくつかが、ジェイソンが少年時代にローラに話した内容とピッタリ一致していたことだった。

ローラの一人息子であるジェイソンは、自分には男きょうだいが居ると言っていた。大尉は七人きょうだいの一人だった。四人が男で、三人が女だった。

ジェイソンはサムソンという名の黒い犬について話した。大尉の家も犬を飼っていた。黒いチャウチャウ犬で、サンボという名だった。

そして、ジェイニーが居た。ジェイソンが前生について語った全ての事を姉妹に話す中でローラは、殆どついでのように、ジェイソンが会話していた親友のジェイニーに触れた。

姉妹の一方 ― 彼女の下の名前はジェイニーではなかったが ― は黙り込んだ。

亡くなった兄が私をそう呼んでいたのよ、と彼女は言った。二人はたった二歳しか離れて居なかったので、とても仲が良かった。他のきょうだい同様、彼も彼女をジェイニーと呼んでいたという。

「家族以外の誰も、私にニックネームがあったことは知らないわ」と彼女は言った。

* * *

どう考えていいのか、ローラにはよく分からなかった。

姉妹に会ってみて、ジェイソンの前生がパイロットだったという話の信ぴょう性は高まった、とローラは思った。

ローラとジェイソンがパスコ郡に戻った後、大尉の妹たちは、このエピソードについて二人だけでじっくり考えた。後に私が、電話で姉妹の一方に、印象はどうだったかと尋ねると、彼女は全部でっち上げだわ、と答えた。

姉妹がローラとジェイソンに会うことにしたのは、本質的に話が一致するか確認するためだけだったという。だがその後話し合った結果、姉妹はそうでは無かったという結論に達した。確かに、ローラとジェイソンの語った詳細の幾つかは、姉妹の兄の生涯に合致していた。だが、他の多くの点は違っていた、と彼女は言う。

例えば、ローラは、大尉が任務から帰還する途中で戦死した様子について話した。シーズからの情報だと地対空ミサイルが彼の飛行機に命中したのだ、とローラは述べた。だが、ローラとジェイソンが帰った後、姉妹が連邦政府に情報公開を求めて入手した大尉の死に関する記録によれば、彼の飛行機はミサイルで撃ち落とされたのではなく、離陸に失敗したということだった。さらに、彼女が当日、兄の飛行機の搭乗員をクルマで送ったという人物に話を聞いたところ、機体は離陸に失敗したと請け合ったという。

他にもあった:ローラの話では、ジェイソンはパイロットだったのであり、また、シーズも撃墜された時、問題の大尉は機体を操縦していたということだったが、姉妹は私に、兄はパイロットではなかったと述べた;彼は機上で偵察のための機器を操作していたのだという。

彼女はもうローラの話には関わりたくないという。彼女はジェイソンには同情的で、ローラが彼に暗示をかけたのではないかという。一致した事実に関しても、おそらくは偶然だろうと彼女は考えていた;ローラは会談の前に、遠距離からうちの家族について調査していたのではないか、とも彼女は述べた。いずれにせよ姉妹は、彼女たちの兄の名前も、家族の名前も、この転生物語に結び付けて欲しくないという。

「一言たりとも信じないわ」と彼女は語った。

* * *

どう理解していいか、私には分からなかった。

ローラが持ち出した詳細の多くが、一致しなかったのだ。確かに、彼女が一切を企んだのかも知れなかった。だが、ジェイニーというニックネームをローラが初めて口にした時、姉妹が驚く顔を私は見ていた。もし、ジェイニーというのが、家族内だけでのニックネームなら、その話を持ち出すのに、ローラにはどれだけ大掛かりな調査が必要だっただろう?ピンタ・ゴーダくらいの小さな町なら、誰かがそこまで徹底的な調査を行えば、大尉の家族の耳に入らないだろうか?

* * *

私はカーブは見ずに、前方だけを見ていた。


第6章
「ローラ、愛しいローラ」とメールは綴る。「キミは本物なんだ。私の想像じゃないんだね」
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/exorcist6.html


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賭けに打って出る:ルイスとの離婚に合意する前の数か月間、ローラは自分の生活と折り合いをつけるのに苦労していた。「私、死にそうだったわ」と、今、彼女は振り返る。「私はこうなった理由を解明して、子どもたちが大きくなるのを見届けるまで長生きする上で必要な変化を、成し遂げる必要があったの ― その結果、生きるために離婚を決意したのよ」


1996年4月2日、ローラは電話してきて、離婚することにしたと宣言した。

「ルイスと私は、」彼女は言った。「半ば友好的に別れを選んだのよ」

この時までローラは、彼女が離婚の瀬戸際に居ることを私に察知させるような事は一言も言わなかった。私がどれだけ質問し、詮索しようと、ルイスとの関係については、慎重に言葉を選んでいた。

これに続く数週間、ローラは私に何がうまくなかったか語った。孤立し、疎外されているという長年の気持ち、ルイスが何年もよそよそしいという感覚、一生を捧げる相手を間違えたのではないかという、こびりついて離れない疑念を、彼女は私に打ち明けた。2人で決めたことだと彼女は言うが、最終判断をしたのは、彼ではなくて彼女だろうと感じた。

離婚した人たちが言うような、あらゆる事を彼女は言った。ルイスは私のことを理解してくれないし、私をないがしろにしている気がするし、2人は口論が絶えないし、子どもたちが心配だし、生活費にも事欠く有様なのよ。何とか耐え抜き、結婚生活がうまく行くように努力したんだけど、そうは行かなかった。

「十分長く、十分激しく彼を愛すれば、彼も目覚めるだろうと信じていたわ」と彼女。

それだけではなかった。ルイスは、ローラのチャネリングその他のパラノーマルな研究を助けてくれなかった、と彼女は言う。彼が冷たく、よそよそしくなり、多くの点で変わってしまったように思われることに、彼女は驚いていた。リジーが、彼女を見失わないようにする作戦の一環で、何らかの方法で彼を偽物とすり替えてしまったか、あるいは彼をゾンビのようなクリーチャーに変えてしまったのかしら、と彼女は疑問を口にした。それは彼の過ちじゃないわ、と彼女。

「単に私と関わったせいなのよ」

ルイスは家を出て行ってしまった。子どもたちとは連絡を取り合っているものの、私が彼と会うことは二度となかった。だが、その後、彼と電話で話すことができたので、何がうまく行かなかったのか訊いてみた。彼の言い分も、さしてローラと変わらなかった。財政的に苦しい年月が続き、結局、2人は疎遠になってしまった、と彼。離婚することにはなったが、ローラを尊敬している、とルイスは語った。彼女が本物のサイキックであり、異界の実体と会話でチャネリングする能力があると彼は信じていた。彼は彼女の活動を支援しようとしたのだが、彼女の活動はやがてエスカレートして、彼のキリスト教原理主義の信仰と衝突するようになったという。

「私は寛容であろうと努めた」と彼は言った。「だが、手に余るようになったんだ」

ルイスはローラを批判することを避けた。彼はローラがチャネリングしている実体の中には慈悲深くないのも居るんじゃないかと心配していたと認めた。彼はリジーが彼を操作しているのではないかとローラが心配していると聞いても驚かなかった;彼は既に同じような事を耳にしていた。彼女がそのような可能性を仄めかした事を、彼はよく思って居なかった。これには傷ついたよ、と彼は言った。

ルイスが一種のゾンビに変えられてしまったのでは、というローラの疑念を聞かされても、私は殊の外驚かなかった。彼女には、彼女が世界を見るときの視点;プリズムというものがあった。かつて私は、結婚生活のトラブルを抱えたキリスト教再生派の信者が、どうやってサタンが連れ合いの中に入り込み、連れ合いを操作したのか語るのを聞いたことがあった。大した違いがあるだろうか?これは単に、ルイスが彼女にとって他人のようになっていまい、もはや彼のことを信頼できないということの、彼女なりの言い方だと思った。

それでも、ローラの決定には不安を感じた。彼女は離婚しただけでなく、子どもたちの養育費も求めなかったのだ。ルイスは最近、建設業の職を失なっていて、ローラは彼に分与できる現金があるとは思っていなかった。彼女が望み、ルイスが承諾した財産分与の内訳は、家と家族のバン、そして、2人の貯金の半分を受けとることだった。

彼女がどうやってうまいことやって行くつもりなのか、私には分からなかった。パラノーマルな活動以外に、ローラには仕事もなく、それらは殆ど何の支払いの足しにもならなかった;また、彼女が言うには、一家の蓄えも十分ではなかった。どうやって彼女は生活費を工面するつもりなのだろうか?しかも、ルイスに子どもの監護権を得させないようにするにはどうしたらいいのだろうか?判事の前で彼が、自分と子どもたちが生活している前で、彼の妻はエクソシズムや憑依霊解放、そして、第6密度の存在との会話を行っていたと証言したらどうなるだろうか?

この時、ローラは44歳だった。これまで見て来た中でも、彼女は最もひどい健康状態だった;彼女が味わっていた気持ちを考えれば、驚くにはあたらなかったが。彼女には6歳から17歳までの、5人の子どもが居て、ありったけのドラマと、子どもたちにつきものの出来事が起きていたのだ。飼い犬も2匹居て、彼女の家は相当修理する必要があった。彼女は日用品を買ったり、子どもたちを駆けっこさせる以外、殆ど外出することも出来なかった。彼女は普通、夜も昼も読書するか、コンピューターの前で過ごした。

ローラの決定は無鉄砲だと思われた。行く手に目をやっても、離婚からもたらされる、良い結果など見当たらなかった。私はローラが家を失い、おそらくは子どもたちも失うのが目に見えるようだった。彼女が苦渋と失意の中、個人破産する様子が目に浮かんだ。

だが私は、そのような懸念を自分の胸の内にしまっておいた。それでもこれは彼女の人生なのであり、彼女が全力で戦っているのは分かっていたからだ。

* * *

続く数週間はゾッとするものだった。

ローラはリサーチや著作、土曜の夜のチャネリング・セッションを続けた。だが、明らかに彼女の心はここにあらずだった。彼女は自分が、普段よりも余計に眠っていると認めた。彼女は体重が増えた。私が電話した時、彼女は受話器を持つエネルギーも殆ど無いという感じだった。

以前のローラは常に過熱気味でワークに取り組み、3人の仲間たちを相手に、エネルギー十分で活動していた。今や彼女は全面的に活動停止しているようだった。動きもスローモーションになっていた。

自分の決定については後悔していない、離婚したのは正しかった、とローラは言う。彼女のこの信念は決してブレなかった。それでも彼女は、一家の全員が心の張り裂けそうな思いをしていると認めた。彼女は、生活費を支出し、冷蔵庫の中に食べ物を切らさないようにできるか心配だった。子どもたちがどれだけ傷つき、父親が居ないのを寂しく思っているだろうか、と彼女は語った。

数週間が経つうち、彼女は益々落ち込んで行くように見えた。周りの世界の残酷な絵図の中で、彼女は益々翻弄されて行った。

「私にとって」と、ある日、彼女は言った。「人々は2つの主要なタイプに分かれるわ。捕食者とその餌よ」

彼女はシーズに、自分はどうしてこうも孤独を感じ苛立っているのかと尋ねた。シーズは彼女に対して、彼女は過去の多くの事について、怒りを抱えているが、それはルイスに関係したことだけではなく、リジーおよび、子ども時代のアブダクションに対してもなのだ、と答えた。

ある時彼女は、精神科医に診てもらいに出かけた。後に彼女が顛末を話してくれたのだ。彼女は精神科医に、彼女のこれまでの人生について述べ、窓に見えた顔等の、子ども時代に困惑させられたエピソードを語った。医師は、子ども時代に彼女はトラウマを負った可能性があると彼女に述べたという。彼女は同意しなかった;これらの出来事の記憶は、想像だと言うには、あまりに鮮やかでリアルだもの、と彼女は言った。ローラは医師に助けてくれるよう頼んだ。私はどうしたらいいのでしょう?頭にこびりついて離れない、これらの記憶をどうしたらいいのでしょう?あなたは、それらについて考えるのをやめて、それらが記録されている心の領域を閉鎖する術を学びなさい、と医師は言った。ローラはそんなことは不可能だと思った。こんなに大事な記憶をどうして閉鎖できると言うのか?

ローラが精神科医に診てもらいに行ったのは、ほんの数回だけだった。彼女は健康であり、もう来なくて大丈夫だと言われたという。

数週間が過ぎ、彼女の悲嘆は深くなっていくように見えた。多分もしかしたら、「闇の勢力」は、私があえて連中の姿を見、連中について語ったせいで私を罰しているのかしら、と彼女は疑問を口にした。彼女は聖書から不吉な一節を引用した。

イブが知識の木の実を食べた結果、彼女の目には「知識という悲喜こもごもの洪水」が涙となって溢れた。そして彼女は、私にメールしてきたのだが、これまた聖書からの引用という趣きだった。

ローラからのメールに曰く、山々は噴火し、海は煮立ち、空は低くなって、人類を大量の塵にように一掃した。彼女はニューポートリッチーじゅうをドライブして、ピスラカズコーティー川を渡って来た様子を述べた。比較的穏やかな渦巻きが見え、道沿いに樫の木陰が見えた。ジャカランダ(◆南米原産のジャカランダ属(Jacaranda)の高木の総称。葉はシダ状で、夏に美しい薄紫色のラッパ状の花をたくさんつける。木の下を歩いていて花が頭に落ちると幸運が訪れるという言い伝えがある。幼木は観葉植物として利用される)
の木さえあって、その花は落ちて来て私に洗礼を授け ― これは彼女の言葉だ ―、上空の雲を濾しとって、太陽の祝福の光の中に私を置いた。それでも、こうした美しい眺めのどれも、私の気分を良くすることはなかった。

「だって、こうしたこと全ての中にも、死と腐敗があるもの」と彼女は書いていた。「どこを見ても、何かが他の何かを食べ尽くしているのよ」

確かに、メロドラマ風である。

だが、離婚を経験した人なら、彼女が何を言いたいか理解できるだろう。

* * *

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Eロマンス:1996年8月。ポーランドからメールで送られて来たアークの写真を見るローラ


離婚から3か月経った、7月、ローラは別のニュースがあると言って、再び私にコンタクトしてきた。

ある男性と出会ったのよ、と彼女は言う。実際には直に会ったのではなかった。だが、彼女はコンピューター越しに彼と話していて、もう夢中なのだった。

カシオペアンがこの人を指定したのよ、と彼女。なかなか信じられなかったが、本当だった。シーズは彼女に何やら指示を与え、彼女がそれに従った結果、彼らは彼女を彼に対面させたのだ。息を切らしながら、彼女は彼について語った。

彼、物理学者なの。

ポーランドに住んでてね。

私たち、恋してるの。

* * *

2人の仲は、シーズが取り持っただけあって、他でもない、重力から始まった。

そう、重力である。2つの物体を引き寄せる見えない力。引力として、宇宙じゅうにある惑星や恒星、その他の天体の間に働く。

ローラの説明によれば、数週間前のある夜、シーズは重力について話し続けたという。ローラとフレディーが彼らとチャネリングしていたこの夜、彼女は彼らに、何か他の事を話そうとしていた。ところがシーズは、何やら正体不明の「不安定な重力波」について話したがった。彼らは彼女に対して、このテーマについて、あらゆる事を知る必要がある、と言う。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=78770350

"Okay," ローラは答えた。「不安定な重力波ね。何が見つかるか、やってみるわ」

シーズはまだこのテーマを終わらせる気は無かった。数秒後、彼らは彼女にこう言った:

「調査研究の一環として重力波について瞑想しなさいというのは、あなたに言っているんだ、ローラ。 不安定な重力波は量子物理学の全体像を一点の曇りもなく明らかにする未知の秘密で、まだ解明されていない」

続く数週間、シーズは重力のテーマに戻り続けた。ローラは、これらのメッセージの全てをまとめたものを物理学文献の関連部分と一緒にネットに投稿した。それは、UFO研究者、天文学者、その他の科学者にはお馴染みのディスカッションリストだった。彼女には幾らかの助力が必要だった。誰か、この投稿を読んで、どういう意味か教えて頂戴?

数日後、彼女は1人の男からメールを受け取った。彼女の調査研究について、もう少し知りたいというのだ。彼の説明によれば、彼はポーランドにあるブラツロフ大学理論物理学研究所の教授だという。私はアルカジス・ヤズィックといいます。でも、アークと呼んでください。

その後数日間、ローラとアークはメールのやり取りを行った。最初のうち彼女たちは、専ら物理学の話をした。すると分かったのだが、アークはウェブサイトを持っていて、重力波に特化した内容だという。ローラはそのウェブサイトに行って、アークの書いたものを読んでみたが、たちまちエキサイトした。彼女たちはメールのやり取りを続け、懇意になった。大西洋越し、かつ、コンピューター上ではあったが、ローラは2人の間でエネルギーが強まるのを感じることができた。

これで十分だった。数週間のうちに、2人は互いに愛を告白し、お互いのこれまでの人生についてシェアし、意見交換し、情報スーパーハイウェイ上でいちゃついた。2人とも、起きていることがほとんど信じられなかった。

「ローラ、愛しいローラ」とアークはあるメールに綴った。「キミは本物なんだ。私の想像じゃないんだね」

彼は52歳だと言った。既婚だが、何年も前から夫婦仲は破たんしているという。その上、彼は物理学者であり、生涯の研究テーマは、時間と空間、意識の本質、リアリティの構造 ― いずれも、少女の頃からローラが夢中で取り組んできたテーマだった。

2人は写真を交換した。ローラはこれまでの人生のいくつかの時期に撮ったものを数枚送った;アークは肖像写真を送ったが、そこには痩せた身体をし、優美な顔立ちの、薄くて白い髪をした男が写っていた。彼はポーランド語で彼女に歌いかけたテープも送ってきた。そのうちの1曲を、私は彼女に聞かせてもらった。何を言っているのかまるで分からなかったが、彼が優しく繰り返し歌い続けていた1語だけは分かった。

「ローラ。。。ローラ。。。」

じき彼女は、2人の仲は永遠だと言い出した。これは「宇宙的な恋愛」なのだ。ローラはアークこそが何年も前に夢に見た、ナチス兵に射殺された前生での夫だと信じた。2人は一緒になる運命だったのよ、と彼女。彼女はそう確信していた。

アークのメールを見ると、彼も全く同じように感じていることが分かる。彼は重症だった。

「何が起こったか見てみたまえ」。この年の8月の末に、彼がローラに書いた言葉だが、これは2人が文通を始めてから、まだ1か月そこそこの時期だった。「あり得ない事が起こった。この40日の間に私たちが行った事は、実際あり得ない。喩えて言えば、爆発か、洪水か。。。融合だ − でも制御された融合だ」

私、融合は好きよ。この物理学者は、うまいことを言ったのだ。

「全くだとも」と彼は彼女に言った。まだ歓喜に酔っていた。「本にして出しても、誰も信じないだろう。私たちだって信じなかっただろう。自分達で書くことになるまではね。。。私たちはどうにか夢見ることを恐れずにすんだ。私たちの夢はどうにか現実化する方法を見つけた。私たちの言葉は − 信念から出たものの、信ずべき理由はなかった言葉が − どうにか真実になった」

さらに彼は続ける。

「毎日が新しい1日だ。新しい毎日が待ち受けている。どれだけの事を成しうるか未だ分からない。私たちの生活はまだ始まっても居ない。でも、後戻りすることはないんだ。。。」

アークはローラにとって完璧のようだった。実際、彼は殆ど出来過ぎという感じだった。それで私は確かめてみた。

私はローラが運に見放されて絶望するのを見たくなかった。私は半年後になって、彼女のソウルメイトが、実はフィラデルフィア在住の14歳の少年で、ネットの向こう側から14歳ならではのいたずらを行っていたのだ、などと知りたくはなかった。私はタイムズの調査員に、アルカジス・ヤズィックが実在する本物か調べてくれるよう頼んだ。

確かに彼は本物だった;1995年、彼はフンボルト賞なるものすら受賞していた。私の理解が正しければ、これは物理学の世界で立派な業績を残した学者に与えられる賞だった。既にローラはフンボルト賞のことも言っていた。本当だと分かっても、私は言わずにおいた。アークの身元調査が必要だと私が感じていたなどとローラに知らせて、彼女の感情を損ねたくなかったからだ。

こんな幸せそうなローラは見たことがなかった。彼女は突然身体のケアを始めた。毎晩プールで泳ぎ、ジムでトレーニングし、食べ物に注意した。彼女はたちまちやせ始めた。

だが、変化はもっと深い所でも起こっていた。ローラは自分自身や自分の人生、将来に満足を感じていた。再び笑顔を見せるようになり、充電完了とばかりワークに励み、数か月ぶりにピアノを弾き始めた。

彼女が言うには、アークができるだけ早くアメリカに来れるよう、2人は計画中なのだった。最初のアメリカ滞在は数週間だが、その後永久に戻ってくるという。アークはこちらのどこかで、教師の職を探すつもりだった。彼もローラも、離婚手続きを急ぎ済ませることにした。

そして結婚するのだ。

これまで2人は、コンピューターか電話越しでしか話していなかった。ようやく直に会うのだ。何が起こるだろうか?もしアークが、ローラの信じているような男性でなかったらどうしよう?もしローラが、アークの期待していたような女性でなかったら?もし、子どもたちや、家や、チャネリング・セッションといった全てが、アークの手に負えなかったらどうしよう?

すぐ分かることだ。

* * *

1997年2月11日、アークはタンパ国際空港に到着した。ローラ45歳の誕生日の前日だった。

シェリーと私も、その場に行きたかった。アークとローラが始めて互いの姿を見る、その瞬間を目撃したかった。だが、ローラは認めなかった。彼女は、アークが乗る飛行機のフライトナンバーも、航空会社も、到着予定日時すら内緒にした。今のところ彼女は、自分だけのアークにしておきたかったのだ。


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帰ってきたバットマン:1997年10月、タンパ国際空港でアークと再会を果たしたローラ。彼はアメリカに永住するため戻って来た。最初の訪米の際、ローラが空港で見つけやすいようにと選んだバットマンのバックパックを今回も背負っている。(バットマンの初登場はローラが内緒にしたため写真が無い。だが、そんな)彼女を誰が咎められるだろうか?


数週間後、私たちはようやくアークに会うことを許された。私たちは、彼とローラをディナーに招待した。彼は少食だとローラが言うので、私たちは国道19号沿いのサラダ専門店『スィート・トマト』
https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g34535-d609823-Reviews-Sweet_Tomatoes-Palm_Harbor_Florida.html
を選び、彼がアメリカ産レタスを頬張る様子を見詰めた。

アークは写真通りだったが、もう少し色白で痩せていた。彼の白髪は目を引いた;彼のアクセントは美しかった;体重は65キロもなさそうだった。親切で、物腰が優しかった。物静かながら、ユーモアを常に忘れないタイプだった。

その晩も、そして、その後もアークとローラが一緒に居るのに会う度に感じたのだが、明らかに2人はお互いを尊敬していた。彼らは手をつなぎ、キスし、終始微笑んでいた。しかもアークは、ローラの子どもたちに満足していた。彼は彼女たちが好きであり、彼女たちも彼と居るのが楽しそうだった。

ローラのチャネリング・セッションを、アークは楽しんだ。スピリットボードの周りに座って、物理体を持たぬ実体に質問を行うことが奇妙だと、もし彼が感じていたとしても、そんな素振りは見せなかった。彼自身も、カシオペアンに沢山質問した;彼の研究に助言が欲しい、と言った。

彼が最初にスピリットボードの前に座った時、彼はカシオペアンに、今後何が待ち受けているかと尋ねた。彼は交信録を読んでおり、彼とローラが「運命付けられたミッション」を帯びていると言われたことに気付いていた。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=78616376

「私の最初の質問だ」とアーク。「この『運命付けられたミッション』とは何だろう?その内容とは?」

「キミが取り組んできた道に従うことが含まれている」と、回答が返ってきた。「私達は運命付けられたミッションの話はしない。というのも、そうする結果、もはや『運命的』でなくなるからだ。キミは経験から学ぶのであり、感じている通り、キミはかなり深遠な体験をまさにしようとしている」

アークが「深遠な体験」とはどういう意味か尋ねると、シーズは具体的に述べるのを断り、彼は転機にさしかかって居る、とだけ言った。ローラも訊き続けた。彼女は、アークの将来について、もっと知りたかった。

「私が知りたいのは、」と彼女は言った。「私達2人の道は平行になるのかしら、それとも別れ別れになるのかしら」

「あなた方の道は絡み合っていると思う!」

「えーと、」と、ローラ。「私もアークも疲れたわ。今晩これ以上、私達に言いたいことはある?」

「エネルギーを合わせて答えを求めなさい。そうすれば、残りも落ち着くべき所に落ち着く」

「『エネルギーを合わせなさい』と言ったわね。そうすると答えの追究が容易になるという理由があるの?」

「互いに補い合う魂たちだからだ」

ローラとアークもお互いをそのようにみなしていた。「2人は単に一緒に生きる以上の結果を生み出すのよ」と彼女たちは言った。互いを見出した時、2人は全く新しい可能性の宇宙に足を踏み入れたのである。

2か月後、ローラはポーランド行きの飛行機に乗るアークを見送った。彼は一度国に戻るのだと、前から言っていた。彼はやって来た時に背負っていた、特別なバックパックを背負っていた。それにはバットマンの絵が描かれていた;ヨーロッパのどこかで見付けたという。到着する日には、ローラが空港で彼を見つけられるようにするからと、アークは言っていた。彼は彼女に、バットマンのバックパックを背負った男が居たらそれが私だ、と言ったのだ。

今、彼は出発しようとしている。でも、またこのバックパックを背負って戻って来るよ、と彼は言った。

もちろん、アークはローラの元に戻って来るだろう。大西洋を越えて再び。「ケープを纏った十字軍騎士」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%B3_(%E6%9E%B6%E7%A9%BA%E3%81%AE%E4%BA%BA%E7%89%A9)
の力を借りて。

何者も彼を止められはしない。

* * *

「5分過ぎてる」と招待客の1人が、時計を見ながら言った。「時間だ。時間だ」


写真
新たな旅立ち:結婚式でローラの足を洗うアーク。「私は彼らすべての上にある光である」と、儀式の主宰者が読み上げた。「木を割りなさい。私はそこにいる。石を持ち上げなさい。そうすればあなたがたは、私をそこに見いだすであろう」(トマス書77節)
https://apocrypha.jimdo.com/%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%9B%B8/%E6%9C%AC%E6%96%87/
「よろしい」とローラ。「私たちはここに結婚します」。


1998年9月12日日曜日の午後だった。一同はニューポートリッチーの家に集まり、居間で結婚式が始まるのを待っていた。ローラの母親と兄、仕事に行かねばならなかったアレシアを除く、子どもたち全員、フレディー、そして、長年の友人たちのうちのほんの一握りの人々が出席した。


花嫁は、インド産のからし色の生地を縫って刺繍をあしらったドレスと、婚約者がブリュッセルで彼女のために買い求めた真珠の首輪を身に着けていた。花婿は彼の髪を引き立たせる、黒のシャツに黒のズボンといういでたちだった。2人とも、靴下と靴を履いていなかった。

まずローラがイスに座り、その前に屈みこんだアークが彼女の素足を洗った。彼が洗い終わると、2人は位置を交換し、今度はローラがアークの足を洗った。この儀式は、天と地の結婚を象徴するものだ。それから2人は立ち上がって、キャンドルに火を灯して、儀式の主宰者で、公証人である友人の女性が読み上げる福音書の1節を聞いた。

「私は彼らすべての上にある光である。私はすべてである。。。木を割りなさい。私はそこにいる。石を持ち上げなさい。そうすればあなたがたは、私をそこに見いだすであろう」

それから誓いの言葉と、指輪交換の時間になった。

「この指輪もて我汝をめとる」と言いつつ、ローラは謹厳なアークの顔を覗き込んだ。「愛と真実とを込め、我汝に我が全てを捧ぐ」

キスと拍手喝采。アークは腕を回して花嫁を固く抱きながら、涙をこぼした。

"Okay," ケーキ入刀後、微笑みながらローラは言った。「次は何?」


エピローグ

今になっても、実際にローラには何が起こっているのか、読者に語ることなど私には到底できない。依然として彼女が、以前と同様、興味をそそる対象であるのは分かるのだが。彼女に出会ってからというもの、彼女と出会っていなかったら「起こらなかったかも知れないこと」の数々について、私は考えさせられるようになった。彼女のせいで私は、新たな見方/考え方をするよう余儀なくされたのである。


写真
新しい千年紀に:ローラとアーク。ニューポートリッチーのグリーン・キー・ビーチにて。先週の日曜日に撮影。


これこそがローラの真の天稟なのだ。これが彼女に特別に備わった才能だと、私は誓って言う事ができる。

私がローラの物語を人々にシェアすると、どういう意味があるのかと訊かれる。私は彼らに、分からないと答える。第6密度の存在が空の彼方の、ある星座からやって来て、本当に彼女を、海の向こうに住んで居た彼女にピッタリの2番目の結婚相手とゴールインさせたのかどうか、私には証明できない。

私が知っているのは、ローラが実在し、アークが実在し、あらゆる予想を覆して、彼女たちがお互いを見出し、今や結婚したということだけだ。

それで十分ではないか?

ローラが人生の時間の大部分を費やしてエイリアンや闇の実体を追い求めるうち、最終的には、遥かにずっと捉えどころのない何かを捕まえたというのは、驚くべき事だと私は思う。私たちは、始終愛について語っているが、それが本物だとどうして分かるというのか?愛は目に見えず、壁にピンで止めたりできない。その正確な正体など到底証明できない。愛とは概念、目に見えない観念であり、信用して受け入れられるような形や実体は無い。それでも私たちは、それを追いかけることに一生を費やす。私たちは愛を渇望し、切望し、手に入らないと言っては泣き寝入りする。私たちがそうするのは、愛が私たちの心の中で持つ意味を感じるからであり、愛が本物かどうかこそ、私たちの知りたい全てだからだ。

最近ローラとアークに会いに行くとき、私はこうした事を考える。2人が一緒に居るのを見ると、目に見えないものにだって、時には手が届くのだと思い出させられるのだ。2人が結婚して、1年半になる(※本稿発表が2000年3月頃と思われる手掛かり)。彼女たちはモンタナ通りの家に住んでいる。徹底的にリフォーム・改装済みだ。居間の壁は、奇妙に薄暗いぼんやりとした紫色に塗られ;窓にかかるカーテンは豹柄である。この変化を見たローラの友人の1人は、礼儀正しくもローラの趣味を「風変わり」と評した。

「ペイガン・バロックでしょ」。そう言ってローラはニヤリと笑う。

子どもたちは大きくなった。上の2人の娘、アレシアとアンナは職に就き、家を出て行った。ジェイソンを含む残りの3人は、家に住んで居る。彼女たちの父親である、ルイス・マーチンは、さして遠くない、クリスタル・リバーに住んで居る。彼は、彼の時間が許す限り、いつでも子どもたちに会える。元の妻に恨みを感じているのかどうか、最後に話した時の様子からは分からなかった。自分は家を出たが;今でもローラを信じているし、彼女は「探究者」だと思う、と彼は言った。

「彼女に対して、悪い感情は持っていないよ」

ローラとアークもまた、自分達の生活を始めていた。アークはラーゴにある防衛関係の『コンステレーション・テクノロジー(直訳:星座技術)』社
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=78943265
の下請けの仕事をしていると言う。彼は殆ど家に居て、コンピューターの画面を見詰めながら、私には到底説明できないような数学の方程式や物理学の問題に取り組んでいるのだ。

ローラもまた、家で働いている。彼女は子どもたちの世話や、アークの調査の手伝いに追われながらも、依然として刺激的なワークに取り組み、新しい分野にも手を広げている。もう憑依霊解放やエクソシズムはやっていないが、フレディーと共に、今でもカシオペアンとチャネリングによる交信を行っていると言う。アークも一緒にボードに向かい、物理学その他のテーマをシーズに質問しているそうだ。ローラとアークはまた、「サイコマンティアム」と呼ばれる何かをローラの書斎に組み上げていたが、要するに、黒色のフェルトで出来たテントを天上から吊るしたものだ。私に理解できる限りでは、ローラはこの囲いの闇の中にキャンドルと鏡を持ち込んで座り、長時間鏡を見詰めることで、いつの日か、過去生や他のリアリティからのイメージを見たいと思っているのだ。

この数か月、ローラとアークは長い時間をかけて、彼女たちの生活や理論、シーズとのチャネリングについて議論するための、広大なウェブサイト
https://cassiopaea.org
の運営に没頭している。彼女たちのサイトのコンテンツを最後まで読み通した人には、チャネリングに関する本稿の記述がこのテーマのほんの表面をなぞったものだと分かることだろう。

ローラの好奇心は依然として壮大なままだ。つい最近私は、居間の彼女のイスの傍にあぶなっかしく積まれている本の山を2つ見かけた。彼女が今読んで居るものだろう。タイトルには次のようなものがあった。すなわち、
ジャケッタ・ホークス『初期人類の地図帳』、
『永遠回帰の神話―視型と反復』(※未来社、ミルチャ・エリアーデ著、堀 一郎訳)
マルク=アラン・ウアクナン他『アルファベットの謎』、
グレアム・バーカー他『エトルリア人』、
ポール・ラバイオレット
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=79190104
『準量子動力学』。
彼女の選んだ本の全てが、これほど知的だという訳ではなかった。本の山の間には、『ウーマンズ・ワールド誌』のコピーが挟まっていたが、これは彼女が新しいダイエット法を研究するためのものだった。

宇宙の謎を解き明かしたいという彼女の願いは、初めて彼女に会った頃と同じくらい、今も激しく燃え盛っている。最近私は彼女に、この先数年間の目標は何かと尋ねた。彼女はリストアップしてくれた。

「A. は」と彼女は言った。「宇宙を変えること」。

「B. 時空を超越すること。未来や過去へのタイムトラベルを含む」。

「C. 他の密度に移動して、上記の事柄全てに影響を与えること」。

その一方で、ローラとアークは仲間同士だった。2人は、ぶっ続けで何時間も語り合った。2人は殆ど外出しなかったが、ローラが掘り出し物を見付けに、思い切ってサムズ・クラブ
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2590126&id=79235125
まで出掛けたいと言う場合は別だった

「私たち、どこへも出掛けないのよ」と彼女は幸せそうに言った。「何もしないの」

ローラの生活を支配しているのは、今や違う感情だった。以前と比べて、散らかっておらず、不確かでなく、計り知れないくらい穏やかに感じられた。家の中には明らかに充実感が満ちていた。

最近私は、何を学んだかと彼女に尋ねた。エイリアンやUFOではなく、彼女の思いのことである。

ローラはしばし間をおいて考えていた。

「私が思うのは」と彼女は言った。「人生は奇跡の連続だということよ。本当に奇跡なの。この数年間に、私が1つ学んだのは、人生の中に奇跡的なことが見当たらず、それが闇のようで悲しくて、重荷のように感じられるとしたら、そんな奇跡的に辛い人生を選択できる能力こそが、一番の奇跡なのよ。つまり、自分でそうなるよう選んでる訳。人が奇跡的であることを選ぶと、宇宙はそれを当人に投げ返すんだと思うわ」

これを運と呼ぶ人も居るだろうが、ローラは違うようだ。

* * *

数週間前、私はアークとローラ、そして、彼らの友人数名が行った、千年紀の大みそかのお祝いに参加した。私たちは小さなとんがり帽をかぶって居間に座り、小さなキーライム・パイ(◆フロリダ・キーズ(フロリダの最南端の島々のこと)でとれるライムを使用した明るい黄緑色のパイ)
を食べ、シャンペンをすすっていた。

時計が12時を告げる直前に、私たちは正面の芝生に出て行き、通りでローラとアークが花火に点火するのを見た。近所の至る所で、人々が花火を打ち上げていた。ローラとアークは学校の児童のようにはしゃいでいた。2人は通りに駆け出して行き、導火線に火を点けると、笑って手を繋ぎながら、一緒に芝の上に駆け戻った。

午前零時になると、叫び声と喝采が家々や周りの通りから起こった。遠く闇の中に輝く星々もかすむくらいに花火が空を照らしている間、愛し合う2人はキスをした。

* * *

筆者プロフィール
(写真)
http://www.sptimes.com/News/webspecials/exorcist/staff.html

当年42歳のトーマス・フレンチは、1981年からタイムズの記者を務める。彼の連載シリーズとしては、『真夜中の叫び声』や『天国の南側』などがある。彼は『天使と悪魔』という特集記事
http://www2.sptimes.com/Angels_Demons/default.html
により、1998年度ピューリッツァー賞を受賞した。これは、1989年にオハイオ州からタンパを訪れていた母娘3人が殺された事件を扱った物語である。
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2017年08月26日

(過去記事の振り返り)ジョージ・ソロス、来たるべきアメリカの階級闘争を警告

SOTT パペットマスター
(過去記事の振り返り)ジョージ・ソロス、来たるべきアメリカの階級闘争を警告
https://sott.net/en240686
http://www.newsweek.com/george-soros-coming-us-class-war-64271


ジョン・アーリッジ
デイリー・ビースト/ニューズウィーク
2012年1月23日

(写真:オフィスのソロス)
c Jake Chessum for Newsweek

「私のこれまでのキャリアの中でも、最も深刻かつ困難な状況だ」。加えて、国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルドもヨーロッパに対して緊急警告を発している。
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2012/01/22/imf-head-christine-lagarde-exclusive-interview.html
http://www.newsweek.com/imf-head-christine-lagarde-exclusive-interview-64275

これは、ご存知、ジョージ・ソロスの言葉である。
http://www.thedailybeast.com/articles/2011/07/27/george-soros-hedge-fund-closes-why-wealth-men-work-into-old-age.html
彼は最強の投資家である ― 彼は未だに1日の取引で稼いだ額の記録保持者だ。1992年のポンド危機では、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%89%E5%8D%B1%E6%A9%9F
ポンドが24時間のうちに20%価値を下げ、イギリスは欧州為替相場メカニズム(ERM)を事実上離脱したが、この「暗黒の水曜日」にソロスはポンドを売って10億ドルの利益を上げた。イギリス人が畏怖の念と不快感を込めて、彼を「イングランド銀行を潰した男」と呼ぶのも不思議ではない。

ソロスは小さな賭けはしない。市場での投資に留まらず、彼は東欧諸国における政治的自由の推進その他の大義のために、巨額の私費を提供している。
http://www.thedailybeast.com/articles/2011/06/30/uranium-smuggling-arrests-in-moldova-revive-security-debate.html
2004年のアメリカ大統領選挙では、ジョージ・W・ブッシュの再選に反対する陣営に支援を行ったため、こんにちに至っても彼は右翼から嫌われたままである。それでは、世界経済フォーラムに出席するために、今年もスイスのダボスに、ソロスや世界を動かしている人々が集まろうとしている今、これら経済のギャンブラーたちが賭けている、世界最高の勝負とは何だろうか?

ソロスは賭けていない。当年81歳になるソロスが、彼の60年のキャリアにおいて初めて、どうしたらいいか分からないと認めたのだ。「好況だった数年間にもダメージを負ったことを考えると、どうするのが正しいか知るのはまことに難しい」。彼は自分のポートフォリオについて論じないだろう。ひと儲けしようと説得していると思われないためだ。だが彼をよく知っている人々なら、安定した企業の優良株を選択して長期間保持し、「究極のバブル」である金は避け、そして、大事なのは現金を手元に置いておくことだ、とソロスが勧めるのを知っている。

彼は、かつてダメになった通貨を見抜いたことのある男ならするであろうことすらしていない:ユーロやドルまで売って、価値を下落させてしまうことだ。その反対だ。彼は苦境に立っているユーロを支援し、ヨーロッパ各国の指導者に対して、ユーロが生き残れるよう手を尽くすべきだと、公然と訴えている。「ユーロは生き残らなくてはならない。というのも、それが崩壊してしまったら、ヨーロッパも、世界も耐えられないようなメルトダウンが起こるだろうからだ」。ソロスは、ヨーロッパ各国の国債を約20億ドル分購入したが、大部分はイタリア国債で、昨年10月に倒産した、元ゴールドマン・サックス会長のジョン・コーザインが率いる証券会社MFグローバルからだった。

「空売り王」は態度を軟化させたのか?そうなのだ。ニューヨーク7番街に立つ摩天楼の 33階にあるオフィスで、ダボス会議に参加する旅の準備をしている彼は、このまま金持ちで在り続けられるかよりも、生き延びられるかの方が心配だという。
http://news21c.blog.fc2.com/blog-entry-885.html?sp
「こんな時代は生き延びることが最も重要だ」と、フクロウのような眼鏡越しにこちらを見て、額にかかった白髪の束をかき上げながら、ソロスは語る。自分の資産を守るべき時だと言っているのではない。災難を未然に防ぐべき時だというのだ。彼の観方によると、世界は今、現代史の中でも最も危うい時期 ― 「邪悪な」時期 ― に直面している。ヨーロッパはカオスと紛争への下り坂に差し掛かっている。アメリカでは街中で暴動が起き、それが政府による過酷な取り締まりを招いて、市民の自由が劇的に制限される、と彼は予見している。世界の経済システムが完全に破綻するかも知れないのだ。


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「私がこれから話すのは、人に勇気を与えるような話ではない。こんにちの状況は、私のこれまでのキャリアの中でも、最も深刻かつ困難なものだ」とソロスはニューズウィークに語った。「我々は 1930年代の大恐慌に多くの点で匹敵するような、極めて困難な時代を迎えつつある。先進諸国では目下、全体的に財政削減が行われているが、これによってさらに10年は停滞が続くか、もっと悪くなる恐れがある。最善のシナリオは、デフレの進行だ。最悪のシナリオだと、金融制度が崩壊するだろう」
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ソロスの警告は、市場の好不況についての彼の本能的直観のみならず、彼の類まれな個人的経験にも基づいているのだ。「私は遥かにずっと危機的な状況を生き延びてきた。だからこの観方は感情的でもあり、同じくらい理性的でもある」と彼は認める。1944年3月、ソロスがまだ13歳の時、彼の祖国ハンガリーはナチスの兵士に侵略され占領された。それから僅か8週間のうちに、約50万人居たハンガリーのユダヤ人は国外に追放され、多くはアウシュビッツに送られた。彼はユダヤ人や、彼らを助けたキリスト教徒の死体を見た。死体は街灯柱からぶら下げられて揺れ、頭蓋骨は割れていた。彼は父ティヴォドアのお蔭で生き延びた。父親は家族のために、何とか偽の身分証を入手したのである。その後彼は、ロシア軍がナチスを追い払うのを見た。新たな全体主義イデオロギーである共産主義が、ファシズムに取って代った。戦後、ソ連の占領下で生活が一層厳しくなる中、初めはロンドン、次にニューヨークへと、ソロスは何とか移住することができた。

ソロスが自身の過去を引き合いに出したのは、共産主義の終焉と同じくらいに、世界経済は深刻な危機を迎えつつあり、予断を許さないと論じるためだった。「ソビエト体制が崩壊したのは、かなり類まれな出来事であり、先進諸国に居る我々はこんにち、何が起こっているのか完全に分からないまま、似たような経験をしている」。ソロスにとって、市場の効率性という信条 ― 市場は合理的であり、災難を避けられるよう統制可能であるという考え ― の誤りがアッと言うほど暴かれることは、「政治システムとしてのマルキシズムの崩壊に喩えることができる。自由市場について広く行われている解釈は、実に誤解を招くものであることが判明した。そのような解釈は市場に関する完全な知識を前提とするが、それは現実と全くかけ離れている。我々は、問題をきちんと理解するために、理性の時代から可謬性の時代へと移行する必要がある」

理解することが重要だと彼は言う。「無制限の競争は、本来なら後悔するような行動に人々を駆り立てることがある。こんにちの我々の状況が悲劇的なのは、理解が不完全なせいで意図しない結果が生じていることだ。世界にはびこる悪の多くは、実は意図的なものではない。金融制度の運営に携わる多くの人々は、意図せずして数多くのダメージを与えている」。それでもソロスは、かつての東欧圏諸国が、金融界の悪がもたらすものと政治的に格闘していたのと全く同じように、西側諸国がそれに対処しようと奮闘していると信じている。経済の崩壊を惹き起こしている金融の専門家たちは、単に間違っているだけでなく、邪悪であると、彼はそう言うのだろうか?「その通りだ」。これは聞き捨てならない。米ゴールドマン・サックス・グループのCEOであるロイド・ブランクフェインは、金融危機の真っただ中に、英紙サンデー・タイムズに対して、自分は「神の仕事をしている」1人のバンカーにすぎないと語っていたではないか。
http://blog.goo.ne.jp/kohay/e/4d530aeb850e9bd2f98f77425f46608f

多くの人々にとって、ソロスが説く世界の「悪」とは富のことである。結局、ソロスという投資家は、市場は(彼の場合は、1人の投資家であるが)、主権国家の政府よりも強力であるという、今や大いに嘲笑されている考え方を実証した ― それによって巨万の富を得た ― のである。彼はイングランド銀行を潰し、経済に長けているという保守党の評判を台無しにし、たった1日で、イギリスの消費者がポケットの中に持っていたポンドの価値を1/5に下げた。通貨投機家であるソロスは、「不必要、非生産的、不道徳」と非難されてきた。マレーシアのマハティール・モハマド元首相は、かつてソロスを「犯罪者」、「ごろつき」呼ばわりした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8F%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%8F%E3%83%9E%E3%83%89

アメリカの右翼は、ジョージ・W・ブッシュを再選させないよう扇動し、911後の「テロとの戦い」を「有害だ」と述べたソロスを未だに許していないが、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%82%B9#.E3.82.BD.E3.83.AD.E3.82.B9_vs._.E3.83.96.E3.83.83.E3.82.B7.E3.83.A5
街中で暴動が起きるだろう ― ソロス曰く「それは既に始まっている」 ― という彼の予言は、ビル・オライリーがかつて彼を「極左の過激な爆弾男」と呼んだように、新たな批判の火種になりそうだ。批判者たちは「オキュパイ・ムーブメント(ウォール街占拠運動)」の火付け役であるカナダの雑誌アドバスターズに資金提供を行うことで、ソロスは既に火をくべたと主張している。そんなことはない、とソロスは言う。

ソロスのふくいくたる香りに満ちた私生活もまた、彼が道を説くなんて、と多くの人々を嘲笑に駆り立てている。ソロスと長年交際してきたエイドリアナ・フェレール(28歳)は去年、マンハッタンのニューヨーク最高裁に訴えを起こした。ソロスが彼女にマンションを買うと2度約束したのに実行しないため、多大な精神的苦痛を負ったというのである。かつてブラジルで昼メロのスターだったフェレールによると、ソロスは彼女に与えると約束したマンションを別のガールフレンドに与えたという。彼女はまた、ソロスから暴行されたとも主張している。ソロスは「取るに足らない、法的根拠に欠けるもの」であり、「身に覚えのないことばかりで、明らかに金を搾り取ろうとするものだ」として、フェレールの主張を拒絶している。

様々な問題にも拘わらず、政治家/慈善家をもって自認するこの男はくじけてはいない。無秩序な市場で儲けてきた彼は、今では私たちをそこから救い出そうというのだ。ヨーロッパを例にとろう。彼は今では、次のように思っているのだ:「ユーロの無秩序的な崩壊があれば、数世紀にわたる混乱をヨーロッパにもたらしたような政治的紛争が再発する危険性が出てくる。国家主義の極端な情況は排外主義を生み、外国人や少数民族に対する排斥運動などに発展する。ヒトラーの時代には、それはユダヤ人が標的だった。今日では、ジプシーとかロマと言われる少数民族の人々やイスラム教徒の移民者が対象なのだ」
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=261370

2012年中にギリシャのデフォルトは「どちらかと言えばありそう」だと、ソロスは今週のダボス会議で、指導者たちに話すつもりだという。彼はヨーロッパ諸国の指導者たちを「問題を解決するのでなく、その場を治める」方法しか知らないのではないか、と言って非難するつもりなのだ。もし、ドイツのアンゲラ・メルケルやフランスのニコラ・サルコジが、欧州大陸の外に救いの手を見付けるという希望を捨てきれずに抱いているとしたら、彼女たちは間違っている。「私は最近、中国に行ってきたが、中国は EU を救うつもりはない」と彼は言う。悩みの種は多いものの、ユーロはギリギリでどうにか生き延びると彼は見ている。

2月初頭に新著『ソロスの警告 ユーロが世界経済を破壊する』(※藤井清美 (翻訳)、原題:ヨーロッパとアメリカにおける金融不安)を出す予定で、今はヨーロッパにフォーカスしているソロスだが、アメリカにおける経済的格差による社会の断絶も深まるだろうという主張もすぐに展開するつもりだという。彼は「オキュパイ・ムーブメント(ウォール街占拠運動)」に共感している。この運動は、資本主義に対する幻滅が広がっていると主張するが、彼もそう考えるからだ。株主や社債保有者よりも、もっぱら納税者の負担で銀行制度を救済することに対して、人々が「不満を抱き、怒る」のはもっともなことだと。

オキュパイ・ムーブメント(ウォール街占拠運動)は「未だ組織化されていない、リーダー不在の抗議運動だ」が、拡大するだろう。この運動は「従来の左翼が四半世紀の間アジェンダに取り上げ損なってきた問題をアジェンダに取り上げた」。ソロスは机の上にあった、政治ブログ『シンクプログレス』による分析に手を伸ばした。オキュパイ・ムーブメント(ウォール街占拠運動)によって、MSNBCやCNN、FOXニュースをはじめとする、大手ニュース局がどれだけ失業問題を取り上げるようになったかまとめたものだ。これによると、昨年7月のある週に、「負債」という言葉が、アメリカの大手TVニュース・ネットワークで、7000回使われた。10月になると、それは398回に減り、その一方で「占拠せよ」が1278回、「ウォールストリート」が2378回、「仕事」が2738回使われた。投資家がこの測定結果に目を付けない筈がなかった。

怒りが増大してくると、アメリカの街中で暴動が起こるのは当然だろう。「そうだとも」と、ソロスはほとんど愉快そうに言う。「騒乱に対する当局の反応が与えるダメージは、暴力自体よりも大きいかも知れない。法と秩序の維持を口実として、弾圧と力ずくの戦術がとられ、それが極端になると、圧政的な社会システムが到来するだろう。そこでは、個人の自由は制限され、アメリカは自由の伝統と訣別することになる」

アメリカの政情不安を警告する彼だが、政治家になる考えはないという。「党派戦略には関わりたくない。私が関与したブッシュ政権がアメリカをミスリードしたと感じたからだ。オバマの新政権はとても有望だと思ったが、幾らか失望させられた。今後も民主党を支援し続けるが、彼らの駄目な点も良く知っている」。ソロスは、オバマはまだ今年の選挙で再選される可能性があると見ている。「オバマは民衆をびっくりさせるかもしれない。選挙での主な争点は富裕層に対する税をもっとかけるかどうかだ。オバマにとって、それをやることは困難ではないはずだ」

2012年の世界に微かな望みがあるとしたら、それは新興成長市場だとソロスは考えている。中東じゅうに広まった民主的革新運動や、アフリカにおける民主主義の台頭と経済成長、ロシアにすら改革の動きがある。これらが世界を窮地から救うかも知れない。「先進諸国が重大な危機に直面する一方で、発展途上諸国の未来の見通しはとても明るい。『開かれた社会』を願う人々の気持にはとても勇気づけられる。選挙権を与えられたアフリカの人々は、投票するために何時間も列に並ぶ。独裁者は倒されてきた。自由と成長のための実に明るい材料だ」

2012年に破局を免れるカギは、2011年の危機を無駄にしないことだ、とソロスは主張する。「危険な時期には、不可能が可能になる。EUが栄光を取り戻すかも知れない。アメリカという国家が実に過酷な試練を乗り越えて、その統治機構が強化されることを望んでいる」。今週ダボスに集まる中央銀行の総裁や首相たちが、馳せ参じるに当たって、するべきことをし、彼の方が間違っているのだと証明するかも知れない、という望みもすっかり捨ててはいない。彼にとって、今度ばかりは、間違っている方が幸せなのだ。
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